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一般社団法人 ICT経営パートナーズ協会 メルマガ (第60号)
http://www.ictm-p.jp/
2018/12/19
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【目 次】
1.巻頭コラム『超高速開発で働き方改革は推進できるのか?』
ICT経営パートナーズ協会 理事
超高速開発分科会 委員長
樋山 証一
2.特集記事 『ものづくりのIoTの考察』
日本ユニシス株式会社 第3インダストリーサービス 営業2部
コンサルティング・マネージャ、博士(学術)、中小企業診断士、
全能連マスターマネジメントコンサルタント、米国PMI認定PMP
上岡恵子
3.ニュース・お知らせ
今号は特にありません
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【巻頭コラム】『超高速開発で働き方改革は推進できるのか?』
ICT経営パートナーズ協会 理事
超高速開発分科会 委員長
樋山 証一
表題のテーマで、11月8日に超高速開発コミュニティ主催のセミナーが開催され
ました。 4社の発表およびパネルディスカッションを聴きながら、私の考察を述
べます。
改革の対象として、ユーザーについてはITによる業務効率化が進み、業務の改善改
革ができるであろうということは推測されるので、ここでは論じません。
超高速開発の活用により、ITベンダー、ITエンジニアの働き方改革ができるのか?
について書いて見たいと思います。
残業時間を減らす、有給休暇を取りやすくする、顧客満足度を増やし、売上利益を
増大させることが働き方改革で実現できなければなりません。
超高速開発ツールを活用してのシステム開発は、アジャイル開発であることが多く
見られます。 上流工程において、動くシステム(プロトタイプ)をつくり、ユー
ザーに見て触ってもらい、要件や開発範囲を具体的に確定していく方法です。
プロトタイプを確認した後、ユーザーの変更要望に迅速に対応し、再度、ユーザー
に確認していただきます。
この作業を何回か繰り返すことにより、業務の流れ、データの流れをユーザーが納
得できるように確定させていき、大筋の業務要件が決まっていきます。
その後の工程で、使いやすいユーザーインタフェース、他システムとの連携、セキ
ュリティ、レスポンス対応を行っていきます。
当然、全体工数や開発期間はウォーターフォール開発より削減短縮できます。
また、開発時間の短縮とは別の効果も生まれるようです。
この開発方法はユーザーとベンダーのコミュニケーションが活発になることで、信
頼関係も太くなります。
経験したエンジニアの声から、楽しく仕事ができる、失敗しない開発ができるとい
うメンタルヘルスの観点でも効果があるようです。
ユーザーを喜ばす、ユーザーの役に立っていると言う実感がやりがいに繋がってい
きます。 これも働き方改革の成果と考えてよいのではないでしょうか。
さて、それでは超高速開発で働き方改革ができるのでしょうか。
これだけでは改革は難しいと思います。 働き方を変えていくことを妨げるものが
日本の企業で働く人の意識にありそうです。
残業代を計算して生活設計している人、残業することでお金を多く得たいという意
識、上司先輩が残業している中で先に帰ることができない雰囲気、定時退社しても
無味乾燥、特にやりたいこと夢がないという人生・・・
これらの意識が残業をつくっていないでしょうか。
それらを変えるのが企業であり、経営者だと思います。
残業代を減らしながら売上を維持もしくは拡大し、企業利益を増大させ、その利益
を残業しない社員に還元する仕組み、仕事が終わったら、早く仕事を終えた人から
オフィスを出ていける風土つくり、残業することが頑張っているのではなく、予定
時間内に良いものを創り出すことが評価される仕組み、仕事の他に趣味やボランテ
ィア活動、自身の成長への投資、家族友人との大切な時間を過ごすことなど魅力的
な生き方を見つけることへの啓もう・・・
こういう意識を企業、経営者が作っていくべきではないだでしょうか
