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一般社団法人 ICT経営パートナーズ協会 メルマガ (第65号)
    http://www.ictm-p.jp/
                          2019/05/15

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【目 次】
 
1.巻頭コラム『よくある会計の誤解』

             ICT経営パートナーズ協会 監事
             国際会計・税務サポート分科会 委員長

                        青柳 六郎太     
          
2.ニュース・お知らせ


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【巻頭コラム】『よくある会計の誤解』

               ICT経営パートナーズ協会 監事
              国際会計・税務サポート分科会 委員長

                        青柳 六郎太
1.収益と利益についての認識違い

  経営関係者に企業の経営目標は?とお訪ねすると、通り相場で[利益を出すこと
  と」とご回答を頂きます。100問中99答がそうですから、トップヒヤリングも単な
  るご挨拶程度の意味しか持ちません。

  ところが、この利益というのは、こだわると、わかったようでわからないところが
  あります。簿記会計の常識では、利益10円=収益100円―費用90円は基本等式です。
  さて経営関係者に、収益とは何ですかと尋ねると利益でしょう?と、ごく当たり前
  の返事が返ってきます。そうすると、このご回答を先ほどの等式に入れてみてくだ
  さい。

  利益10円=収益―費用=利益10円―費用90円??となります。即ち明らかなお間違
  です。しかし多くの著名経営者の講話や著述では「これからは売上より収益が大事
  だ」と語っていらっしゃるので、これまた、会計屋の定義を使い、収益=売上を代
  入すると「これからは売上より売上が大事だ」と仰っていることになり意味味不明
  です。

  まわりくどい屁理屈になりましたが、世間では、収益は売上ではなく利益と認識し
  ているようです。皆様は如何ですか?利益を意味するなら収益力や収益性が正しい
  ようです。

2.収益認識29号 『企業会計基準第29号  「収益認識に関する会計基準」』
 
  収益認識29号は、収益取引に関する我が国の新しい会計基準で、2018年1月1日から
  欧米がリードする全世界で強制適用されたIFRS15号を、日本も忖度し同一内容を
  「収益認識29号」として同年3月30日に制定し、上場企業では連単決算併せて、遅
  くとも2021年4月開始年度から強制適用、非上場企業でも、適用可能とした制度で
  す。

  しかし、基準書の内容は膨大で、基準書160条+適用指針180項+設例30項の3編で
  構成されていますので誰が読むのかと心配です。筆者は昨年一応読破しましたが、
  もう再読はこりごりです。急いで関係者がIFRS15号直訳で発表したのでしょう。日
  本語とは思えませんでした。法人税法も同年4月1日以降終了年度からの収益認識基
  準が改正されています。

  5月30日発表の解説書は、さすが国税庁、読みやすく36ページで完結していました。
  100年に1度の会計上の大変革ですが、そもそもこの、収益認識の「収益」について
  多くの方々が収益=利益だと思い込んでおられるようです。収益は利益ではなく、
  売上なので、この認識違いが大きな誤解の始まりで、向こう2年内のビジネス界の
  大不幸の原因となりそうです。

  売上の上げ方が変わったと考えるべきで、対象BPは、基幹系販売プロセスになるの
  で影響範囲は甚大です。収益=利益と思い込んでいる方々には財務会計システムの
  問題と矮小化して捕えています。160条にもわたる変革内容をここで解説するには
  無理がありますが、要約すると収益=売上の認識から、

  (1)契約内容を売手の履行義務の最小単位で分解して認識すること
  (2)各履行義務の対価を、固定対価と変動対価に区分して認識・測定すること、
  (3)履行義務の変動対価は、過去の実績値等から1)最頻値法か2)期待値法を
     選択して見積ること、
  (4)履行義務の実現時期は一時的に満了するか、履行進行につれて満了するかに
     応じて売上高を計上することが、従来の日本基準との差異になります。

  日本基準では、履行単位で売上を分割計上せず、契約単位で売上を一括で計上し、
  返品発生とか、貸倒発生とか、ポイント交換とか、リベート発生とかは、発生高を
  統計的に予測して、売上とは別勘定で費用を見積計上します。

  29号では契約商品を引渡しても、売上高を契約額面で計上することは禁止し、履行
  が完了した分だけをその決算期に計上させます。
  従って、売上の計上額が契約の履行部分だけ小刻みに上がっていく仕組みになりま
  す。

  あるクラウドサービスの契約を2019年4月1日に締結した場合、
   1)端末機器の対価は100円、
   2)顧客に契約を自由解約する権利を与えた場合、過去の解約実績から見た第1四
    半期内の見積解約額25円、
   3)1利用度数@2円の従量制サービスを提供した場合で。第1四半期の利用度数10
    度数なら第1四半期の売上計上額は、端末機器引渡履行分100円―解約受け未
    履行25円+クラウド履行実績分(@2×10度数)20円=95円となるでしょう。

