【会長コラム】
『やろうと思っていることの先の先に真のゴールがある』
ICT経営パートナーズ協会 会長
木村 礼壮
はじめに
情報システムの導入前にユーザーの要求を確実に吸上げること、というのはよく言われることです。満足なものを提供するには、相手が何を求めているのかを知らずして相手が満足するものを提供できないは当然のことです。
ここで、重要なことは相手が言っていることを鵜呑みにしてしまうことです。人というのは案外自分のやりたいことをキチンと整理整頓して考えていないものです。例えば、「SFAを導入したい。」と言われたとします。その際に、短絡的にSFAの機能を導入することを提案することも可能かと思いますが、このような場合は大概大きな効果は期待できません。その理由は、目的の設定よりも前に手段を決めているからです。
潜在ニーズと顕在ニーズ
顕在意識と潜在意識ということが良く言われています。顕在意識は理論的に考えて結論をだすことを司っており、潜在意識はいわゆる無意識ともいわれるように直感的に結論をだすことを司っているとのことです。最近知人が「気が進まないことは請けると大概後悔する。」と言っていました。確かにそれは言えていると思いました。理論的に考えるのではなく、直感的に気が進まないという気持ちが将来の自分の姿を予兆しているかのようです。
このように潜在意識が理論的に考えることよりも正確に将来の姿を見通せるのは、(潜在意識の文献等を見ると)潜在意識が人間の能力の97%を占めて、顕在意識は約3%程度だということが関係しているとのことです。潜在意識は見たり、聞いたりしたことを全て記憶しており、膨大な情報量を瞬時に判断できるそうですが、無意識なので、言語化して言葉にすることは苦手のようです。
このように人が自分の要望についても潜在意識下ではかなり正確に把握していますが、顕在意識はほんの一部を表面処理しているに過ぎない場合が多々存在しています。例えば、「何が欲しい。」と聞くと「お金が欲しい。」と答える人がいますが、お金自体は欲しいものではないはずです。札束とか通帳記録の数字とか自体が何か価値をもたらすわけではなく、お金を使って何かを成し遂げたいということですので、お金は目的達成の手段であり、目的ではありません。気軽に水泳ができるようにプール付きの家を手に入れるためにお金が必要とか、世界中の絶景見たいので観光旅行をするためにお金が必要、とかという具合かと思います。このように顕在化して見えている要求は短絡的かつ検討範囲の狭い考えの場合が多く、ましてや、言語化して口にする要求は限定的範囲の限定的内容である場合が殆どです。とりあえず、それを顕在ニーズと呼ぶことにします。
もっと本質的な要求を知るためには、顕在ニーズの奥に隠された潜在ニーズの探索が必要となってきます。人は自分でも言語化できていない真の要求を潜在ニーズとして知っているので、提案相手の潜在ニーズを見つけ出すことができると良い提案もやり易くなります。
S・P・I・N
そのためのごくごく簡単な方法として、S・P・I・Nというやり方があります。簡単で誰でも修得し易い方法ですが結構な効果があります。以下に概略を記載します。
S・P・I・Nとは以下の4種類の質問をしていくことで相手の真の要求が分かるというものです。
S Situation Questions (状況質問)
P Problem Questions (問題質問)
I Implication Questions (示唆質問)
N Need Payoff Questions (解決質問)
まず、第一番目の質問、状況質問について:
相手の状況を知るための質問です。
例としては、この場所で何人で作業しますか?とか、全体業務プロセスに対してシステムがどのように割合られているか教えて下さい。とかです。まず、相手の全体的な状況を理解しましょう。
第二番目の質問、問題質問について:
ここでは、顕在ニーズを引き出せれば大丈夫です。
例として、「こことここの業務で問題が多発する。」とか「見積や質問等に対して回答に時間がかかる。」とかの回答が得られるような質問をすればOKです。一番大きな悩み事は何かを知ることができるような質問です。
第三番目の質問、示唆質問について:
第二番目の問題質問で得られた回答を基に示唆的な質問をします。