私の会社も15年前頃から超高速開発とともに挑戦、失敗、改善、ちょっと前進を繰
り返してきました。 まだ多くの優秀なIT企業には及びませんが、同業下請けから、
ユーザー企業からの直請けが8割を超え、受注単価も2倍になりました
社員の報酬も何割かあげることができました。 残業時間はエンジニア平均40時間
以上あったが最近は10時間前後に減りました。 有給休暇は以前は取りづらかった
のですが今年は全社員平均12日を目標として進んでいます。 また在宅勤務を活用
して仕事をしてくれる人も出てきました。 なにより社員の能力、意識が変革され
てきたと感じています。
テーマである「超高速開発で働き方改革は推進できるのか?」に立ち戻ると、
働き方改革を進めるには、企業、経営者の覚悟が重要であり、超高速開発は、働き
方改革を推進する有効な手段といえるのではないかと考えています。
以上
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【特集記事】『ものづくりのIoTの考察』
日本ユニシス株式会社 第3インダストリーサービス 営業2部
コンサルティング・マネージャ、博士(学術)、中小企業診断士、
全能連マスターマネジメントコンサルタント、米国PMI認定PMP
上岡恵子
1.IoT~ユビキタス・コンピューティング創始者のマーク・ワイザー(Mark Weise
r)博士が描いた未来の実現
周りのあらゆるモノがインターネットでつながること意味するIoT は、無線通信
の普及、通信デバイスの小型化と低価格化により、企業を超えて個々人までイン
ターネットに接続し、新しいビジネスの仕組みをもたらしています。
IoTは、後にユビキタス・コンピューティングの創始者といわれる、パロアルト
研究所の技術主任だったマーク・ワイザー(Mark Weiser)博士が1991年の論文
で「PCに代わる、日常のあらゆる物に埋め込まれた見えないコンピュータ」[1]
を提唱したものが現実になったと考えられます。
当時、その論文の中でマーク・ワイザー博士は、ユビキタス・コンピューティン
グを実現するには、3つの要素が必要であり、それは、低価格コンピュータとデ
ィスプレイ、それらを繋げるネットワーク、そして、普遍的アプリを実現する
ソフトウェアである(Mark Weiser,1991)[1]と指摘しています。
低価格コンピュータとディスプレイはスマートフォン、ネットワークは携帯電話
や無線通信、普遍的アプリを実現するソフトウェアはモノや人からの情報を集め
てクラウドにアップロードしたり、エッジとしてローカルで収取・分析したりす
るプログラムや情報システムと対応付けると、彼がユビキタス・コンピューティ
ングを実現する3つの要素技術は今では環境が整い、IoTが潮流となることは必
然と感じます。
振り返ってみると、日本では2000年前後頃にはユビキタスというキーワードでRF
IDタグや無線通信を用いたモノと情報の一致の取り組みが行われました。筆者も
ホロニック生産管理の概念を基礎にRFIDにより駆動される工程管理のあり方の研
究を行っていました。しかし、RFIDタグの価格、安定した情報収集の技術などの
点で現実の世界で動かすことができませんでした。しかし、今では、RFIDタグを
つけた部品のカゴがコンベアを用いて工程に配膳される工場も実現されています。
2.IoTの要諦は、はじめに目的や狙いを定めること
IoT の核心はインターネットでつながれたモノやヒトから情報を収集し,新たな
情報を生み出し,それを利用し価値を創造することにあります。スマートフォン
をもつことで位置情報が分かり、お買い物のときにポイントカードを提示してど
のような人がいつ何を購入したか分かり、自動化率が高い(人間での作業が少な
い)ラインを持つ工場では、設備から自動的に大量のデータを収集できます。
しかし、蓄積された膨大なデータを分析しようとすると、どのようなデータを用
いて分析し、何に使えばよいのか思案に暮れることもあります。「IoTをどのよ
うに使えるか検討しなさい」とトップの意向からIoT推進室を新設し、IoT推進室
のメンバはIoTのツール情報をソリューション提供企業から収集して、何ができ
るか検討していることもあります。
