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一般社団法人 ICT経営パートナーズ協会 メルマガ (第105号)
http://www.ictm-p.jp/
2022/09/21
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【目 次】
1.巻頭コラム 『EPA(経済連携協定)活用による収益力向上と原価管理変革要件』
国際会計・財務サポート分科会
青柳六郎太(中小企業診断士・税理士)
2.ニュース・お知らせ
・【ITコーディネータ協会有料セミナー】のご案内
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【巻頭コラム】
『EPA(経済連携協定)活用による収益力向上と原価管理変革要件』
国際会計・財務サポート分科会
青柳六郎太(中小企業診断士・税理士)
1.円安基調が進む中でのこれからの製造業の輸出戦略
コロナ禍で生き残りを描ける我が国の製造業では、目下、輸出ビジネスには有利
な経済環境として円安基調が進んでいる。(材料輸入は逆風であろうが)
一方の海外取引のビジネスチャンスをフォローする機運として近年世界の主要経済
圏で樹立が進んだ有力な経済協定(EPA)の活用による収益性獲得機会がある。
本講ではこれをテーマとして取り上げたい。
2.2022年現在のEPA締約国一覧
(1)シンガポール、(2)マレーシア、(3)タイ、(4)インドネシア、(5)ブルネイ、
(6)アセアン諸国、(7)フィリピン、(8)ベトナム、(9)インド、(10)モンゴル、
(11)オーストラリア、(12)メキシコ、(13)チリ、(14)ペルー、(15)スイス、
(16)TPP11、(17)日欧EPA、(18)日本英国EPA、(19)RCEP
3.EPAの活用メリットは、輸入先の関税負担の削減による輸出の促進と収益性向
上である。
(1)輸出ビジネスにおける収益性向上
輸出面では、EPA協定上、輸出品目が輸入国側から見てEPA協定上適格品であれば
基本的に輸入関税は免除される。輸入先は、輸出先の顧客であるから顧客は通常の
関税分が安く購入できるので、輸出業者としては売上高向上のフォローの風となる。
(2)輸入ビジネスにおける収益性向上
輸入は、輸出との反対側で考えれば良い。説明が重複するが輸入面でも輸入品目
がEPA適格品であれば基本的に輸入関税は免除される。製造業者であれば輸入材料
や部品が安くなり、製品化後の国内販売でも輸出販売でも製造原価が削減できる効
果がある。
(3)EPAにおける輸入関税免税効果の適格要件
しかし輸出入当事者の所在地両国にEPA協定が締結されていれば無条件に輸入関
税が免除になるわけではない。
以下EPAにおいて輸入関税が免税となる適格条件について説明する。
1)輸入品目の原産性の有無
輸入品目が輸入国のEPA基準から見て、“原産性”が適格であることが必要である。
原産性の審査は、(1)輸出者自身による自己証明制と(2)商工会議所など第三者による
証明制適用の2種類があるが、今後のEPAの制度的な動向から輸出者による自己証
明制度の利用が望ましいと考える。
輸出後の輸入国税関からの事後監査があるので、引合段階で自社の製造物が客先国
のEPAを通過できるかどうか製品仕様製作段階で自己審査できなければ数年後に巨
額の罰金を支払わなければならないリスクがあるからである。EPA規約違反の罰金
に対する損害保険があるかどうかは筆者は知識がない。さて現状は日豪EPA、T
PP11,日欧EPAが自主証明が可能である。
また自己証明制度では、第二種原産地証明書と言われる特定原産地証明書を発行で
きるのは生産者、輸出者、輸入者、代理する通関業者とされている。前述の通りこ
れからの時代のEPAでは輸出者(生産者)がICTを活用して審査基準のチェックを行い
、その結果を以てEPA輸出申請を通すスタンスを構えることが望まれる。以下、適
合要件の主だった種別を簡潔に記載する。
2)EPA取引の適用条件審査要件
EPA輸入取引で輸入品目の適格性は基本的に輸入港の税関が審査する。
適用条件の審査には4つのパターンがある。パターンを順不同で説明する。
1つは、完成品目に対する構成部品等の関税分類(HSコード)変更基準である。
部品表があれば、分かり易い。
1-1.品目の完成時の関税コード(HSコード)と、使用した部品等の関税コード間
とを対照して異なっていること。即ち、適格性がある部品を加工して適格性がある
製品にコードが異なるほどに加工が施されていること。生産事業者がICTを活用し
て自主審査するには、我が国のHSコードは9桁あるが、そのうち上位NN桁の範囲
で、材料や部品と完成品のコードが違っていれば確かに加工された製品であるとの
確証となるという考え方である。
逆に差異が無ければ、有効な加工がおこなわれなかった製品として見なされ関税免
除の資格なしとなるわけである。