  従来の日本基準では、売上高は端末機器引渡履行分100円+クラウド履行分
  (@2×10度数)20円=120円、解釈条件の返品調整引当金繰入額は25円とするでし
  ょう。 純収益95円に変わりはないですが、かっての日本基準の売上高120円は29
  号では95円に減少し制度の違いで25円減収となります。負債認識では従来の日本基
  準では、返品調整引当金25円を立てたところですが、29号では100円を入金した段
  階で前受金25円を負債計上します。

  なお、法人税法では29号に同期をとって返品調整引当制度は廃止しましたので、29
  号でMUSTの端末売上代75円は、税務上は100円にしなければならず25円の過少計上
  となるので税務申告では加算調整が必要です。会計に忠実でも税法では違反キップ
  が出ます。

  販売管理システムでは、上例ではクラウドサービス契約の都度、解約見積額を確定
  しないと売上は上げられませんから、統計学の最頻値法でサービス別客層別解約履
  歴から今期解約予定率25%をマスター登録し額面の契約金額100円に乗じて端末の
  売上額75円を自動計上する改修等が必要です。

  このことから、レガシーが多い多くの基幹系販売管理システムの担当SEが29号の膨
  大な基準書と指針および設例を理解し、上場顧客ごとのシステム改修を準備しなけ
  ればなりません。

  ところが、多くのベンダーのシステムマネージャーは、筆者の知る範囲で99%、“
  収益=利益“頭の方々ですから、基幹系を震撼する29号は会計系SEの仕事と思い込
  み、危機感ゼロで体制上の備えはありません。

  現在ベンダー業界では過度のSE不足で、営業マネージャーの仕事は如何に受注をお
  断りするかだそうです。まして1年半後の29号対応など、“見ざる言わざる聞かざ
  る“を決め込んでおられるようです。

  虎の子のSEを29号研修に出したとたんに社内で特命PJに引抜かれるのは目に見えて
  いるので部下になるべく受講させないのが賢明なマネージャーの処世術なようです。

3.KPIとして利益とキャッシュフローの有用性比較

  論点は収益(=売上)から、利益に戻します。
  余りに、世の経営者の大事な目的が利益一辺倒なので、“では、貴社の利益なるも
  のの実物のサンプルでも机の上で見せてください。”というと経営者は答えに窮さ
  れます。

  “では、貴社のキャッシュというものを一度実物で見せてください。”というと、
  これは実現可能です。かように利益には具体性はなく、キャッシュには具体性があ
  ります。

  しかし、かなりの経営者はキャッシュより利益獲得をモットーにされるものです。
  では、利益は誰のために、なぜ大事なのかを検証してみましょう。

  (1)企業の利益は国家の財政基盤確保の為の徴税のベースになる。
     法人税法22条では、益金(≒収益)-損金{≒費用}=所得(≒利益)で利
     益を上げると国に徴税されることになります。
     従って企業が利益を出すとキャッシュが減ります。
  (2)利益は株主の配当の原資になります。
     企業が利益を出すと、原則として株主に配当を支払わなければなりません。
     配当は、原則としてキャッシュで払わなければなりません。従って企業が利
     益を出すとここでもキャッシュが減ります。キャッシュが減る時に経営者は
     悲しみます。

  以上の2点で注意すべきは、税金も配当もキャッシュで払わなければならない規定
  になっており、利益そのもので支払うことができないのです。
  凡そ、利益は支払手段になりません。資産や費用も利益で購入したり支払たりはで
  きないのです。この点、利益の効用はキャッシュに比べて著しく劣ります。
  それなのにキャッシュより利益がKPIとして尊重されるのには多少疑問を感じます。

  (3)利益は株価上昇のKPIとして外部からは評価されます。 また銀行融資を受
     けるには利益は必須KPIになります。
  (4)一方、キャッシュフローは課税対象になりません。また税金の支払手段にな
     りますので都合の良いKPIです。
  (5)キャッシュフローに比例して株主に配当を払う必要はありませんが配当の支
     払手段になるのもありがたいKPIです。これには疑問は感じません。
  (6)キャッシュフローが多いと銀行融資を受けやすいのは(3)の利益と変わり
     ません。

  このような理由で、筆者はキャッシュフローを利益より可用性の高いKPIとしてよ
  り尊重しています。

4.キャッシュ・フロー計算書はキャッシュフロー経営のツールか?

