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第92号(2021年8月)記事『 情報システムの主導権を取り戻そう』

ICT経営パートナーズ協会
働き方改革分科会委員長 岡田裕行

脱炭素や環境破壊対応等、事業環境は大きく転回し新たな時代が急速に進みつつある。働き方改革もコロナ禍でリモートワークが注目されているが、本質的な改革はむしろこれからという状況である。
新たな時代に向け、企業が生き残る大きなポイントである情報システムにどう向き合えばいいのか。
日本の特殊な事情を考慮しながら情報システムの主導権をユーザが取り戻すことの重要性を考えてみたい。

 

日本は世界でも突出した急激な少子高齢化という固有の問題がある。
国立社会保障・人口問題研究所では2065年には総人口8,808万人、生産年齢人口(15~64歳)は2015年に7,728万人であったものが2065年には 4,529万人、50年で約3200万人減少と推定している。
韓国の2020年の生産年齢人口は3600万人であり、今後50年で韓国の生産年齢人口相当の数が消えてしまうインパクトである。

 

その上、2019年の日本の生産性(労働者一人当たりGDP)は824万円で米国の6割、しかも向上していない。
2015年から2019年の年平均実質上昇率は米国が0.9%に対して日本はマイナス0.3%。
OECD加盟国平均は0.7%で日本より上昇率が低いのはニュージーランド(-0.7%)のみである。(日本生産性本部)

 

付加価値と生産性が向上しなければ経済成長はなく賃金も上がらない。
生産性向上のカギの一つはITの活用。
デービット・アトキンソン「新・所得倍増論」によると、ニューヨーク連銀の分析『米国は1996年から2001年までの労働生産性の上昇の75%はITの貢献である。
しかし1995年以前はITの貢献は低かった。
当時は人の働き方に合わせていかに人を楽にさせるかに主眼があったからで、効果を引き出すには企業が組織のあり方、仕事のやり方を変更し、人材その他にも投資する必要がある」と分析している』とのことである。
小手先のIT活用でなく、腰を据えて組織のあり方、仕事のやり方を地道に変革することが喫緊の課題である。

 

情報システムは企業のビジョン、戦略、組織、業務プロセスと密接に関連して構築され各企業固有である。
従ってICT活用の大前提は自社のビジョン、戦略、組織、業務プロセスを明らかにし、情報がどこで発生し、どう流通し、どう活用されているかを明確にすることである。

 

これはまさに経営者が責任を持つ領域で、決して情報システムだからとIT部門に放り投げて済む問題でも、社内に技術を知っている者がいないから外部に委託してDXを開発して貰おうという問題でもない。
情報システムの主導権を持つということはこの大前提をきちんと自社内で出来るようにすることである。

 

2015年ベースでIT人材の内、IT産業に属す者は日本で72%、アメリカが35%、欧州 でも4割前後である(内閣府令和2年度年次経済財政報告)。
日本企業のIT産業依存は突出している。
ここでのIT人材はIT専門技術者という意味であり、上記の主導権を持つための人材は必ずしも技術者とは限らない。 しかし情報システムをどう理解し、どう立ち向かうかに関する日米の捉え方の違いが表れている。

 

自社の業務プロセスも十分把握されておらず担当者だけが知っており、全体が俯瞰できない企業が殆どではないだろうか。
業務プロセスを組織、人材と関連させて明示的に記述、共有、変更できるツールが存在するがあまり使われない。
情報システムというと技術面に目が行き、足元がおろそかになっている。
しかしプロセスマネジメントツールを有効活用している企業は業務プロセスの改革、ICT活用が加速度的に進展している。主導権確保の原点であり、競争力に貢献する情報システムの構築に不可欠である。
更に変化対応スピードは競争優位の大きなポイントであり、開発も自社に取り込むことが出来る環境になってきている。

 

広く使われているExcelをベースに柔軟にシステム構築が出来るツール。
繰り返し作業の自動化で大きな力を発揮するRPA。
ローコード、ノーコードを呼ばれるツール類は従来のようなコンピュータ特有のプログラム言語を使わず、業務部門の人が自分でシステムを組めるようになっている。
これらのツールはクラウドで学習可能で実際に多くの業務担当者が使いこなしている。勿論、主導権を確保したうえであれば外部の知恵や力をどんどん活用すればいい。

 

当協会では上記各種ツールに加えて情報システム開発の上流をサポートする仕組みのノウハウもある。
例えば標準業務プロセスを参照しながら暗黙的要求や潜在的要求も表面化し、うまい仕事の進め方にヒントを得ながら自社のプロセスに付加価値を持たせる手法や定量的に要求を整理し合意形成を的確迅速に把握するツール等である。

 

当協会は日本の生産性向上のためにユーザ企業側の立場でデジタル化の支援をしている。
また中小企業庁の『中小企業デジタル化応援隊事業』も専門家活用時の負担金の補助をしている。
当協会ではデジタル化をどう進めればいいのかといった相談にも応じている。
お気軽に相談頂きたい。

相談先メールアドレス(事務局):info@ictm-p.jp

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