

【巻頭コラム】
『ビジネスマンにとっての英語学習の意味』
ICT経営パートナーズ協会理事
小林 寛三
1.英語講師の機会
今般、品川区のシルバー大学にて英語講師を務めることになった。商社での海外経験などが評価されたと思われるが、英語に興味のあるシニア対象とは言え、さまざまなレベルの受講者を対象に、興味を持てる内容で、かつ駐在や滞在した経験のある話題を中心に、「誰でもできる英会話の旅と交渉」というテーマの講義を計画した。
このために100ページを超す教材を自作する過程で、これはビジネス場面でも役立つ面が多いことに気づいた。ビジネスも、想定外のことが起こり得るし、その時々の場面で意思決定し、相手とコミュニケーションして、双方に満足の行く解決を求めているというプロセスは、”旅と交渉”というテーマと共通だからである。
2.英語活用の世界の拡大
英語は、米国・英語・豪州・カナダなどの言葉であるだけでなく、EUやアジア、中東、東欧、ロシア、アフリカ、中南米などでも多用される国際語でもあり、むしろ第二外国語として利用する人口の方が遥かに多いほどである。特に、インターネットの拡大によって、さまざまな専門分野の用語が、まず英語で発信され、定着化する傾向が加速している。
3.英語情報流通の拡大
最近のコロナ感染や政治・軍事情報、環境問題、エネルギー問題など世界的な課題での情報流通が拡大しており、英語による情報発信は、質・量とも他言語を圧倒しており、それらフォローしないと状況判断が適確に進まない。英語専門チャネルの存在しない日本の遅れは、海外各国では、あたり前の状況になっている状況と比較すると彼我の違いは際立っている。放送大学ですら、(一部の英語講座を除けば)英語による専門的な講義がほとんど行われていない。
4.コーパス(Corpus)による辞書の発展
最近のAIの発展によるコーパス(Corpus)を利用した辞書の進展は、加速している。語学の権威に多く依存してきた文献収集が、最近では、活きた言語活用の実態を示すことができるようになってきた。その成果の一つは、和英辞典の進化である。従来は、和英辞典は、単なる日本語の逆引き機能でしかなく、ほとんど役立たなかったが、最近では、日本語と英語の表現の対比から日本人が表現する場合の留意点まで驚きの連続であり、読み物としても深化してきている。[おすすめは、2007初版発行の三省堂のウィズダム和英辞典である。この辞書の巻末には、80ページに亘って英語基本文型と例文が記載されていて、基本単語の用法がまとまっている。]
5.交渉のための英語
今回の講義のテーマは、”旅と交渉”とした。旅にはさまざまな発見があるとともに交渉しなければならない局面がでてくる。ビジネスは、信用獲得とリスク最小化のためにも、その時々の場面での交渉は重要になってくる。[オレオレ詐欺は、国内の問題ではなく、国際的には、もっと精緻でレベルの高いオレオレ詐欺によく遭遇する。
いわばクールさを失わない交渉力が試される場面でもある。] 商談には、納期(Delivery), 価格(Price), 支払条件(Payment)の3要素をまずConfirmすることから始まる。
[これをCDPPと称した]これは、詐欺やトラブルを避ける意味でも重要である。また交渉のためのコミュニケーションとして、有名な’PRAMの原則’がある。交渉する前に、何をゴールとするかのPlanning。相手の信用などRelationship の確認。
そしてGive & Takeによる相手とのAgreementの確認。もし合意できない場合でも、今後の展開に備えた相手とのMaintenance of Relationshipの確認である。
6.未知との遭遇
今回の英語講義で、”どのように新しい単語を覚えたらよいか?”という想定質問に対する回答を用意した。これはビジネスでの初対面の交渉の場面と同じであると回答しようと思う。即ち、(未知の)対象を数秒間見つめてイメージを掴む。どのような場面・役割の中で相手が登場してきているのか、既知単語との相違や比較、また再開の頻度、第一印象(スペルなど外見的特徴、登場場面となった源 (語源・出身)、相手の主張する場面とインパクトなど、未知の交渉相手と未知の単語に遭遇する場合はよく似ている。[相手の表現方法によっては、相手の立場・権限・出身地・交渉相手としての癖などわかる場合もある。同時にこちらの状況も相手にわかってしまう。] ビジネス上の面談も、未知の単語も、結局、相互に”個人情報”を露出することで、相手の認識の範疇に飛び込むことになる。
7.英語による情報発信の効用
ある発想が浮かんだら、これを英語でどう表現するのかを考えることは、時間はかかるものの、別視点から内容を吟味する上で有効である。英語表現では、(やはり外国語なので)微妙で曖昧な表現が難しくなる反面、直截的、具体的、論理的な文章の方がむしろ表現しやすくなる。まず論点を明確にした上での、結論を先に述べるという英語表現法もビジネスの進め方と同じである。その理由・根拠を具体的、なるべく定量的に、Because 1), 2), 3)でつなげて論証する。さらにその結論が展開され、新たな視点の広がり、今後の課題にも言及する。実際に英語で発表しない場面であっても、そのキーとなる概念だけでも、英語的な発想で思考して準備しておくことは意味がある。その情報発信の続編を作成する必要がでてきた時も、概念の整理をバイリンガル的に行うことによって、その後の展開に役立つ。
8.情報のアーカイブ化
さらに情報は新たな展開に応じて、修正・追加され、検証、再利用することが重要である。このためにも、作成日や作成意図をつけた文章の記録を、デジタル情報として作者のライブラリとしてアーカイブしておくことが重要である。いわば未来の自分に対して情報を準備・提供しておくのである。デジタル化した情報は、検索が容易で、いつでも参照・編集でき、ゼロから考えてもの書きするより遥かに効率的である。これは、ビジネスでは、CRM (Customer Relationship Management)そのものである。交渉を通じて得られた顧客の情報は、CRMを通じて蓄積され、関係が評価され、強調あるいは無視され、次のビジネスの展開に影響を与えていくのである。
9.ICT経営パートナーズ協会(ICTM-P)のロゴ
それには、関隆明前会長の時代から、Intelligent, Cooperative, Transborder, Managementがサブタイトルになっており、ICTを通じた協業の追求とグローバル化は、ICT経験の重要な要素であるとの認識が一貫していた。今回のシニア大学での英語講師という経験も、英会話の旅と交渉という気軽なテーマを掲げつつも、実はICTM-Pのロゴに表現してあるような、グローバル化時代の日本のあり方、旅でもビジネスでも遭遇するさまざまな場面での情報判断と協力関係の維持、そしてリスク多き時代でも元気さを保ち、前向きで多様な選択肢や解決策につながるような講義にしたいと考えている。
以上
【巻頭コラム】
『「人材=管理するもの・されるもの」なのか?』
株式会社真経営 代表取締役
早川 美由紀
従業員数300人以上の企業の経営者・役員対象の調査に基づく、「今後の経営戦略上、重要と考える施策」のベスト3が明らかになりました。
1位:人的資本経営
2位:ガバナンスを重視する経営
3位:DX
(産業能率大学総合研究所調べ 2023.1)
結果は、皆さんの予想通りでしょうか?
3位のDXについては、これまでも会員の専門家の方々が論じてくださっていますので、本日は、1位の人的資本経営について少し触れたいと思います。
1位の人的資本経営については、昨年11月に政府が上場企業に対し、有価証券報告書に人的資本情報を含む非財務情報の記載を義務づける方針を打ち出したことが契機となり、今、旬なワードとなっています。
つまりは、各企業の人材の育成・活躍の状況が、世の中につまびらかとなり、いかにステイクホルダーから選ばれる企業となるか?が問われる時代となっていくということです。
ただ、この流れ、「人材に投資をする」きっかけとなればいいのですが、表面的な数合わせが目的となってしまっては、まったく意味がありません。
企業は「経営戦略」と「人材戦略」の関連性を高め、戦略実行のために、どのような人材を採用し、どのように育成し、活躍の場をつくるか?
抜本的な施策が必要となります。
3位のDXと絡めると、戦略的なリスキリングも大切な施策の1つとなります。
その一方で、個人ひとりひとりも変わっていく必要があります。
今後は、会社が敷いたレールの上をただ真面目に走るのではなく、
・社会や会社が変わる中で、自分はこれから何をやりたいのか?
・そのために、何をどのように学ぶのか(経験含め)?
自分で考えて、自分自身をアップデートし続ける必要があります。
自らの意思がなければ、多くの選択肢があっても選ぶことはできませんし、やらされる学びには意味がありません。
「人材=管理するもの・されるもの」という意識から、企業も個人ひとりひとりも抜け出すことができるか?
日本の未来がかかっています。
【巻頭コラム】
『DX化推進に向けて
ジョン・コッター「変革の8段階プロセス」を考える』
MTIコミュニケーションズ
代表 今井雅文
中小企業診断士、ITストラテジスト
中小企業のDX推進に向けて伴走支援している読者も多いことと思いますが、どのような取組みを行っておられるでしょうか?
経済産業省「デジタルトランスフォーメーション(DX)を推進するためのガイドライン」では、DXを以下のとおり定義しています。
「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」
「革新」という文字が2回出てきています。社会情勢が不安定の中、今求められるDX推進とは、「ITの導入による業務の効率化」や「業務の電子化による生産性の向上」などではなく、「デジタル技術を活用したビジネスモデルの革新」であると言えます。
それでは、企業にとって「革新」がどうして必要なのでしょうか? TKC全国会では、その必要性を以下のように述べています。
第一に現商品の顧客満足度と売上高は必ず逓減していくものであり、
第二に市場競争により限界利益率も必ず逓減していく、従って、
第三に現状維持は衰退への道となり、イノベーションが無ければ企業は存続できない。
既存事業延長による経営では、経済社会環境の変化についていけず、その業績は衰退していく。これに抗するためにはイノベーションを創出するための革新が必須だということだと思います。我々が「DX推進に向けた伴走支援」するということは、「革新への伴走支援」を実施することと同義だと言えます。
中小企業の革新をどのような進めていけばよいのか、そのプロセスは多様であり難しいところですが、我々はプロセス策定の拠り所を持っている必要があると思います。
この拠り所のひとつとしてジョン・コッターの「変革の8段階プロセス」があります。
以下にご紹介します。
経営革新を成功に導くジョン・コッターの「変革の8段階プロセス」理論
中小企業において、経営革新を主導するリーダーは経営者です。何故なら、中小企業では経営者の考えに合った企業風土が形成されやすく、経営革新に取り組むことと経営者の姿勢が直結する傾向にあるからです。しかし、経営者だけでは経営革新は達成できません。そこには従業員と意識を共有し協働する活動プロセスが必須となります。この活動プロセスを策定するに当たって参考となる理論が「変革の8段階プロセス」です。
ジョン・コッターは、多くの事例を分析した結果、組織内での変革が進まないのは、8つの「つまずきの石」が原因である主張しています。この石とは、(1)内向きの企業文化、(2)官僚主義、(3)社内派閥、(4)相互の信頼感欠如、(5)不活発なチームワーク、(6)社内外に対する傲慢な態度、(7)中間管理層のリーダーシップ欠如、(8)不確実に対する恐れの8つです。これらのつまずきの石を乗り越え、変革を推進するために、以下の8段階のプロセスが有効であるとしています。
第1段階 『緊急課題であるという認識の徹底』
市場と競合の状況を分析し、自社にとっての危機を見つけることにより、変革に携わる関係者の間に「危機意識」を生み出すことができる。
第2段階 『強力な推進チームの結成』
変革をリードするためのパワーを備えたチームを築いていくために、変革の担い手となる人材を集めなければならない。変革推進チームには、変革の主導に必要となるスキル、人脈、信頼、評判、権限があることが望ましい。
第3段階 『5分で話せるビジョンの策定』
変革に導くためにビジョンを策定し、ビジョン実現のための戦略を立案する。過去の成功した変革を観察すると、変革推進チームメンバーが心躍るビジョンや戦略を共有している事例が多い。
第4段階 『徹底したビジョンの伝達』
シンプルで琴線に触れるメッセージをいくつものチャネルを通して伝え、ビジョンや戦略を全社に周知徹底する。あらゆる手段を活用して、粘り強くかつ継続的にビジョンと戦略を伝えると同時に、推進チームメンバーは、自身の行動で従業員に伝えていくことが重要である。
第5段階 『ビジョン実現の障害を取り除く』
ビジョンの実現に向け自発的に行動する人材が増えていくよう、これを阻む障害を取り除くことが重要である。障害となりうる組織構造やシステムを変革することで、従業員がリスクを取り、いままで遂行されたことのないアイデア、活動、行動の促進が可能となる。
第6段階 『短期的成果を上げるための計画策定・実行』
目に見える短期的成果を生む計画を立案し、実際に短期的成果を生み出す。これら短期的成果に貢献した人々をはっきりと認知し、報酬を与える。
第7段階 『改善成果の定着とさらなる変革の実現』
短期的な成果の定着をテコとして変革に勢いをつけ、変革ビジョン実現に適合するシステム、構造、制度を創出する。また、変革ビジョン推進に貢献する人材の採用、昇進、能力開発を行う。
第8段階 『新しいアプローチを根づかせる』
変革ビジョンに基づいた新しい取組と企業成功の関係を明らかにし、各階層のリーダーが変革を根づかせる。また、リーダーや後継者の育成を進めていくことで、変革を企業文化として定着させる。
この「変革の8段階プロセス」、どのように評価されますか? 企業組織、文化、風土などが壁になりIT導入がうまく機能しなかった経験をお持ちの方も多いのではないかと思います。その対策として参考になるのではないでしょうか?