しかし、膨大なデータもIoTツールも、はじめに何の目的に対して、どのような
情報を収集し、集まった情報をどのように活用して、そのような効果を創出した
いのかを設計しておく必要があります。
3.ものづくりのIoTでのデータ収集と活用の考え方
IoTには大きく2つの流れがあり、1つはドイツの国家プロジェクト「Industry
4.0」で、ある製品の複数の生産ラインをネットワーク化しものづくり全体の生
産性の最大や最適化を狙う取り組みです。
もう1つは、ゼネラルエレクトリック社(GE)が提唱し、米国で広がる「Indust
rial Internet」で、製品やサービスが使用された場所からセンサーなどで集め
たデータを収集・解析し、製品価値の向上や新たなサービスの創造を狙うもので
す。
ここでは、製造業の工場でのものづくりの現場、先ほどのIoTの大きな流れでい
うと、前者の「ものづくり全体の生産性の最大化や最適化」を取り上げ、ものづ
くりのIoTを考えてみましょう。
ものづくりを支援する仕組みとして、「生産プロセスをマネジメントし支援する
仕組み」と「製造現場を支援する仕組み」があります。
「生産プロセスをマネジメントし支援する仕組み」は、SCM(Supply Chain Mana
gement)、生産管理、基幹業務といわれるもので、効果的、効率的に、ものづく
りやお客様への提供を行う活動を管理し、企業会計に成果を提供するための仕組
みです。基幹業務システム、生産管理システム、MES(Manufacturing Execution
System:生産計画、製造実施管理、設備や機械の制御)、PDM(Product Data M
anagement)などの設計や製品のECMを支援するシステム、会計や経営コックピッ
トなどがあります。
「製造現場を支援する仕組み」は製造現場でより高い生産性で、よりよい品質の
モノづくり行うための仕組みです。これは、TPM(Total Productive Maintenanc
e)といわれる、ロスの顕在化、分類、削減、再発防止・未然防止による生産効
率の究極追求で、狙いは、TPMのロス16項目の排除です。時間当たり出来高を向
上し、材料仕損を低減し、労働生産性を向上し、原単位のロスを低減することで
製造原価の改善を行います。
TPMの活動で製造原価低減を行うためには、「製造現場を支援する仕組み」の
中で、生産設備から得られたデータ、温度、湿度など周辺環境も含めたセンシン
グデータを収集し、関連付けて蓄積し業務で活用できる形に変えて、「生産プロ
セスをマネジメントし支援する仕組み」の生産計画や製造実施管理にフィードバ
ックして製造指示の出し方や標準的な配合の改善を推進することが求められます。
また、「製造現場を支援する仕組み」の中で、製造現場の生産機械やセンサーを
介して製造現場の状況を可視化・モニタリングし、稼働率の低下や故障の予知を
行い、現場へフィードバックすることが求められます。
このように、ものづくり全体の生産性の最大や最適化を狙うIoTでは、TPMのロス
ゼロを狙い16ロスに関わるデータを収集すること、収集したデータを生産効率の
究極追求のために業務で活用できる形にするスキルを持つこと必要です。
さらに、製造現場の情報を「生産プロセスをマネジメントし支援する仕組み」へ
フィードバックし、改善した指示を「製造現場を支援する仕組み」に戻す必要が
あることが分かります。つまり、ものづくりのIoTでは、16ロスに関わるデータ
を収集してロスゼロへの改善に用い、「生産プロセスをマネジメントし支援する
仕組み」と「製造現場を支援する仕組み」とを統合することが求められるのです。
(参考文献)
Weiser, Mark. (1991) The Computer for the 21st Century, Scientific Americ
an, September-1991, pp.94-104
https://www.lri.fr/~mbl/Stanford/CS477/papers/Weiser-SciAm.pdf
(2018年12月16日時点確認済み)
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