2つ目は、付加価値基準である。
2-1.製品の加工活動が、EPAから見て付加価値のある加工活動であること。EPA基
準から見て付加価値のない加工活動は、いくら高額の原価が費やされてもEPAが適
格とする付加価値の累計額は合格点まで積みあがらずに関税の免除対象にはならな
い。
付加価値が認められない加工活動には次に様な例がある。冷凍、乾燥、塩水漬け、
切断、塗装、混合、張合わせ、組立たものの分解、仕分け、マーキング、ラベル付
け。セット化、瓶詰や箱詰めなどの一読して単純な軽作業が該当するようだ。
2-2.加工による付加価値額率の大きさで関税免除の適不適を判断する。
輸出品目の加工プロセスの原価明細を見て、加工明細がEPA視点で付加価値のある
加工を行っており、かつ付加価値額の合計が、原価全額のNN%(例示)など適用EPAで
指定された閾値を超えていること(NN%は地域別EPAごとに異なるので個別に確認
が必要)
3つ目は、加工工程累積数による審査基準である。EPAが○○品目について規定して
いる累積工程数を踏んで製造されているかの基準である。(これも地域別EPAごと
に品目別に)異なるので個別に確認が必要)
その他上記以外の規定があるが詳細は省略する。
4つめは積送基準のクリアが必要である。
輸出地から輸入地までの積送ルートの適格性が審査される。
(1)直接輸送と(2)第三国経由も含む諸条件で積送基準の適格性が審査される。
第三国経由の場合は、経由地で実質的な加工がされていないこと&第三国での税関
での管理下にあることなどの条件が課されている。
(4)EPA活用と製品製造原価管理の基盤整備留意点
EPA活用による製品情報の基盤整備要件として、EPA輸出申告で特定原産地証明書発
行に必要な
(1)輸出品の製品と構成品のHSコード対比表の添付および
(2)輸出品の製品構成の付加価値明細表および
(3)製造工程フロー図
の整備が必須要件であろう。
今までは、通関業者からの派遣サービスや輸出入手続きに手慣れたプロが手作業で
手際よく作成されていたものと思われるが、今後は自社の生産管理システムのドキ
ュメントや製品別原価明細書からのデータ連携で効率的に作成する仕組みづくりが
期待される。
1)完成品対部品のHSコード対比表作成
これは部品表を使用している製造業では、部品表からの編集で作成が可能と考えら
れます。
但し英文で作成することが必要でしょう(以下同様)
2)製品構成付加価値明細表作成
付加価値基準による完成品の原産性を疎明する加工付加価値明細表作成
これは、工程別加工明細書や原価明細表を作表している製造業では、少し帳票の加
工編集が必要ですが情報連携で作成が可能と考えられる。
項目名では
(1)工程名 (2)加工内容 (3)付加価値性有無、(4)材料原価または作業工数X予定賃率
(5)累計付加価値率が必要であろう。
3)製造工程フロー図作成
国内外の税関等の審査員が可視化できるように輸出入品の原産性を目視で疎明する
製造工程フロー図が必要です。製造仕様書からのデータ連携による自動作成が求め
られる時代であろう。。
(5)EPAの付加価値累積要件と我が国の製造原価計算のギャップ
ここまでのご説明をご一読されて方はEPAが求める製品の付加価値累積要件と我が
国の製造原価計算とは似て非なるものがあることがお分かりと思う。
(1)EPAが求める付加価値値≠原価費目
我が国の原価計算は、昭和37年に大蔵省が定めた原価計算基準を60年余にわたって
踏襲し続けており、製造業も例外なく、これを準用している。
原価計算基準の費目明細=生産資源の購入額明細表で、製品にどのような付加価値
を加えたかを税関の審査員に教えてくれる付加価値の記載を要件とはしない。
従って、製造原価計算明細は、EPAが関税免除の条件としない原価明細を含んでし
まうので事後不適格な申請をしたとして罰金を科せられる対象となる。
また、販売促進費や港湾までの輸送費は製造原価明細に入れないので付加価値から
は漏れてしまい付加価値の点数稼ぎには不利になるリスクがある。。
あるべきプロセスとしては、手作業なら製造業が原価計算時に、加工明細のEPA
適用要件を踏まえて、加工活動明細毎に付加価値性有無を入力する必要がある。
DX化の対象とするなら加工活動明細毎に付加価値性有無を事前登録することが有
効でしょう。またEPA 申請に対応した付加価値明細表作成をシステム化し、その中
で従来の製造原価計算を統合的に行うことが有効と考える。
EPA適用付加価値明細表>製造原価明細表の認識が必要であろう。
以上
EPA=Economic Partnership Agreement.経済連携協定の略
HSコード=International Convention on the Harmonized Commodity Description
and Coding Systemの略
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