(独)中小企業基盤整備機構「中小企業のDX 推進に関する調査」(2022.5.16)では、そのポイントして以下の2項目が挙げられています。
・2割超の企業がDX の推進・検討に着手済み。一方、取り組む予定のない企業は約4割存在する。
・DX の具体的取組内容として「ホームページの作成」を挙げる企業が約5割。「IoTの活用」「AI の活用」などは少ない。
すなわち、DX化は未だ7割超の企業が未着手であり、その取組は未だ始まったばかりだと言えます。今後、我々は、ITコンサルスキルばかりではく中小企業の経営革新コンサルスキルも身に着け、実効性のあるDX化伴走支援の質向上への努力を継続していくことが求められるのではないかと思います。
【会長コラム】
『DX推進はITスキルのみにて成らず』
ICT経営パートナーズ協会 会長
木村 礼壮
遅ればせながら、明けましておめでとうございます。
昨年は、大変お世話になり、どうもありがとうございます。
2023年は兎年ということもあり、大きくジャンプアップしていきたいと思っている方々が多いかと思います。
よく言われることですが、「業務改善で得られる効果は効率性や収益を数割程度向上させることだが、10倍・20倍に向上させるにはイノベーションが必要である。」とのことを考えると、大きくジャンプアップするにはイノベーションが必要ということかと思います。
そして、気候変動の影響により年々増加する豪雨や大雪等の自然災害、グローバルに絡み合う問題の複雑化等を踏まえると、今年もVUCAが加速する年になると思われます。
そんな中でも企業として勝ち残るために付加価値をあげていくことが重要というのは当たり前のことですが、そのためのやり方は各企業によって異なるでしょう。
ただ、大概の企業でも有効利用できるものはいくつかあると感じています。
DX(DX自体がイノベーションの一種ですから)推進もその一つかと思います。では、そのDX推進を実施する際に有効なスキルはどんなものがあるでしょうか。
色々とあると思いますが、一番とっかかりという意味では「利用者の要求の把握」とか解決すべき「問題の発見」とかがあるかと思います。その段階で役立つスキルのひとつとして、デザインシンキングがあります。
欧米ではごく当たり前のスキルとなっており、欧米ではその先に進んでいるところもありますが、日本ではまだまだ使いこなしていないように感じます。
それでも、経済産業省や内閣府からもDX推進に利用すべきスキルとして推奨されていることもあり、ネット上でも官公庁も含めて様々な国内事例を良く見かけるようになりましたので、良くご存知の方も多いかと思いますが、更なる普及が必要と思いますので、あえて、ごく簡単にデジタルシンキングについてご紹介いたしたく思います。
今まで世の中に存在していなかった価値を提供するということは、その価値で便益を受ける利用者がいるということであり、その利用者のことをよく知らなければ、利用者の喜ぶ価値を提供することはできません。
デザインシンキングは、利用者の考えていること・悩み・要求を深く探究することにより解決策を利用者との協業で見出していこうという考え方です。常に利用者中心であり、利用者との共創であることが特徴です。もう一つの特徴はデザインシンキングの進め方は一方通行(線形)ではなく後戻りもしながら行ったり来たりの非線形プロセスであることです。
デザインシンキングは本家のスタンフォード大学で5つのステップを提唱しており、
(1)共感、(2)定義、(3)アイディア、(4)プロトタイプ、(5)テストがあります。
(1)から(5)までを順番に行う訳ではなく、行ったり来たりを繰り返し最終的な解を得て企画作成します。
デザインシンキング型のイノベーション開発では、アイディアからプロトタイプを作成し、それをテストし洗練させるというプロセスを素早く繰り返しますが、企画を出せば終わりではありません。重要なことは、企画を出すだけでなく、それを実際にソリューション/サービスにするための行動にまでつなげていくことです。
それと、日常的にデザインシンキングの考え方を応用できるまでに腹落ちさせることにより真のスキル修得状態となります。
更にその先のプロセスとして、企画を実行に移して、実行結果を基にした利用者からのフィードバックを得て改善を実行していく探求型の取組も重要になります。
デザインシンキングを実行するためには、始める前に対象範囲を決めて、利用者を特定します。
範囲が決まれば、(1)共感のステップを開始します。利用者と思われる人々の情報を集めて、(通常はインタビューをしますが、私は経験上ビッグデータ解析がかなりの部分を代替してくれると実感しています。)利用者の真の要求を究明していきます。このステップでの肝は真の要求の把握です。表層上の要求を得ても意味がありません。例えば、利用者が「速く走る車が欲しい」と発言しても短時間で目的地まで移動したいのか、あるいは、速く走る車でのドライブを楽しみたいのかで提供するべきものが違ってきます。
(2)定義のステップでは、共感ステップから得た情報をどのようなニーズがあるかという視点でまとめ上げ、そこから課題を定義(明確化)していきます。この作業で良く利用される穴埋め定義フォーマットとして、
(「ユーザー」 は「 ユーザー の ニーズ」 を実現したがっている、なぜなら「我々が想像していなかった真の要求達成」のためだ。:鍵括弧内を穴埋めします)等があります。
次の(3)アイディアのステップでは、ブレスト等で問題を解決するためのアイディアを考えます。私はKJ法等をよく利用します。ブレストでは、ファシリテータを決めますが、ファシリテータとは、知見者として正解を教えたり、リーダーとして何かを決めたりするのではなく、参加者が自分の アイディアを自由に言えるような、会話の場を活性化するための役割です。
(4)プロトタイプのステップではペーパープロトのような簡単なプロトタイプを作成します。アイディアの内容が理解できるような資料でも良いです。プロトタイプの目的はアイディアの検証ですので、アイディアの検証ができれば良いのです。
(5)テストのステップでは、利用者にプロトタイプの内容を評価して貰います。可能であれば、プロトタイプをいくつか用意して様々な評価を貰うことが良いです。何をどのように改善すると利用者へ最大の価値を提供できるようになるかを検証していきます。
(1)から(5)のステップを俯瞰して眺めてみると意見(利用者からの情報)の発散と収束を繰り返していることが分かります。より多くの情報を集め、実際のアクションポイントに収束させていっていることがわかると思います。
デザインシンキングのプロセスを理解して、実行できるようになることが重要ではなく日常でもその考え方を元に様々な事象にデザインシンキングを適合させて応用していく習慣をつけることにより、VUCA時代を生きる力が身についていくと思います。
特に激動の時代でDXを推進しようとする場合、革新技術の方にばかり目が行きがちですが、利用者の真の要求の理解なくして、DXの成功はあり得ませんので、身に着けていて損はない考え方かと思います。
ここでは、あまりにも簡易な説明しかしていないので、デザインシンキングをよく理解できないかもしれませんが、興味ある方は是非、空き時間にでもネット上を検索するとか書籍を読むとかをして頂くと嬉しく思います。その際は、できれば、英文の資料を読まれることをお勧めいたします。日本での普及は欧米と比べるとまだまだですので、先行している情報に触れることがお勧めです。
DXは、革新的技術が中心ではなく、人中心のものです。なぜなら、便益を受けるのは人ですし、どんな価値を提供するべきかを決めるのも人だからです。
弊協会もDX推進に向けて、皆様のご支援・ご指導のもと多くの取組を実施しております。
どうか今年も皆様からの変わらぬご指導・ご支援を賜れますようお願いいたします。
【巻頭コラム】
『開発手法の多様化に対応した品質管理手法の取り組みについて』
合同会社TAHARA
田原 秀夫
ソフトウェア開発の品質管理の手法、定量的な品質指標としてテスト密度・バグ密度を組み合わせて利用されているプロジェクトが多いかと思います。
しかし、昨今、開発方法が多様化し、特にローコードやノーコード等といったツールはプログラムコード行数を用いた指標を利用するのは難しく、また、上限値・下限値を定めた指標値での評価は、類似プロジェクト情報の入手が必要ですが、技術多様化によって、類似事例を揃えるのが厳しい状況にあると考えています。
そこで、弊社が取り組んでいるコード行数を用いないテストフェーズにおいての品質管理手法として観点カバレッジとDDPモニタリングという2つの分析技術を活用した手法について紹介させて頂きます。
分析技術紹介の前にどの様な方向性でこの手法を使用するかですが、JISX0129-1における品質モデルの定義で、プロセス品質が内部品質、外部品質、利用時の品質に影響を与え依存しているとされております。このことからプロセス品質を上げるためにはプロセスを改善していく事が重要であると考え、その手段として、この手法を組み合わせ品質維持と開発速度を落とさない手法を目指します。
【観点カバレッジとは】
観点カバレッジとは、テスト観点に対してテスト項目数、摘出バグ数を対応付けた表の事を指します。
この観点カバレッジ表を用いることで、以下に示す事の確認及び活用ができます。
・テスト観点に対しての項目の有無、網羅性、偏りの確認
・摘出バグの偏り、観点漏れの確認
・異常値があった場合にテスト項目の妥当性や改善必要性の判断
また、より効果を高めるためにプロセス改善のモデルとして利用されるPDCAサイクルにテスト工程を当てはめ、
「テスト観点検討(PLAN)」→「テスト設計、実施(Do)」→「成果物確認、観点カバレッジ表作成(Check)」→「テスト設計プロセスの改善(ACTION)」の形で回していく事でプロセスを改善しつつ品質を上げていきます。
【DDPモニタリングとは】
DDPとは、Defect Detection Percentage(欠陥摘出率)の略称で、テストプロセスのバグ摘出能力を示し、すり抜けバグ(※1)が増えると値が下がる特徴を持っている品質評価技術になります。
DDP算出方法
DDP = n / ( n + x )
n:評価対象のプロセスで検出できたバグ
x:評価対象のプロセスをすり抜けて検出されたバグ
DDPモニタリングとは、このDDPをグラフ等活用し、値の推移を観察していく事を指します。
DDPの変遷を観察していく事で、極端に値が降下した場合等、異常のあるプロセスを特定することができるので、異常検知のタイミングで改善策の検討・実行し品質改善を行っていきます。
さらに、このモニタリングから改善までの流れをOODAループというモデルに当てはめ
「すり抜けバグの発生状況確認、DDPモニタリング(Observe)」→「品質の低いプロジェクトの特定(Orient)」→「改善策の決定(Decide)」→「品質改善の実施(ACTION)」の形で進める事で、発生した問題に対してより迅速な対応をしていきます。
また、品質の妥当性を判断する為の指標値としてDDPの評価閾値を予め定めておき、その値をもって評価を行いプロセス品質の妥当性も併せて判断していきます。
例えば、
DDP閾値が長期間95%を超える場合:<改善検討>テストが狙い通りの効果を出せていない可能性がある
85%以上95%以下の場合:<順調>テストが狙い通り効果を出せている
このように閾値を事前に設定します。
【分析技術を組み合わせた品質管理手法について】
組み合わせ方と実施タイミングについては、確認対象のプロセスにおいて、そのフェーズ着手中は観点カバレッジ、以降フェーズではDDPモニタリングを用いる組み合わせ方で品質管理を行っていきます。
例えば、確認対象を単体テストとした場合、単体テスト中は観点カバレッジ、それ以降のフェーズはDDPモニタリングを使用する形となり、フェーズは進むと確認対象も増えていくこととなります。
また、従来の各フェーズ終了時に綿密に確認した上で次フェーズに移るのではなく、各フェーズ完了後もモニタリングし、もし問題を見逃していたとしても以降フェーズで防ぐような方法をとり、確認に時間を掛け過ぎず開発作業をスムーズに進めることも目指す手法になります。
今回、観点カバレッジとDDPモニタリングを用いたテストフェーズにおいての手法を紹介させて頂きました。本手法は、どんな開発方法にも適用ができる事から、技術が多様化する時代にあった品質管理手法だと考えます。
【巻頭コラム】
『KPIとしての利益と付加価値の差異について』
国際会計コンソーシアム 副理事長
青柳六郎太(中小企業診断士・税理士)