  (1)キャッシュ・フロー計算書ではキャッシュフローが読めないわけ?
     利益といえば、損益計算書(以下PL)、キャッシュフローと言えばキャッシ
     ュ・フロー計算書(以下CFS)が通り相場ですが、実はCFSは、開示用の財務
     諸表で、企業のキャッシュフロー経営には殆ど役に立ちません。
  (2)キャッシュフロー計算書(以下CFS)は、よくご覧になると勘定科目にBSやP
     Lと同じ科目を使っていません。少し簿記を勉強された方は,一見同じ科目を
     使っていると思いこんでおられるのでコロリと騙されてしまい質が悪いです。
     
     直接法で表示されたCF科目は、素人向けの家計簿科目で、これは素直で質も
     良いです。大元の米国で戦前に直接法を改造した間接法は会計の玄人向けに
     簿記科目を導入しましたが、それが原因で無理がたたり素直に読めない財務
     諸表になってしまいました。バグ修正跡が残った継接プログラムのようです。

  (3)言い訳だらけの科目配列
     間接法CFSの1行目は税金等調整前当期利益ですが、ここは本来は営業活動の
     キャッシュフローを表示するところです。しかしPLの当期利益から書き出し
     始めたので営業活動というのは端から嘘になりました。 従って1行目の当
     期利益から営業活動でない不純物を一つずつ抽出して間違えを言い訳するこ
     とから始まります。

     まず税引後を税金等調整前と修正します。税金は後で引くからです。
            1行目は税金等調整前当期利益と言い換えます。
            2行目からは不純物である特別損益科目や営業外損益科目を正負を逆にして
     赤黒で修正します。漸く営業利益まで修正表示が長々と続きます。中小企業
     でも15科目くらいの営業活動とは言えない修正科目数はあるでしょう。

            16行目位から、漸くBS科目の増減で営業活動CFを説明し始めます。
           
    (4)減価償却費がなぜキャッシュの増加になるのか?
          BS科目に入ると、いきなり、減価償却費がCF加算科目として表示されます。
    減価償却費(PL科目)はとっくに1行目の税金等調整前当期利益に算入済みで
    す。 ここで減価償却費(PL科目)を入れると2重計上の誤りになります。

    この減価償却費はPL科目ではなく、減価償却累計額(BS科目)のCFS世界での
    別名なのですが、これは誰だってわかりません。殆どの方が誤解されています。
    減価償却費(PL)10円は、利益を10円減らすのでCFマイナス10円です。CFプラ
    スは、減価償却累計額(BS)+10円です。両方通算するとプラマイゼロですが、
    減価償却費(PL)は、節税効果3円があるので利益-7円になります。減価償却
    累計額(BS)+10円と通算する税金分3円キャッシュ増加します。税法で認めら
    れる評価損関係もすべてCF増加効果を果たすのはこのロジックです。

    間接法CFSの減価償却費=減価償却累計額(BS科目)であり、CF機能は180度反
    対に作用しますので混同されないように慎重にお読みください。

    CFSはキャッシュフロー経営に使わないことです。その理由は、どうしたら、C
    Fを増やすかの簿記科目の粒度で読めないからです。IFRS出現前の昭和30年代
    に日本でも普及していた資金運用表が役に立ちます。BSの残高2期比較表で十
    部ですが、こんな簡単な表が並み居るPC会計商品では一切提供されていません。
    筆者は未だにEXCELで2期のBS残高を打ち込んでいる引算でCFを計算している
    有様です。

5.発生主義会計の由来

  複式簿記の発生地の欧州では、帝国主義国家が出現する前の大航海時代では商談ご
  とのプロジェクト会計で冒険商人への徴税がなされていた様です。
  マルコポーロなどの貿易商人が、欧州で商品を仕入して、中国で販売して数年がか
  りのプロジェクト期間損益は完結しますが、その結果の営業CFが母国の課税対象と
  なったようです。現金収入―現金支出=課税収支です。

  ところが、18世紀以降、欧州の帝国主義国家が、やたらに国家総力で戦争をやりま
  くりました。そこで国家の戦費調達力の差異が勝敗を決定します。
  そこで政府は、徴税の仕組みを会計学者に提案させたそうです。シュマーレンバッ
  ハが近代会計学の祖と言われますが、これが発生主義会計だそうです。

  会社には決算期を届けさせプロジェクトが終わっていようがいまいがお構いなしに
  決算期毎の人為的な収益と費用をみなしで強制的に計算させます。現代では四半期
  ごとに人為的に利益を出し続けるのが経営学ですがとても不自然なことのような感
  じがします。

  発生主義では売上入金前でも課税するのです。プロジェクト単位の入出金は完全に
  無視です。この結果、今日の様に利益とキャッシュフローは泣き別れてしまったの
  でしょう。帝国主義の戦争勃発が現代会計=発生主義会計の出発点とするとキャッ
  シュフロー会計は大航海時代の冒険商人ののどかで自然な会計だったといえるでは
  ないでしょうか?

                                         以上

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【ニュース・お知らせ】

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