企業の収益性評価については、利益と付加価値が最もよく使われるKPIではなかろうか。本稿では、利益と付加価値のどちらが企業の収益性を評価するKPIかを論ずるものではないが、どちらも無意識のうちに経営者が自社の企業目標などを語る時に使う傾向があるKPIである。その使い勝手の差異について思いつくままに論じてみたい。
1.収益性について“利益”を使う場面と使い勝手の特質
企業の収益性を示すKPIとして、利益が最も代表的なKPIであることはどなたも異論はないだろう。利益のKPIとしての特性として、利益指標の集約式は会計基準に裏付けられており、会計基準や会計用語に基づいて適格に定義されるので、企業の経営成績や財政状態及び資金状態を自社と他社との指標で比較するなど、集約式の構成科目に互換性があり正確に対比できること及び数値が定量化されていることが使い勝手の良さとされよう。
一方、“利益“が会計基準によってその意味が意思疎通する者同士で共通化できることが利便性が高いと考えると誰よりも利益に関心が高い筈の経営者層においては、伝わりやすい筈なのだが、意外にも、それを文字に表したり、口頭で伝えたりする場合は、誤解した概念で読み違えたりする場合があり無意識で解釈したりする場面が多いだけに混乱が起こったりするリスクもある。
例えば経営者が自社の年頭訓示や、期初での従業員への激励を行う大事な場面で、多くの経営者が「今期こそ各位は奮闘して収益目標達成にかけるべき時期である。」という意図で、収益向上(社長は利益向上のつもり)を命令する。
しかし、会計学の基本である簿記では、収益とは、利益10百万円(例示)ではなく売上高1億円(例示)を指すのが、会計上の定義である。簿記の穴埋め問題のテストで収益1億円(=利益10百万)と答えたら当然×点である。
また、会計学で重要な原則とされる収益費用対応の原則に経営者が誤解した収益=利益を代入すると会計学では収益―費用=利益は、利益―費用=利益となってしまい、公理そのものが成り立たなくなってしまう。
丁度、新入社員が簿記を学んでいる時期と社長が訓示している時期が重なり併せて企業のDX推進も重なると会社のDX稼働後の計数管理のアウトプットはとんでもないことになる。悲惨なのは、DX化が進み、集約式が収益―費用=会計の利益が要件定義されて実行プログラムに入り込むと、この企業では、自社の業績が会計学とは違う定義でKPIとして定義され、企業の収益性評価は社長の誤解が原因で波及連鎖し大混乱を招く。社長以下の中間経営層は今期の利益目標は10百万でなく1億円として設定されてしまうだろう。
逆に、経営者が考えている利益10百万必達は、収益=売上高10百万に代わってしまい、売上ノルマは10百万で良いんだと低い目標で伝わってしまうリスクもある。ちなみに、収益は英語ではProfitabilityとして使うべき用語である。
この様な与太話からもどうしても利益のことを社長が使いたい“収益“で言いたいならば、収益のしっぽに「性」を付けて「収益性」向上を目指すと言えば本来の意味に修正できるのかもしれない。これならば、収益と利益は意味が異なることがはっきりするのである。利益のことを収益という“癖“は大新聞でも過ちを犯しているのが日常である。
ちなみに利益で測定するKPIには、制度会計では粗利益(売上高―売上原価)、営業利益(粗利益―販管費)、経常利益(営業利益―金融利益)が多い。
良く知られた管理会計で測定するKPIには、限界利益(売上高―変動原価)が多いのでこれらのKPIは情報システムでも損益分岐点なども可視化するのに利便性が高く予め用意しているケースが多い。
日商簿記初級検定試験でも損益分岐点など可視化に必要な限界利益は端から教えることが有益であろう。
また経営者の方にはくれぐれも収益向上や必達を言いたいときは言葉を慎重に選んで頂きたい。
2.付加価値とは
利益と付加価値の違いは何か?どうして?と考えるのが筆者の拘りでもあるが、ニュアンスとして利益は主に企業や製品の経済的な視点での業績を表すKPIとして使われることが多いのではなかろうか?一方、付加価値は企業が生産したり、提供する製品や商品、サービスや生産プロセスなどの顧客価値についての優越性/差別性を表すKPIとして使われることが多い様なニュアンスが強い感じがする。近年、産業支援のための各種公的な補助金が整備されてきたが、企業に産業基盤強化のために企業の収益性評価と同様、補助金を提供する業績が相応しいのかどうか、付加価値を一定の集約式で業績評価するKPIを使用する傾向が利益指標と同様に強くなってきた。
具体的には、付加価値の評価は会計上の利益と同様の集約式として売上―売上原価=売上総利益とし、さらにそこから販管費を控除した営業利益を評価し、その営業利益に人件費と減価償却費を足し戻した値を付加価値として=収益性として定義している。
これは学問上の付加価値論というよりも補助金審査行政のKPIとしてデファクトスタンダードとなってきたように伺われる。
これが全ての付加価値の計算式として一律に決められているわけではないが、この計算式が概ね共通して使われているように見受けられる。
会計上の営業利益に何故人件費をわざわざ足し戻して下駄を履かせ、更に減価償却費まで下駄を履かせるのか?考えるのだが、筆者の解釈ではあるが、人件費は企業の要員の努力の汗の結晶であり、これを控除して会計上の収益性を低めるのは付加価値を評価する趣旨に反するからということで情理を加味して足し戻させたのであろうと好感して言る。一方、減価償却費は企業の生産行為の道具である設備の消耗に対する収益性の低下を補足するプレミアムあろうと筆者はこれまた好感している。従って冷徹な会計学の利益よりは、付加価値は会計学による収益性だけのご評価よりは血と汗がにじむ経営努力に対する減益や設備の消耗に対する現場視点、産業育成視点が加味された人間味暖かいKPIになっているので好感している。まあ、減価償却費などのオマケは、その分金銭の実玉でご褒美する訳ではないので、世間的にも通りがよいであろう。従って、会計的な視点では、営業利益も付加価値もほぼ同じ趣旨のKPIであると割り切ってもよいであろう。
なお、付加価値とは、管理会計学の視点では、補助金の要綱で示すような営業利益+人件費(役員報酬含む)+減価償却費で決められるような実務的な数値で定義されるわけはないことをここで補足しておきたい。付加価値の定義は、種類が多いし、ややこしいので好きではない。
以下は最低限の敬意は表して置かなければならない付加価値の集約式である。
(1)粗付加価値:総生産額から原材料費・燃料費・減価償却費などを差し引いた額を純付加価値と定義する
(2)粗付加価値から減価償却費を差し引かない付加価値を粗付加価値という。
(3)加算法(日銀方式):経常利益+人件費+賃借料+減価償却費+金融費用+租税公課と定義している、即ち経常利益に人件費+賃借料+減価償却費+金融費用+租税公課を足し戻した費用を加算した積上額で定義
(4)中小企業庁方式:売上高から外部購入価値(材料費、買入部品費、外注加工費)を減算した控除額で定義 補助金制度で計算する付加価値の」定義の原型である。
(5)補助金審査で簡便式を書き加えると営業利益+人件費+減価償却費となるので
(6)財務諸表をベースにした計算の利便性は、上記の(5)が高いと言える。
3.国際取引におけるEPAの規約における付加価値の評価について(以降は前メルマガ文章を再掲)
近年、地政学的な経済圏形成に覇権を掛ける数々のメガEPAが擁立されてきた。
話題を集めたTPPの趨勢が注目をあつめたが、米国が離脱してからは日本がアジア太平洋地域でその実質的な後継者として地位を継いだ感がある。また日欧EPA、日豪EPA、2022年現在のEPA締約国を一覧すると(1)シンガポール、(2)マレーシア、(3)タイ、(4)インドネシア、(5)ブルネイ、(6)アセアン諸国、(7)フィリピン、(8)ベトナム、(9)インド、(10)モンゴル、(11)オーストラリア、(12)メキシコ、(13)チリ、(14)ペルー、(15)スイス、(16)日欧EPA、(17)日本英国EPA、(18)中韓も参画するRCEPと目白押しである。
4.各国にとってEPAの活用メリットは、輸入先の関税負担の削減による輸出の促進と輸出取引の収益性向上である。
(1)輸出ビジネスにおける収益性向上
各国における輸出面では、EPA協定上、輸出品目が輸入国側から見てEPA協定上適格品であれば基本的に輸入関税は免除される。輸入先は、輸出先の顧客であるから顧客は通常の関税分が安く購入できるので、輸出業者としては売上高向上のフォローの風となる。
(2)輸入ビジネスにおける収益性向上
輸入は、輸出と裏腹の関係でのメリットがある。説明が重複するが輸入面でも輸入品目がEPA適格品であれば基本的に輸入関税は免除される。製造業者であれば輸入材料や部品が安く売れるので、製品化後の国内販売でも輸出販売でも製造原価が削減できる効果がある。
(3)EPAにおける輸入関税免税効果の適格要件
しかし輸出入当事者の所在地両国にEPA協定が締結されていれば無条件に輸入関税が免除になるわけではない。
以下EPAにおいて輸入関税が免税となる適格条件について説明する。
1)輸入品目の原産性の有無
輸入品目が輸入国のEPA基準から見て、“原産性”が適格であることが関税免除の条件として必要である。原産性があるとは、EPAを結んでいる国々の産物であることを言う。
原産性の審査は、(1)輸出者自身による自己証明制と(2)商工会議所など第三者による証明制適用の2種類があるが、今後のEPAの制度的な動向から輸出者による自己証明制度の利用が望ましいと考えられる。輸出後の輸入国税関からの事後監査があるので、輸入国市場からの引合段階で自社の製造物が客先国のEPAを通過できるかどうか製品仕様製作段階で自己審査できなければならない。不正が露見すれば、数年後に巨額の罰金を支払わなければならないリスクがあるからである。現状では日豪EPA、TPP11,日欧EPAでは自主証明が可能である。また自己証明制度では、第二種原産地証明書と言われる特定原産地証明書を発行できるのは生産者、輸出者、輸入者、代理する通関業者とされている。前述の通りこれからの時代のEPAでは輸出者(生産者)がICTを活用して審査基準のチェックを行い、その結果を以てEPA輸出申請を通すスタンスを構えることが必須である。以下、適合要件の主だった種別を簡潔に記載する。
2)EPA取引の適用条件審査要件
EPA輸入取引で輸入品目の適格性は基本的に輸入港の税関が審査する。適用条件の審査には4つのパターンがある。パターンを順不同で説明する。
1つは、完成品目に対する構成部品等の関税分類(HSコード)変更基準である。
輸出者の部品表があれば、チェックも分かり易い。
1-1.品目の完成時の関税コード(HSコード)と、使用した部品等の関税コードを対照して異なっていること。即ち、適格性がある部品を加工して適格性がある製品にコードが異なるほどに加工が施されていること。生産事業者がICTを活用して自主審査するには、我が国のHSコードは9桁あるが、そのうち上位NN桁の範囲で、材料や部品と完成品のコードが違っていれば確かに加工された製品であることが立証できる確証となるという考え方である。逆に差異が無ければ、有効な加工がおこなわれなかった製品として見なされ関税免除の適格性なしとなるわけである。
2つ目は、付加価値基準である。
2-1.製品の加工活動が、EPAから見て付加価値のある加工活動であること。EPA基準から見て付加価値のない加工活動は、いくら高額の原価が費やされてもEPAが適格とする付加価値の累計額は合格点まで積みあがらずに関税の免除対象とはならない。付加価値が認められない加工活動には次に様な例がある。冷凍、乾燥、塩水漬け、切断、塗装、混合、張合わせ、組立てたものの分解、仕分け、マーキング、ラベル付け。セット化、瓶詰や箱詰めなどの一読して単純な軽作業が該当するようだ。
2-2.加工による付加価値額率の大きさで関税免除の適不適を判断する。
輸出品目の加工プロセスの原価明細を見て、加工明細がEPA視点で付加価値のある加工を行っており、かつ付加価値額の合計が、原価全額のNN%(例示)など適用EPAで指定された閾値を超えていること(NN%は地域別EPAごとに異なるので個別に確認が必要)
3つ目は、加工工程累積数による審査基準である。
EPAが○○品目について規定している累積工程数を踏んで製造されているかの基準である。(これも地域別EPAごとに品目別に)異なるので個別に確認が必要)
その他上記以外の規定があるが既定の詳細は説明を省略する。
4つめは積送基準のクリアが必要である。
輸出地から輸入地までの積送ルートの適格性が審査される。(1)直接輸送と(2)第三国経由も含む諸条件で積送基準の適格性が審査される。第三国経由の場合は、経由地で実質的な加工がされていないこと&第三国での税関での管理下にあることなどの条件が課されている。
(4)EPA活用と製品製造原価管理の基盤整備留意点
EPA活用による製品情報の基盤整備要件として、EPA輸出申告で特定原産地証明書発行に必要な
(1)輸出品の製品と構成品のHSコード対比表の添付および
(2)輸出品の製品構成の付加価値明細表および
(3)製造工程フロー図
の整備が必須要件であろう。
今までは、通関業者からの派遣サービスや輸出入手続きに手慣れたプロが手作業で手際よく作成されていたものと思われるが、今後は自社の生産管理システムのドキュメントや製品別原価明細書からのデータ連携で効率的に作成する仕組みづくりが期待される。
1)完成品対部品のHSコード対比表作成
これは部品表を使用している製造業では、部品表からの編集で作成が可能と考えられます。但し英文で作成することが必要でしょう(以下同様)
2)製品構成付加価値明細表作成
付加価値基準による完成品の原産性を疎明する加工付加価値明細表作成これは、工程別加工明細書や原価明細表を作表している製造業では、少し帳票の加工編集が必要ですが情報連携で作成が可能と考えられる。
項目名では
(1)工程名 (2)加工内容 (3)付加価値性有無、(4)材料原価または作業工数×予定賃率 (5)累計付加価値率が必要であろう。
3)製造工程フロー図作成
国内外の税関等の審査員が可視化できるように輸出入品の原産性を目視で疎明する製造工程フロー図が必要である。製造仕様書からのデータ連携による自動作成が求められる時代である。
(5)EPAの付加価値累積要件と我が国の製造原価計算のギャップ
ここまでのご説明をご一読されて方はEPAが求める製品の付加価値累積要件と我が国の製造原価計算とは似て非なるものがあることがお分かりと思う。
(1)EPAが求める付加価値値≠原価費目
我が国の原価計算は、昭和37年に大蔵省が定めた原価計算基準を60年余にわたって踏襲し続けており、製造業も例外なく、これを準用している。
原価計算基準の費目明細=生産資源の購入額明細表で、製品にどのような付加価値を加えたかを税関の審査員に教えてくれる付加価値の記載を要件とはしない。従って、製造原価計算明細は、EPAが関税免除の条件としない原価明細を含んでしまうので事後不適格な申請をしたとして罰金を科せられる対象となる。
また、販売促進費や港湾までの輸送費は製造原価明細に入れないので付加価値からは漏れてしまい付加価値の点数稼ぎには不利になるリスクがある。
あるべきプロセスとしては、手作業なら製造業が原価計算時に、加工明細のEPA適用要件を踏まえて、加工活動明細毎に付加価値性有無を入力する必要がある。DX化の対象とするなら加工活動明細毎に付加価値性有無を事前登録することが有効でしょう。またEPA 申請に対応した付加価値明細表作成をシステム化し、その中で従来の製造原価計算を統合的に行うことが有効と考える。
EPA適用付加価値明細表の範囲>製造原価明細表の範囲との認識が必要であろう。
以上
EPAにおいては多国間における商取引の地域別サインによって、必ずしも画一的な取引条件で協定が結ばれているわけではないが、概ね似通っているプロトコルで条約がほぼ標準化されている。その中で、背骨ともいえる関税の課税標準は、製造原価ではなく付加価値の金額が適用されていることに注目したい。
付加価値の金額は、原価の多寡ではなく、生産物の付加価値を基準に課税標準が設定されている。輸入国の税関では、輸入物の付加価値性の有無について、関税免除の審査がなされている。従って、生産を行う輸出メーカーにおいては、原価の視点ではなく、生産物に付加価値があるかどうかの視点で関税免除を目指して生産を行い、かつ輸出促進のために生産戦略を図るべき仕組みになっている。単純作業の生産物など、付加価値性の低い生産物は、関税は免除されない。従って、付加価値のない生産物は関税免除の対象にはならない。ここに「付加価値とは何か」の定義を再認識する必要がある。
【会長コラム】
『すべての事象に通じる成功の手順』
ICT経営パートナーズ協会 会長
木村 礼壮
今回は、個人的に最近感じたことを書いていきたいと思います。
今月は、すべての事象には成功の手順があるとことさらに感じた月でした。
今月から国土交通省にてEBPM及びPMO支援のコンサルティング活動をしています。(EBPMとはEvidence Base Policy Makingの略でエビデンスに基づいて政策を立案すること)です。
日本の政府では限られた資源(予算等)を有効活用するために政策策定時に課題・目的・手段・効果の論理的繋がりを明確化するためにエビデンスデータに基づく取り組みを急ピッチで進めています。
とは言え、いきなりEBPMを政策策定担当者が腹落ちした状態で修得できる訳ではないので、データ解析及び企画策定の専門家が支援することになり、その活動を行っています。
当方はEBPMに基づいて策定された政策のロジックモデルを検証しています。
大まかに言うとロジックモデルは以下が含まれています。
目的の明確化:
エビデンス(データ解析結果)により導き出された課題を基に現状の姿(AS IS)をどのようなあるべき姿(TO BE)に変えていくべきかを導き出します。
目的達成のための手段の決定:
AS IS形をTO BE形に変えるために何を行うべきかをエビデンスベースで選定していきます。
目的達成時期の決定:
目的達成までをいくつかの段階に分けて各段階の完了時期を決定します。
投資対効果の算定:
エビデンスベースで効果を定量的に算出して、目的達成に必要なリソースとの対比をします。
(備考:経験上一番良く抜け落ちている作業として、目的の明確化のためには対象範囲(スコープ)を明確化することが挙げられます。スコープが明確でないと利害関係者間での会話自体が成り立っていないにもかかわらず、そのことに気づきもしない事態も起こり得ます。この点は注意が必要です。)
昨今では、何をするにもITの力が必要ですので、目的達成のための手段として、情報システムの利用が次の検討課題となり、ITプロジェクト計画書が作成されます。そのITプロジェクト計画書でも上記と同じような手順により作成されます。
当方はITプロジェクト計画書の検証も行っていますが、その計画書の中身にはロジックモデルと全く同じ要素が含まれています。手段がITソリューションとなっており、その中身が詳細に記されているだけが違いと言っても過言ではないでしょう。
つまり、すべての企画・計画を策定・実施していくPDCAのサイクルを回すためには成功の手順があるということが分かります。
ここで問題なのが、何を実行すれば良いのか(What to do)が分かっても、どうやって実施する(How to do)が分からなければ成功の手順を完遂することはできません。
そのHow to doの部分を含めて企画・計画をエビデンスベースで策定する方法論があります。私は、35年以上企画・計画策定について研究してきており、様々な情報を収集して、様々な方法を試してきました。その過程で様々なツール(ファシリテーション支援、ビッグデータ解析等)やテンプレートを開発してきてSUSDという方法論を10年以上前に確立いたしました。
その方法論は日本の大手企業及び欧米のグローバル企業におけるIT戦略策定に応用して大きな成果をあげています。
更に、そのSUSDという方法論(メソドロジ)の内容を説明すると日本でも一・二を争う偏差値の自治医科大学大学院で教鞭をとることを依頼されたり、厚生労働省で調達仕様書の策定支援を依頼されたり、政府外郭団体から支援を依頼されたり、あらゆる方面からSUSDを適応した業務の依頼があります。
当然、一般企業からも各種依頼があります。
そのSUSDについてご興味があるかたは、是非、当協会のお問合せフォームからご依頼事項をポストして頂けますと、幸甚でございます。
最後までお読みいただきまして、どうもありがとうございます。
P.S.
11月より東京商工会議所様経由で「中小企業向けIT企業との上手な付き合い方」
無料セミナーの配信予定でございます。
【巻頭コラム】
『EPA(経済連携協定)活用による収益力向上と原価管理変革要件』
国際会計・財務サポート分科会
青柳六郎太(中小企業診断士・税理士)
1.円安基調が進む中でのこれからの製造業の輸出戦略
コロナ禍で生き残りを描ける我が国の製造業では、目下、輸出ビジネスには有利な経済環境として円安基調が進んでいる。(材料輸入は逆風であろうが)
一方の海外取引のビジネスチャンスをフォローする機運として近年世界の主要経済圏で樹立が進んだ有力な経済協定(EPA)の活用による収益性獲得機会がある。
本講ではこれをテーマとして取り上げたい。
2.2022年現在のEPA締約国一覧
(1)シンガポール、(2)マレーシア、(3)タイ、(4)インドネシア、(5)ブルネイ、(6)アセアン諸国、(7)フィリピン、(8)ベトナム、(9)インド、(10)モンゴル、(11)オーストラリア、(12)メキシコ、(13)チリ、(14)ペルー、(15)スイス、(16)TPP11、(17)日欧EPA、(18)日本英国EPA、(19)RCEP
3.EPAの活用メリットは、輸入先の関税負担の削減による輸出の促進と収益性向上である。
(1)輸出ビジネスにおける収益性向上
輸出面では、EPA協定上、輸出品目が輸入国側から見てEPA協定上適格品であれば基本的に輸入関税は免除される。輸入先は、輸出先の顧客であるから顧客は通常の関税分が安く購入できるので、輸出業者としては売上高向上のフォローの風となる。
(2)輸入ビジネスにおける収益性向上
輸入は、輸出との反対側で考えれば良い。説明が重複するが輸入面でも輸入品目がEPA適格品であれば基本的に輸入関税は免除される。製造業者であれば輸入材料や部品が安くなり、製品化後の国内販売でも輸出販売でも製造原価が削減できる効果がある。
(3)EPAにおける輸入関税免税効果の適格要件
しかし輸出入当事者の所在地両国にEPA協定が締結されていれば無条件に輸入関税が免除になるわけではない。
以下EPAにおいて輸入関税が免税となる適格条件について説明する。
1)輸入品目の原産性の有無
輸入品目が輸入国のEPA基準から見て、“原産性”が適格であることが必要である。原産性の審査は、(1)輸出者自身による自己証明制と(2)商工会議所など第三者による証明制適用の2種類があるが、今後のEPAの制度的な動向から輸出者による自己証明制度の利用が望ましいと考える。
輸出後の輸入国税関からの事後監査があるので、引合段階で自社の製造物が客先国のEPAを通過できるかどうか製品仕様製作段階で自己審査できなければ数年後に巨額の罰金を支払わなければならないリスクがあるからである。EPA規約違反の罰金に対する損害保険があるかどうかは筆者は知識がない。さて現状は日豪EPA、TPP11,日欧EPAが自主証明が可能である。
また自己証明制度では、第二種原産地証明書と言われる特定原産地証明書を発行できるのは生産者、輸出者、輸入者、代理する通関業者とされている。前述の通りこれからの時代のEPAでは輸出者(生産者)がICTを活用して審査基準のチェックを行い、その結果を以てEPA輸出申請を通すスタンスを構えることが望まれる。以下、適合要件の主だった種別を簡潔に記載する。
2)EPA取引の適用条件審査要件
EPA輸入取引で輸入品目の適格性は基本的に輸入港の税関が審査する。適用条件の審査には4つのパターンがある。パターンを順不同で説明する。
1つは、完成品目に対する構成部品等の関税分類(HSコード)変更基準である。部品表があれば、分かり易い。
1-1.品目の完成時の関税コード(HSコード)と、使用した部品等の関税コード間とを対照して異なっていること。
即ち、適格性がある部品を加工して適格性がある製品にコードが異なるほどに加工が施されていること。生産事業者がICTを活用して自主審査するには、我が国のHSコードは9桁あるが、そのうち上位NN桁の範囲で、材料や部品と完成品のコードが違っていれば確かに加工された製品であるとの確証となるという考え方である。
逆に差異が無ければ、有効な加工がおこなわれなかった製品として見なされ関税免除の資格なしとなるわけである。
2つ目は、付加価値基準である。
2-1.製品の加工活動が、EPAから見て付加価値のある加工活動であること。
EPA基準から見て付加価値のない加工活動は、いくら高額の原価が費やされてもEPAが適格とする付加価値の累計額は合格点まで積みあがらずに関税の免除対象にはならない。
付加価値が認められない加工活動には次に様な例がある。冷凍、乾燥、塩水漬け、切断、塗装、混合、張合わせ、組立たものの分解、仕分け、マーキング、ラベル付け。セット化、瓶詰や箱詰めなどの一読して単純な軽作業が該当するようだ。
2-2.加工による付加価値額率の大きさで関税免除の適不適を判断する。
輸出品目の加工プロセスの原価明細を見て、加工明細がEPA視点で付加価値のある加工を行っており、かつ付加価値額の合計が、原価全額のNN%(例示)など適用EPAで指定された閾値を超えていること(NN%は地域別EPAごとに異なるので個別に確認が必要)
3つ目は、加工工程累積数による審査基準である。
EPAが○○品目について規定している累積工程数を踏んで製造されているかの基準である。(これも地域別EPAごとに品目別に)異なるので個別に確認が必要)その他上記以外の規定があるが詳細は省略する。
4つめは積送基準のクリアが必要である。
輸出地から輸入地までの積送ルートの適格性が審査される。
(1)直接輸送と(2)第三国経由も含む諸条件で積送基準の適格性が審査される。
第三国経由の場合は、経由地で実質的な加工がされていないこと&第三国での税関での管理下にあることなどの条件が課されている。
(4)EPA活用と製品製造原価管理の基盤整備留意点
EPA活用による製品情報の基盤整備要件として、EPA輸出申告で特定原産地証明書発行に必要な
(1)輸出品の製品と構成品のHSコード対比表の添付および
(2)輸出品の製品構成の付加価値明細表および
(3)製造工程フロー図
の整備が必須要件であろう。
今までは、通関業者からの派遣サービスや輸出入手続きに手慣れたプロが手作業で手際よく作成されていたものと思われるが、今後は自社の生産管理システムのドキュメントや製品別原価明細書からのデータ連携で効率的に作成する仕組みづくりが期待される。
1)完成品対部品のHSコード対比表作成
これは部品表を使用している製造業では、部品表からの編集で作成が可能と考えられます。
但し英文で作成することが必要でしょう(以下同様)
2)製品構成付加価値明細表作成
付加価値基準による完成品の原産性を疎明する加工付加価値明細表作成
これは、工程別加工明細書や原価明細表を作表している製造業では、少し帳票の加工編集が必要ですが情報連携で作成が可能と考えられる。
項目名では
(1)工程名 (2)加工内容 (3)付加価値性有無 (4)材料原価または作業工数X予定賃率 (5)累計付加価値率が必要であろう。
3)製造工程フロー図作成
国内外の税関等の審査員が可視化できるように輸出入品の原産性を目視で疎明する製造工程フロー図が必要です。製造仕様書からのデータ連携による自動作成が求められる時代であろう。。
(5)EPAの付加価値累積要件と我が国の製造原価計算のギャップ
ここまでのご説明をご一読されて方はEPAが求める製品の付加価値累積要件と我が国の製造原価計算とは似て非なるものがあることがお分かりと思う。
(1)EPAが求める付加価値値≠原価費目
我が国の原価計算は、昭和37年に大蔵省が定めた原価計算基準を60年余にわたって踏襲し続けており、製造業も例外なく、これを準用している。
原価計算基準の費目明細=生産資源の購入額明細表で、製品にどのような付加価値を加えたかを税関の審査員に教えてくれる付加価値の記載を要件とはしない。
従って、製造原価計算明細は、EPAが関税免除の条件としない原価明細を含んでしまうので事後不適格な申請をしたとして罰金を科せられる対象となる。
また、販売促進費や港湾までの輸送費は製造原価明細に入れないので付加価値からは漏れてしまい付加価値の点数稼ぎには不利になるリスクがある。
あるべきプロセスとしては、手作業なら製造業が原価計算時に、加工明細のEPA適用要件を踏まえて、加工活動明細毎に付加価値性有無を入力する必要がある。
DX化の対象とするなら加工活動明細毎に付加価値性有無を事前登録することが有効でしょう。またEPA 申請に対応した付加価値明細表作成をシステム化し、その中で従来の製造原価計算を統合的に行うことが有効と考える。
EPA適用付加価値明細表>製造原価明細表の認識が必要であろう。
以上
EPA=Economic Partnership Agreement.経済連携協定の略
HSコード=International Convention on the Harmonized Commodity
Description
and Coding Systemの略
以上
【巻頭コラム】
『業務遂行スキルのOS「聴く力」』
株式会社真経営 代表取締役
早川 美由紀
「さぁ、また明日から1週間が始まるぞ!」という日曜日夜のTV番組に『日曜日の初耳学(TBS系)』があります。
その中でも、今を時めく俳優、実業家や学者など様々なジャンルの方々をゲストに、林修先生がロングインタビューをするコーナーが私は大好きです。
普段は知ることのできない、ゲストの経験に紐づく仕事への向き合い方や生き様がわかり、更に魅力が輝くからです。
その魅力を引き出しているのが、インタビューアーの林先生です。
・ゲストの話を自分の言葉に置き換えながら、丁寧に聴いている
・ゲストへの好奇心とリスペクトで目を輝かせながら聴いている
林先生のこの「聴く力」が、ゲストの話を掘り下げて、視聴者にとって痒いところに手が届くインタビューとなっている所以ではないかと思うのです。
ビジネスでも、「聴く力」は重要なスキルと言えます。
上司からの差し戻し指示、顧客からの仕様変更など、社内・社外業務に関わらず、スタート時点でしっかりと聴けていないことが原因で、生産性を下げる事象が発生してしまうことが少なくありません。
「上司が全然わかってくれない」
「あのお客は途中で無理ばかり言う」と
相手のせいにするのは簡単ですが、そこで思考停止してしまうと成果を上げることも本人が成長するもできなくなってしまいます。
ところで、業務遂行スキルは大きく分けて2つに区分ができます。
業種や職種を問わず、転用応用可能な「ポータブルスキル」と特定の業種や職種について専門的に必要とされる「テクニカルスキル」。
コンピュータで言えば、この2つのスキルはOSとアプリの関係。
せっかく、新たなアプリ(テクニカルスキル)をどんどん搭載しても、OS(ポータブルスキル)がお粗末だと、うまく機能しない(現場で成果が上がらない)ということが起こり得えます。
「聴く力」は重要なポータブルスキルの1つ。
(ポータブルスキルには、論理的思考力やプレゼンスキル、計画力などなど他にもたくさんありますが。)
たとえ、どのような会社に所属していようと、営業職でも、SEでも、事務企画職でも他者とのつながりがなく100%自己完結してしまう仕事はありません。
仕事には必ず前工程と後工程が存在します。
「はたらく」とは「端(周囲)の人を楽にすること」と言われます。
相手の真のニーズを正しく捉え、相手を楽にする(課題解決する)には、まずは「聴く力」が重要なスキルであると言えるでしょう。
以上
【会長コラム】
『良い状態に身を置くために』
ICT経営パートナーズ協会 会長
木村 礼壮
昨今、“共創”という言葉を耳にする機会が増えてきたと感じます。
共創とは組織単体ではできないようなことも他の組織と協業して推進することで目的を達成していくことかと思います。共創の形態も以下のように様々かと思います。
1. 他社との連携・協業
2. 顧客との連携・協業
3. 他社と顧客との連携・協業
4. 顧客同士の連携
共創の目的が顧客への提供価値の最大化にあるとすれば、顧客との共創が最重要と考えます。
特にDX化等のIT導入が必要な際には顧客とIT提供側が一体となって推進することが重要であることは何十年も前から言われていました。顧客が望むことをIT提供側の企業が顧客と一緒に実現することが重要だということは誰でも分かっていることかと思います。 そして、その一緒に協力し合う工程もより上流工程から始めることで効果が高まることもよく知られていることかと思います。
最近ではDX化が流行の言葉になっていますが、顧客と一緒になってイノベーションを起こすために企画の段階から市場データ解析等にIT技術を利用して顧客と一緒になってDX化企画を作成するような工程も共創の場になりつつあると思います。
この共創を実現するための最重要項目は、目的の明確化にあると感じています。多くのステークホルダーが参画するので、全員が同じ方向を向く必要があります。目的も1つだけでは無いのが通常かと思いますので、目的項目に優先度・重要度を設定する必要があります。
目的を明確化することにより、ブレがなくなり参画メンバ全員が同じ方向に向かって力を発揮することになります。しかし、それだけでは不十分で各々のメンバが自発的に創造的活動を展開することが重要です。
そして、その目的達成のための方法を細分化して具体的な取り組みに落とし込み、最終目的というビッグピクチャーを実現するためのマイルストーンを設定していくことになります。
取組を実行する際には常に実施したことに対するフィードバック(特に顧客からの)を入れて改善を繰り返していくことが肝要です。
それは、昨今話題のウェルビーイング(Well Being)の考え方と一致しています。ウェルビーイングは良好な状態を意味しており人の身体も心も健康で幸せを感じている状態です。(個人的な解釈では特に心の健康に軸足があるように思います。)
欧米では働く環境を成果主義からウェルビーイング主義への変換が大きなうねりとなっているとのことですが、幸せと感じている人はそうでない人と比べて創造性が3倍、労働生産性は31%高いということが研究結果としてでています。寿命も7.5年~10年程度長いとのことです。
企業でウェルビーイングを達成しようとした際に最初に必要なことはウェルビーイング企業を目指すという目的を明確に宣言することだそうです。当たり前ですが、ウェルビーイングは経営陣だけで実現できるものではありませんので関係者全員の協力が必要です。そして、メンバの絆を深めるためのコミュニケーションの活性化により、情報共有から共通認識を創生していくことになるそうです。それにより、自発的に各々が創造性を発揮して目的達成に動きだすとのことです。
そして、その活動中に常にフィードバックを入れていくことが肝要とのことです。
まさにDX化の共創と同じステップを踏んでいると思います。ウェルビーイングは何も1企業内の取組に限定されません。ウェルビーイングとDX化共創を同時に達成することができれば、鬼に金棒という状態かと思います。
おなじ方法で達成していくことができるので、参画メンバに理解して貰いやすい取組です。
ただ、何をするべきかが分かってもどうやって実行するかが分かっていないと実際には実現できません。
そのノウハウを方法論として確立したものがSUSD(Super Upper Stream Design)です。
次回のメルマガ(10月号)では、そのノウハウの内容を記載していきたいと思います。
稚拙な文章をここまでお読み頂きまして、どうもありがとうございます。
ICT経営パートナーズ協会 会員
ホームページ担当 細野 秀主
■令和2年通信利用動向調査(企業編)によると、有効回答数2,217企業のうち自社のホームページ(若い人や専門家はWebサイトという表現を使います)を開設している会社の割合は全体で90.1%、いずれの業種でも開設率は85%を超えています。
多くの会社がホームページを開設していますが、本当に有効に活用できていると胸を張って言える会社はとても少ないのではないかと考えます。
現代の経営資源は、ヒト(人)・モノ(物)・カネ(金)・情報・時間・知的財産と言われています。
経営がうまくいっている会社は、この経営資源をうまく配分して実行するという事をホームページの運用・管理においても出来ています。
■一般の人から見た現在のホームページの状況を説明すると、昔はホ―ムページが情報発信の中心でしたが、ECサイトのような販売を目的としたホ―ムページでない限り、最後に見られる場所という位置づけに変わっています。
それは検索エンジンが高度化したことや、ソーシャルネットワークサービス(SNS)などで個人が情報発信できる仕組みが出来て、まず口コミや評価などを検索・評価して、必要性を感じて会社のホームページを見に来るという流れになってきているからです。
会社のホームページで会社の概要、業務内容、取扱商品、取引先など、その会社が大丈夫かを調べます。
そして製品や商品が受注生産品とかでなければ、安く売っている所はないかと、また検索でさがしたりします。
■ホームページ活用に関するヒントですが、現在、ホームページでやっていないのであれば、お勧めしたいのは次の2つです。
1つ目はGoogleアナリティクスを使ってアクセス解析をすることです。
目的のページが見られているか、直帰率:60%以下、閲覧ページ数:2ページ以上、ページ滞在時間:1分以上を目安に実現、出来ているかを確認し、改善の足掛かりにしましょう。
2つ目はアクセスしてくれたお客様とのコンタクトを取る工夫をするということです。製品や商品の説明をターゲット顧客に分かりやすい文章で書く、会社や担当者の人柄が見えるように書く、会社としてのオリジナリティーを認識させる。
そしてお客様に参考意見を聞くことが出来るようなページを作って欲しいと思っています。実際にホ―ムページからリストが取れた会社は、お得意様限定の新商品お披露目会、ユーザー会などの対面イベントで意見交換して顧客をしっかりつなぎ止
め、お客様の意見から生まれた商品ですという名目で、お客様からの紹介でビジネスを延ばすというような好循環を作り出しています。
■最後に検索エンジンAI化の最新動向について少し触れておきます。
最近はスマートフォンの音声入力での検索も増えてきたので、「この辺のランチ」というようなキーワードで検索されると、検索エンジンのAI機能で店舗情報が出るようになりました。
ということで、Googleマイビジネスで会社や店舗情報などをしっかり管理することと、良い口コミ情報を数件書き込んでおくというのが大切です。
■ホ―ムページとそれに関連する領域はとても広いので一度では説明しきれません。
また機会があれば、ホームページの構成方法や記事の書き方など、ご説明させて頂きたいと思います。
ホ―ムページ関することで疑問に思った点は、当協会でも相談を受け付けていますので利用して頂ければと思います。
以上
ICT経営パートナーズ協会 理事
本間 峰一
私は4社の研修会社で生産管理システム活用に関する有償研修講座の講師をしています。もともとは日刊工業新聞社の依頼によりはじめたもので、日刊工業新聞社の教室に集まっていただいて6時間の集合研修を実施していました。コロナ禍発生後は企業研修やオンライン研修も増えています。
研修内容は生産管理の専門用語解説から管理のポイント、システム運用上の課題など生産管理業務に関わる話です。
現在までに約250社の企業に受講していただきました。企業規模は三菱重工業殿のような大手企業から従業員数十人の中小企業まで様々です。受講者からは参考になったという声が寄せられています。
ところで、本研修にはITベンダからの参加がほとんどありません。製造業者の情報子会社の方は参加していただいていますが、ERPパッケージの導入や生産管理システムの構築をしているベンダからの参加は数社にとどまります。
なぜベンダ関係者の受講が少ないのかがよくわかりません。単純な伝票発行用のコンピュータシステムなら業務知識などなくてもシステム設計やシステム開発できますが、生産管理システムはそうはいかないはずです。
たとえば大半の生産管理パッケージはMRP(資材所要量計算)という計画計算ロジックをベースにしています。MRPの特徴と課題を知らないで、ERPを企業に導入しようとしてもうまくいくはずがありません。そもそもMRPは欧米の最終製品を計画的に作っている工場の部品手配用に作られたロジックですので、親会社からの受注や内示にしたがって生産する日本の受注生産型工場とは相性が悪く、様々な工場でトラブルを起こしています。
フィットギャップ分析をすれば、ギャップがありすぎてそのままでは使えないとなるケースも多いはずです。それにもかかわらず安易にERPを導入してトラブルになる企業が後を絶たないのは関係者の勉強不足のせいではないかと疑っています。
このままでは日本の工場の管理能力は低下する一方です。それでなくてもコロナ禍を契機に日本の多くの工場の生産が混乱しています。親会社からの注文や内示が大きく変動したり、電子部品や材料が納期通りに調達できないという工場も多いです。混乱の原因がIT関係者の勉強不足であっては困ります。
直近では5月25日に生産管理研修がありますので、生産系のシステム構築に関係している人は受講の検討をお願いします。
『会長就任ご挨拶』
ICT経営パートナーズ協会 会長
株式会社ドリーム IT 研究所 CEO
一般社団法人国際ヘルスケア・マネジメント機構 専務理事
木村礼壮
この度、2022年4月5日付にて、関元会長から当協会の会長のバトンを受け継がせて頂きました木村礼壮でございます。
日ごろは当協会に多大なるご支援、ご鞭撻をいただき誠にありがとうございます。
弊協会は、創設以来、顧客の価値向上のため様々な活動をしてまいり、下の特徴を持っております。
(1)専門性の高いメンバが多く集まる専門家集団:DX関連以外でも経営そのものの改革を推し進める専門家も在籍しております。
(2)ベンダ等からの影響を受けない中立的立場で顧客に寄り添った支援が可能でございます。
(3)顧客がIT導入をする場合、コンサルティングから導入、定着化、継続的改善までを一気通貫で顧客の立場でご支援できます。
ただ、当協会だけではできないこともございますので、様々な組織と連携をして顧客支援を行っていきます。今後は様々な外部組織との連携以外にも協会メンバ間の連携、顧客同士の連携といった様々な連携を強化していく所存でございます。
連携という言葉は共創と置き換えても良いかもしれません。協会内部の会員同士で共に新しい価値を創造していく、外部組織と更に大きな価値創出をして、顧客とも共創し、顧客同士の共創も支援していくことにより、価値の輪を広げていけると確信しています。
弊協会の顧客との共創は顧客ファーストであることはもちろんでございます。弊協会のスタンス目線で顧客企業の価値を最大化するお手伝いをさせていただければと存じます。
協会内の勉強会、分科会活動の活性化及び交流の機会を広げて協会内で培った価値創出スキルを十分に発揮する場をできるだけ多く得ることができるように、今後は見込み顧客創出活動にも積極的に取り組んでいきます。
今後、価値創出の共創の場を広げていく活動に皆様からの引き続きのご助言、ご指導、ご鞭撻のほどよろしくお願いいたします。
なお、当協会では、会員向け支援の充実を図っております。
■今年度から追加された個人会員のベネフィット
集客支援:
パートナー組織(ITコーディネータ協会等公的組織を含む)も利用した御社セミナーへの後援・案内。当協会のWebセミナーサイトに登録することも可能です。
(ただし、会員本人登壇のセミナーに限ります。)現在、東京商工会議所様との共催セミナーの話が進んでいます。
専門誌への記事投稿の橋渡し。(ただし、会員本人の執筆記事に限ります。)
営業支援:
各種交流会への参加。第一弾として5月24日城南信用金庫様主催のIT活用大相談会にブースをひとつ頂いています。
各種組織と連携したDX関連相談との橋渡し。
■今年度から追加された企業会員のベネフィット
集客支援:
パートナー組織(ITコーディネータ協会等公的組織を含む)も利用した御社セミナーへの後援・案内。当協会のWebセミナーサイトに登録することも可能です。現在、東京商工会議所様との共催セミナーの話が進んでいます。
専門誌への記事投稿の橋渡し。 (各種業種の専門誌への掲載の橋渡しをいたします。掲載をお約束するものではございません。)
営業支援:
連携パートナーを通じた各種交流会への参加。
会員交流会。
各種組織と連携したDX関連相談との橋渡し。(第一弾として5月24日城南信用金庫様主催のIT活用大相談会にブースをひとつ頂いています。)
その他様々な追加支援を予定しておりますので、メルマガ読者の皆様も、是非、共創の輪に加わって、価値創出のご支援を頂けますと幸甚でございます。
以上
日本マルチメディア・イクイップメント株式会社 代表取締役
ICT経営パートナーズ協会理事
高田守康
2023年は、建設業界だけでなく全産業の経理業務から紙が消失した「経理DX元年」として記憶されるでしょう。決して大げさな表現ではなく、企業間の商取引に関する法改正と新制度が束になって迫っているのです。
1.消費税のインボイス制度(2023年10月)
2.電子帳簿保存法が改正(2024年1月)
3.郵便法改正に伴うサービスの見直し(2021年10月)
1.インボイス制度という話題を、最近ひんぱんに耳にするようになりましたが、「そもそもインボイスとは何か?」と質問して正確に回答できる経営者はまだ少ないようです。 大手ITベンダー調べでは、「よくわからない」という回答が55%を占め、知っていても対策を検討しているのはわずか10%。まだ十分に浸透・理解されていないと思われます。
インボイス制度(適格請求書等保存方式)は、消費税納税の透明性を図る目的で、2023年10月1日に導入されます。インボイス制度の下では、税務署長に申請して登録を受けた課税事業者である「適格請求書発行事業者」が交付する「適格請求書」(いわゆるインボイス)等の保存が仕入税額控除の要件となります。インボイスには課税事業者を証する登録番号に加え、適用税率と税率ごとに区分した消費税額を記載します。したがって自社や取引先が消費税の課税事業者なのか、免税事業者なのか、が重要になります。現在は免税業者も、インボイス発行事業者の登録を受けるべきか?の検討が必要になります。
インボイス制度で企業に求められる対応は、大きく分けて2つあります。
(1) 管理の厳格化
・請求書の確認の際、「事業者登録番号」照合が追加
・軽減税率対象品目の仕入れの際、区分会計が必要
・免税事業者からの課税仕入れは適用外となる為、請求書を区分して管理
(2) 保管の重要性
・受け取った請求書だけではなく、発行した請求書も適正に控を保管
・コピー、ファイリングの手間が増大
・保管スペース、コスト増
・他の事業者から交付を求められた時のスムーズな対応
特に建設業法などの規定から紙の帳票が主流になってきた建設業界において、インボイス制度への対応を行うことで業務工数の増加・コストの増加となることは明白です。今後、インボイス制度に対応した会計ソフトの利用と企業間の電子商取引システムの導入が急務となります。
(参考)大手業務システムベンダーなど10社が設立発起人となり、2020年7月「電子インボイス推進協議会」が発足して、関係省庁等と連携して日本の電子インボイスの標準仕様の検討と共通利用できるシステム構築などの環境整備を進めています。→ https://www.eipa.jp/
2.「電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律」いわゆる「電子帳簿保存法」が改正され、請求書をはじめとした国税関係帳簿書類の電子データの紙出力保存が廃止され、検索要件を満たす電子取引データでの保存が義務化され、帳簿保存の面からも紙の帳票による経理業務の運用は難しくなります。なお改正電帳法は、2022年1月施行予定でしたが、2年間猶予されて2024年1月施行となっています。
今後主流となる電子取引の取引情報の保存は、施行日以降に電子取引を行った場合、当該取引情報を何らかの形で電帳法の要件に適正に従って、電子データで保存することが義務付けられます。電子データによる商取引の保存・管理について簡易になる反面、罰則はより厳しくなるため、JIIMA認証を取得したソフトウェア・ソフトウェアサービスを利用することがリスク回避に有効となります。
→ https://www.jiima.or.jp/
3.さらに、郵便法改正に伴うサービスの見直しによって、2021年10月から平日の翌日配達が1日遅れとなり、土曜日配達も廃止されました。例えば、月曜日が締め日の請求書を金曜日に投函しても、17時までの差し出しに間に合わなかった場合は、配達が翌週の火曜日になってしまい、締め日に間に合わなくなります。
今後、請求書は期日指定で受け取れる“電子データ”を指定する企業が急増することが予想されます。
インボイス制度の導入によって、仕入税額控除ができるのは課税事業者との取引だけになります。特に建設業界(IT業界も)に多い一人親方(フリーランスSE等)などの免税事業者に外注すると、消費税の仕入税額控除が計上できなくなります。発注側は当然、インボイスを発行できない免税事業者との取引を厳選し、さらに発注を回避することが懸念されます。もし一人親方が簡易課税による課税事業者を選択しても、登録番号が違っていたら仕入税額控除できないため、一人親方との取引が多い中小建設会社では、個々の登録番号の厳格な照合管理が必須となるため、紙の帳票による運用はさらに厳しくなります。
このように建設業界では、電子インボイスや電子商取引など「経理DX」は待ったなしの状況です。このタイミングで対応できない建設会社は淘汰される恐れが高いと思われます。経理DXに対応することで、重要な情報が素早く取り出せるようになり、経営判断のスピード化が実現します。更に決算業務の効率化、管理コストの低減、セキュリティーの強化など多くのメリットが生じます。
建設業界のみならず、2022年~2023年は、全ての事業者にとって「DX化に対応できるか否か」のターニングポイントになるでしょう。
以上
社)クラウドサービス推進機構 理事長
松島 桂樹
デジタル人材が何十万人足りないと叫ばれている。確かにデジタル化には人材が必要かもしれないが、それでDXが達成されるわけではない。つながらない個別デジタルをたくさん作っても、使えないデジタルのムダが積みあがるだけである。業務もデータ項目もバラバラ、さらにペーパレスといってFAXからPDF転送に変えても、つながらない。データが自動伝送され自動的に処理されることがデジタル化である。
企業間業務でのデジタルはもっと悲劇的である。価格一つとっても定価、上代、卸価格、数量値引き、出精値引き、キックバック、リベート、キャンペーン価格、バックマージン、割り戻し、原価に戻すか、販売費に計上するか、振込手数料はどちらが負担するのかなど、業界ごと、各社ごとの煩雑かつ定義もあいまいな商慣習と取引ルール、日本全体では、何10万社と何10万社とが企業間で確認・調整しなければつながらない。中小企業が、一社依存の下請け体質から脱し、複数の顧客と取引しようとすれば、その煩わしさは増大する。
デジタル化の前提は簡素化と標準化にある。大企業ごとの取引ルール、いわば方言を標準語に変えなければ、取引の会話は成り立たない。中小企業の共通EDIが作られてきたが、調整するための膨大な作業が必要なため、一定の成果は上がったとしても広がりは限定的である。つまりデジタル人材が増強されても、企業間のDX、すなわちEDIは一向に実現しない。
かつて ERPが日本に導入された時、ベストプラクティスと呼ばれた標準的な業務に移行するチャンスが一度だけあった。しかし、パッケージに業務を合わせたくないとして、カストマイズに次ぐカストマイズを繰り返し、煩雑な企業間業務を中小企業に押し付け、大量の負の遺産を作り出してしまった。
新型コロナ対策と同じようにDX緊急事態宣言を発出し、「日本経済の成長に不可欠なデジタル化を最優先に必要な対策は躊躇なく実行する」、とりわけ、国、業界あげて、企業間業務の簡素化、標準化、さらに自動化に取り組まなければならない。いかに大企業が人材投資やSDGsを語っても、それは株主対策でしかなく、日本にデジタル社会を実現させることにはつながらない。
従来から、アトキンソンらは、日本の低生産性の元凶は中小企業にあって、厚い補助政策が、中小企業をダメにし、退出すべき企業の延命を図ってきたと述べる。しかし、少なくとも、中小企業の生産性の低さは、経営者のせいでも、ITリテラシーの低さでもない。
「日本の中小企業の生産性が低いといわれているが、・・・社内より企業間のやり取りに無駄があり、中小企業にしわよせがいっている。・・・企業間がデジタルでつながり、業務連携が自動化できれば、中小企業の生産性は大きく向上する」(岐阜新聞2021.09.16、松島コメント)。
多くの地方の中小企業は大都市の大企業とばかり取引しているわけではない。まず、厳しい環境下にある地方の金融機関に、地域内経済圏域における取引のデジタル化のリーダーシップを発揮してもらいたい。受発注データ管理から電子インボイス発行代行・回収、そして決済業務に至る中小企業の基幹業務を支援するとともに、中小企業の資金運用サービスを組み合わせることで、経営者が安心して経営に専念できるようになる。中小企業のDXとは、安定した財務基盤と安心して接続できる業務連携基盤の上にビジネスモデル再構築を図ることである。
国が何かをしてくれるのを待っていては、DXの機会を逸してしまう。主体的に連携基盤を創り地域未来に向けたデジタル投資を行うことが真の地方創生につながる。
以上
ICT経営パートナーズ協会 理事
アスクラボ株式会社 社長
川嶋 謙
昨年1月のメールマガジンは、「上回る知恵の創出」というテーマでした。
「知恵」とは、過去の経験やあらゆるものを通じて得た情報や知識、学び等が積み重ねられたものであり、それらを記憶・保存することで、問題・課題解決などの必要なときに「知恵」として活用できると思っています。
弊社のビジネスの基礎となっている「知恵の創出」は、全スタッフの成功や失敗の経験をデータとして残し、問題・課題解決のために活用することですが、知恵の多くはハンデがあったからこそ生まれたと思っています。
1.後発ベンダーのハンデ
弊社は後発のベンダーという立場で会社を設立したため顧客はゼロでした。
そのためスタート時点から新規開拓の営業を経験してきました。そこで、弊社を選んでいただく大儀名分が必要でありメインテーマとなりました。その結果、特許を取得するオリジナリティのある商品開発ができたと思います。
2.付き合い・実績がないハンデ
お客様の立場から見ると、既存の取引業者を付き合いも実績もない会社に変えるというリスクは、窓口の担当者や管理者は負わない(負いたくない)のが自然です。
そのため、お客様の経営者層へアプローチすることとなり、結果、中小大企業問わず、多くの経営者層の方々と交流することができました。
3.資金がないハンデ
設立当時、資金が乏しいため細かな資金繰り計画が必要でした。資金の重要性を身に染みて感じていたため、無駄な経費の削減、売掛金の回収、不良在庫の削減に取り組み、毎月初日には仮決算ができる仕組みができました。その結果、机上の理論ではなく、現実の生きたBS・PLのスキルを得ることができました。
4.コネがないハンデ
設立当初から政治的なコネや強みがなかったため、好意的な味方を増やす必要性がありました。そのため「人の悪口は言わない」、「約束は守る」ということの重要性に気付くことができ、少しでも気持ちよく生きるため、人の欠点より長所を探す癖がつきました。
それが、弊社スタッフが10年以上毎日、日報情報を入力する風土形成につながり、その日報情報(テキストデータ)を基にAIリスク診断の仕組みができました。
現在の弊社のビジネモデル(トップアプローチ研修、AIリスク通知、SIビジネス)は、ある意味ハンデがあったからこそ生まれたと思っています。
以上
ICT経営パートナーズ協会 理事
アスクラボ株式会社 社長 川嶋 謙
私は、大学を卒業した後、岡山県の地方都市でビジネスの世界に入りました。
その頃出会った経営者の中には、地位や立場や年齢が上というだけで、自社の社員に対して、また私のような経験の少ない若者に対して、大きな態度・上から目線・命令口調という古い体質の方も多く、「経営者」という人たちに少なからず嫌悪感を持っていました。
もちろん、人物的に素晴らしい経営者の方々にも出会いましたが、当時経営者であった私の父に、そんな不満を話したところ、年配者を批判したところで何も変わらない、もし自分が経営者になったときに、自分自身がそのよう経営者にならないようにすればよいと諭されました。
その父の言葉を機に、ビジネス上の役職や権限はビジネスの範囲内でのことであり、ビジネスを離れたプライベートでは誰でも平等であり、役職や権限は関係ないという考え方が身につきました。
かなり昔のことです。著名な大企業の経営者A氏が経団連の会長候補に上がったのですが、結果は落選でA氏は落ち込まれたそうです。当時私はA氏と多少の親交があり、側近の方からの連絡でA氏に面会をしました。面会の冒頭A氏は「俺は外されたと」発言されたのですが、私は素直にA氏を気の毒に感じました。会長になれなかったのが気の毒なのではなく、日々・24時間、役職や権限から逃れられず、肩書きのない一般人になれるプライベートがないのが気の毒と感じたのです。
私はA氏に「故郷の町を歩いていて『Aちゃん!』と声をかけてくれる人はいますか?
それがなければ、本当の意味でプライベートに戻る場所がないというのは気の毒ですね」と話しました。
会社の役職や地位・権限には期限があります。その期限が切れたときに戻れる場所が必要であると私は思っています。戻れる場所を作るためにも、日常から役職や地位・権限の範囲とその期限を意識する必要があると思います。
これもかなり昔のことですが、身内が重い病気にかかり、その専門医が有名国立大学の教授で多忙なため、面会はおろかアポイントをとることさえ難しい方でした。何度もアポなしで大学の研究室を訪問しましたがやはり面会はできませんでした。ある時、大学の庭を手入れされている方がいて、その方に話し掛けると「私は用務員的な立場の者なので私には権限も影響力もありません」と言われました。しかし私は、大学を訪問するたびにその方を訪ねました。するとある日、「ほとんどの方は、権限が無いことを伝えると私の所へは来なくなりますが、あなたはそれを伝えても私に対する行動が変わらない。私でできることは協力します」と言って下さいました。
結果的に、その方のおかげで教授に面会が叶い、私の身内は治療を受けることができ、現在も元気にしています。
ビジネス上の役職・権限はプライベートに及ぶものではなくビジネス上のものでしかありません。また、無期限に続くものではなく期限があります。プライベートでは一個人として、役職や権限、年齢関係なく、誰もが平等でフラットな立場なのです。
以上
ICT経営パートナーズ協会 IoT推進分科会 委員長
飯郷 直行
メジャーリーグでの大谷選手のすさまじい活躍をTV中継で見る際に気が付きますが、投手の球速だけでなく、バッターの打球速度や打ち出し角度、飛距離等がリアルタイムで表示されます。場合によっては走者や野手の走る速度すら表示されます。
これらは、小型のレーダーや画像解析による一種のIoT技術の応用に思えます。そして、試合中のボールや、選手の動きのデータを見える化してオープンにすることは、メジャーリーグ全体の技術革新に貢献しているようです。バッターはすくい上げる打ち方で、ホームランが激増して、打球速度158キロ以上で角度30度前後に打てばホームランになると分かり、多くのバッターがこのゾーンを狙い始めました。大谷選手のホームラン量産の一因です。
オープン・シェア革命とは、この互いに技術をオープンにし、シェアすることで全体を高め合うことです。
ビジネスにおいても、生産技術等をIoTにより数値で見える化して、組織内でオープンにして関係者でシェアすることにより、働き方改革が実現して、組織全体を高め合うことになると思います。
技術は見て覚えろとか、盗んで身に付けろでは技術改革や働き方改革のスピードは望めません。オープン・シェア革命を起こすためには、まずはIoTを利用した各種情報の見える化です。そして、有効と思える見える化した情報は、ネットによりオープン化して、関係者でシェアすることにより、技術改革や働き方改革の新しいアイデアが生まれると思います。
以上
ICT経営パートナーズ協会 会長
関 隆明
9月1日にデジタル庁が設置され、菅首相をトップに平井卓也氏が新デジタル相に就任され、事務方トップのデジタル監に一橋大学名誉教授石倉洋子氏が就任されました。喜んでいる間もなく、3日に突然菅首相が自民党総裁選への不出馬を表明され驚かされました。慌ただしい総裁選挙戦の後、9月29日に総裁選挙の結果、岸田文雄新総裁が誕生しました。10月4日菅首相の任期満了と同時に、岸田総裁が新首相に選出され、直ちに岸田新内閣が誕生したのはご存知の通りです。
それに伴い平井前デジタル相が、新しく牧島かれんデジタル・行政改革・規制改革担当相へと引き継がれました。そして8日に岸田首相の所信表明演説が行われました。今回は新首相の所信表明の中で、私達の関係の深い部分で、特に気になる点について、 述べさせて頂きます。
首相は新しい資本主義の実現の中で、「分配なくして次の成長なし」、「成長の果実をしっかり分配することで、初めて次の成長が実現する」と述べています。しかし日本のGDP推移を見てみると、1996年~2018年の22年間で、3%成長していますが、人口も2%成長しているので、一人当たりGDPはほとんど変化ありません。
米国では同期間で名目GDPは155%成長し、1人当たりGDPも110%と倍増しています。英国は名目GDPが101%、一人当たりGDPは55%の伸び、フランスとドイツはどちらも名目GDP、一人当たりGDPの伸びとも数十パーセントとなっています。
更に上位1%の世帯が所有する資産が日本は11%、米国は約40%に達しています。 日本は上位の人達の占める割合も極めて低く、余裕もさほど無いように推測します。限られたパイを先ず分配し、成長との好循環を作ろうと言っても、パイは縮むだけではないでしょうか。
従って日本は「分配」ではなく、「分配に必要なパイを増やす」ことか先決だと思います。その為には例えば遅れているDXを徹底的に進め、生産性を高め、脱炭素など新たな分野で競争力を発揮し、得られた成果を分配することにより、初めて「成長と分配」の好循環が回り出せると考えます。
所信では成長戦略の第一の柱は、科学技術立国の実現だと述べています。しかし文部省「科学技術。学術研究所」の2018年(2017年2019年の平 均)のデータによると、研究分野ごとの引用数が上位1%に入る「トップ論文」の国別の順位で、日本は20年前の4位から、9位まで下がり、シェアは僅か2%となりました。因みに1位は米国でシェアは27,2%、2位は中国でシェアは25.0%となっています。欧州諸国はもシェアは数%あります。日本の低迷のきっかけは2004年の国立大学の法人化だと言われています。
大学院の博士号取得者は、日本は直近の18年度は人口100万人当り120人で、米英独の半分以下であります。米国では博士課程の学生の9割が、大学や国からの支援を受けており、日本は4割弱で年間の受給額も米国が日本の約4倍となっています。
以上成長戦略1つとっても、かつて優位に立っていた日本も長年の低落傾向がみられ、成長戦略に直接寄与することは難しく、むしろ投資を増やしていく必要があります。
この所信表明の中には我が国にとってやらなければならないことが、沢山盛られていると思います。しかし資金や人的リソースを考慮した場合、そう簡単には実行できないものが多く含まれていると思います。それぞれのフィージビリテイをしっかり検討し、プライオリテイづけをし、国民に示してもらうことが極めて重要ではないかと思います。
これまでも我が国で重要な政策を打ち上げながら、工程表もなく、いつの間にか消えてしまったことが少なからずあったと思います。取り上げられ、開始された政策は最後まで完遂し、成果をあげるよう努めなければならないと思います。
大分前の話になりますが、私自身マイナンバー制度のシステム化に関わっていた時、韓国も国民番号制度のシステム化に取り組んでいました。韓国では時の政権の政策が一度大統領に承認され、実行に移されたならば、例え政権が変ろうとも、最後までそれをやり続けるのが原則だと聞かされました。
言わずもがなだと思いますが、菅政権が打ち出した「デジタル」と「カーボンニュートラル」重視の政策は是非継続され、新政権の新しい具体策を追加し、国民に明示し、国を挙げて成果をあげることが、次の発展を生むと信じています。
当協会は今後牧島担当大臣の率いるデジタル庁の方針を良く理解し、DX実行の支援を着実に実行し、少しでも多く成果を挙げていくのが使命だと思っています。
今何よりも重要なのが、IT技術者不足をどう乗り越えていくかだと思います。経産省の予測によると、2030年に、我が国ではIT技術者が45万人、AI、IoTなど先進技術者が27万人不足するそうです。これら技術者は世界的に不足しており、海外からの調達は大変困難なことであり、何としても国内で解決しなければならない問題です。
当協会は10年前の発足当初から、ローコード開発(以下LCD)に注目し、ローコード開発コミュニテイと連携し、それによるシステム開発の効率アップに力を入れてきました。LCDの活用により、システム開発の所要工数を大幅に減らすことが出来ます。平均で3分の1、プログラムの特性により10分の1以上減らせた実績も出ています。LCDは少人数によるアジャイル開発や運用条件を十分考慮したDevOps開発にも適しています。
プログラム言語も知らない業務部門の人達も、プログラム開発が出来る為、従来ITベンダーに依存していたユーザ企業が、自主開発に切り替える動きが強まってきています。欧米に較べてユーザ企業に属するIT技術者数が少ない我が国では、IT技術者の代替要員が増えてくることは、大変有難いことです。現在ローコード開発コミュニテイと協力して、LCDの上流工程に当たる業務プロセスの改革ツールから、LCDツールにスムーズにつなげる作業を進めております。
今後さらに超上流の工程とのつながりも、検討していく予定です。LCD活用により浮いたIT技術者を適性によって、上流の付加価値の高い仕事に移転させたり、適性や能力によってAIやIoT要員に変えていくことも、可能になるだろうと思っています。
また効率の悪い従来のスクラッチ開発を、LCDによる効率的な開発へ積極的に変えていき、多数のSEを多重式に調達していく、旧来の多重下請け構造を崩していきたいと考えています。IT技術者がそれぞれ得意な技術領域を持ち、互いにフラットな関係で、ユーザが必要とする機能を果たしていける、オープン型の開発の仕組みに変えていくことにより、IT技術者の不足を少しでも改善していくよう、努めて行きたいと思います。
以上
株式会社真経営
代表取締役 早川美由紀
先日、日経新聞の特集「リスキリングに挑む」に、仕事のデジタル化による、女性の失業リスクは男性の3倍(IMFのリポートより)という記載がありました。
特に、未だ男性社員のサポート役として、定型業務の多くを女性が担っている日本においてはRPAやAIに置き換わられ、3倍以上の失業リスクがあると言えるでしょう。
実際、新型コロナウィルスの流行により、すでに女性の失業が社会問題となっています。女性こそ、仕事の変化に対応する「リスキリング(学び直し)」が今後は大切になると思われます。
私自身、コロナ禍のステイホーム時間を活用し、「グラミン日本」という貸金業のボランティア組織(ムハマド・ユヌス博士が創設したグラミン銀行の日本版)においてフルリモートで、貧困・生活困窮者の自立支援のプロボノ活動を始めました。
(プロボノとは、社会的・公共的目的のために専門知識やスキルを活かしたボランティアのこと)
グラミン日本の支援事業の1つに、生活困窮しているシングルマザーを対象とした、RPA等のデジタル教育と実務経験機会の提供による自立(就労・起業)支援があります。
一人親世帯(母子家庭・父子家庭)の貧困率は50%を超え、その中でも、シングルマザーの平均世帯年収は243万円とシングルファザーよりも180万円程低くく厳しい状態となっています。(平成28年国民生活基礎調査より)
生活に困窮しているシングルマザーには生い立ちや元配偶者との関係が原因で自己肯定感が極めて低く、なかなか自ら自立の一歩へ踏み出せない人が多くいます。
このような環境下で「リスキリング(学び直し)」がもたらすものは、「新たなスキル」だけでなく、「自分自身を信じる力」だと感じています。世の中のニーズに応えることができるスキルを発揮し、相手から「ありがとう!」の言葉がいただける。
まさに、生きる力の源なのではないかと思います。
これは生活困窮者だけに限らず、働く人全てに当てはまる働きがいや生きがいではないでしょうか。
ここまで、個人の視点から「リスキリング(学び直し)」の効果について話してきました。 一方、企業の視点からは、目先の業績を追い求めるだけでなく、「変化に対応できる人材づくり」という中長期的視点の施策が新たなビジネスモデルの実現や生産性の向上へとつながっていくと思われます。
つまりは、企業自身のためにも「リスキリング(学び直し)」の機会を戦略的に創る必要があると言えます。もちろん、対象は女性社員だけではありません。
戦略的なリスキリングにより、アフターコロナに向けた新たな事業展開も競争優位性を持って実現しやすくなるでしょう。
ただ、その企業で働く人達に一方的に学びを押し付けても、やらされ感だけが高まり、効果がありません。変化への危機感やリスキリングへの当事者意識は人によって様々。
「(会社にとって、私にとって)なぜ、リスキリングが必要なのか?」マインドの醸成も同時に行わなければなりません。
職場でも必要とされる能力はこれからどんどん変わっていくでしょう。その一方で、普遍的な仕事の基本を身に付けるよう支援し、企業がこれまで培ってきた独自技術や強みを伝承するためには上司や先輩による「OJT(On the job training)」も欠かせません。
企業は「リスキリング(学び直し)」と「OJT(On the job training)」の両軸により、変化の激しい時代の中で、前向きに人材を育て、活かす必要があります。
日本働き方会議様で案内してくれている、ITC経営パートナーズ協会会員のDX推進セミナー案内へのリンクです。
■DX推進SUSDセミナー
https://jwc-kaikaku.jp/course/dreamit/dreamit.html
■「ビジネスアナリシス方法論“GUTSY-4”」紹介セミナー
https://jwc-kaikaku.jp/course/ictm/i001.html
ICT経営パートナーズ協会
働き方改革分科会委員長 岡田裕行
脱炭素や環境破壊対応等、事業環境は大きく転回し新たな時代が急速に進みつつある。働き方改革もコロナ禍でリモートワークが注目されているが、本質的な改革はむしろこれからという状況である。
新たな時代に向け、企業が生き残る大きなポイントである情報システムにどう向き合えばいいのか。
日本の特殊な事情を考慮しながら情報システムの主導権をユーザが取り戻すことの重要性を考えてみたい。
日本は世界でも突出した急激な少子高齢化という固有の問題がある。
国立社会保障・人口問題研究所では2065年には総人口8,808万人、生産年齢人口(15~64歳)は2015年に7,728万人であったものが2065年には
4,529万人、50年で約3200万人減少と推定している。
韓国の2020年の生産年齢人口は3600万人であり、今後50年で韓国の生産年齢人口相当の数が消えてしまうインパクトである。
その上、2019年の日本の生産性(労働者一人当たりGDP)は824万円で米国の6割、しかも向上していない。
2015年から2019年の年平均実質上昇率は米国が0.9%に対して日本はマイナス0.3%。
OECD加盟国平均は0.7%で日本より上昇率が低いのはニュージーランド(-0.7%)のみである。(日本生産性本部)
付加価値と生産性が向上しなければ経済成長はなく賃金も上がらない。
生産性向上のカギの一つはITの活用。
デービット・アトキンソン「新・所得倍増論」によると、ニューヨーク連銀の分析『米国は1996年から2001年までの労働生産性の上昇の75%はITの貢献である。
しかし1995年以前はITの貢献は低かった。
当時は人の働き方に合わせていかに人を楽にさせるかに主眼があったからで、効果を引き出すには企業が組織のあり方、仕事のやり方を変更し、人材その他にも投資する必要がある」と分析している』とのことである。
小手先のIT活用でなく、腰を据えて組織のあり方、仕事のやり方を地道に変革することが喫緊の課題である。
情報システムは企業のビジョン、戦略、組織、業務プロセスと密接に関連して構築され各企業固有である。
従ってICT活用の大前提は自社のビジョン、戦略、組織、業務プロセスを明らかにし、情報がどこで発生し、どう流通し、どう活用されているかを明確にすることである。
これはまさに経営者が責任を持つ領域で、決して情報システムだからとIT部門に放り投げて済む問題でも、社内に技術を知っている者がいないから外部に委託してDXを開発して貰おうという問題でもない。
情報システムの主導権を持つということはこの大前提をきちんと自社内で出来るようにすることである。
2015年ベースでIT人材の内、IT産業に属す者は日本で72%、アメリカが35%、欧州 でも4割前後である(内閣府令和2年度年次経済財政報告)。
日本企業のIT産業依存は突出している。
ここでのIT人材はIT専門技術者という意味であり、上記の主導権を持つための人材は必ずしも技術者とは限らない。 しかし情報システムをどう理解し、どう立ち向かうかに関する日米の捉え方の違いが表れている。
自社の業務プロセスも十分把握されておらず担当者だけが知っており、全体が俯瞰できない企業が殆どではないだろうか。
業務プロセスを組織、人材と関連させて明示的に記述、共有、変更できるツールが存在するがあまり使われない。
情報システムというと技術面に目が行き、足元がおろそかになっている。
しかしプロセスマネジメントツールを有効活用している企業は業務プロセスの改革、ICT活用が加速度的に進展している。主導権確保の原点であり、競争力に貢献する情報システムの構築に不可欠である。
更に変化対応スピードは競争優位の大きなポイントであり、開発も自社に取り込むことが出来る環境になってきている。
広く使われているExcelをベースに柔軟にシステム構築が出来るツール。
繰り返し作業の自動化で大きな力を発揮するRPA。
ローコード、ノーコードを呼ばれるツール類は従来のようなコンピュータ特有のプログラム言語を使わず、業務部門の人が自分でシステムを組めるようになっている。
これらのツールはクラウドで学習可能で実際に多くの業務担当者が使いこなしている。勿論、主導権を確保したうえであれば外部の知恵や力をどんどん活用すればいい。
当協会では上記各種ツールに加えて情報システム開発の上流をサポートする仕組みのノウハウもある。
例えば標準業務プロセスを参照しながら暗黙的要求や潜在的要求も表面化し、うまい仕事の進め方にヒントを得ながら自社のプロセスに付加価値を持たせる手法や定量的に要求を整理し合意形成を的確迅速に把握するツール等である。
当協会は日本の生産性向上のためにユーザ企業側の立場でデジタル化の支援をしている。
また中小企業庁の『中小企業デジタル化応援隊事業』も専門家活用時の負担金の補助をしている。
当協会ではデジタル化をどう進めればいいのかといった相談にも応じている。
お気軽に相談頂きたい。
相談先メールアドレス(事務局):info@ictm-p.jp