例として、「問題が多発する業務では、なぜその業務だけで問題が多発するのですか。」とか「見積への回答が遅くなるのはなぜですか。」という類の質問です。
相手は、こうなったらいいなと思うあるべき姿がある筈で、示唆質問では、それを阻んでいる問題の原因を洗い出せればよい質問ができたということになります。
第四番目の質問、解決質問について:
問題質問と示唆質問の答えを基に、相手を悩ませている問題の原因を取り除いた場合の効果を聞きます。
例として、「見積の回答が今の半分の時間で作成できたら、どんな効果がありますか。」というような質問です。
ここまでくると、相手の真の目的が分かることになります。
第四番目の質問の回答から逆に見ていくとS・P・I・Nが相手の真の要求を導出する手助けをしていることが良く分かります。
例:
第四番目の質問の回答 見積を早く作成することで受注確率を上げる(半分の時間になれば売上がXX%程度上がる) つまり、売上向上が目的。
第三番目の質問の回答 見積を作成するための業務で複数のシステムを利用しなければならないが、うまく連携できていないので手間がかかる。システム間連携を最適化するという手段が見えてくる。
第二番目の質問の回答 見積を作成するのに時間がかかる。お悩み事が何か分かります。
第一番目の質問の回答 相手の業務の全体像を理解できます。つまり、会話を進める際のスコープが見えてきます。
通常の要求定義のプロセスを簡単な質問で概要を捉えることができるので便利な技法かと思います。簡単な手順ですが、なるべく多くの人から情報を得ることが効果的です。相手の情報量が多いほど、情報の質もアップ。多くの場合、量は質に転化します。
但し、細かく言うとS・P・I・Nには、いくつか注意点もあります。例えば、第一番目の質問でしつこく質問をすると嫌がられて逆効果になることもありますので、相手に会う前に事前調査は欠かさないことです。
もしも、S・P・I・Nにご興味がある場合は、お知らせください。もう少し詳細情報のご提供をいたします。
以上
【会長コラム】
『Well Beingを軸とした顧客信頼構築が最強のマーケティング戦略』
ICT経営パートナーズ協会 会長
木村 礼壮
はじめに
2024年4月期が始まり、新たなビジネスチャンスが訪れています。しかし、競争が激化する現代社会において、顧客に自社商品を売り込むというマインドで接することが逆効果を生んでいるといわれています。人の心理として売り込まれることを嫌うということは理解できると思います。顧客の求めるものを提供することに心を砕いて、顧客の求める価値を提供することにより、顧客とお互いに共創しながら世の中に価値を提供することが求められていると言われて久しくたちます。たとえ、その時は自社の商品が売れなくても顧客に価値を提供出来れば、信頼関係という強力な武器を得ることになるということです。信頼関係のある顧客とのビジネスにはストレスを感じることもほとんどないのではないでしょうか。
ただ、顧客にまずは価値を提供するというマインドになりましょう、といっても今まで自社の商品の優位性やなんとか自社の商品の利活用ができる範疇を探して売り込んでいた状態を変えることは難しいかと思います。それ故に、顧客のペルソナを理解してそのペルソナに合った販売をしよう、というような取組をすることにより少しでもプロダクトアウトのマインドを顧客ファースト視点に変えようとしているかと思います。しかし、根っこの部分に売り込みマインドがある限り、一瞬でも自社の利益と相反することを実行するモチベーションがあがることはないと思います。
そこで、今はやりのWell Beingの考え方を利用したマインドのリセットができるのではないかと思いつきました。
まず、Well Beingとは何か?
Well Beingとは、単なる健康や幸福ではなく、心身ともに充実し、活き活きとした状態を指します。近年、企業だけでなく、官公庁にも広がりを見せており、世界的にWell Beingへの取り組みが注目されています。
多くの研究結果が、Well Beingと生産性の間に強い相関関係があることを示しています。例えば、米国の保険会社の実施した調査では、Well Beingプログラムへの参加者の方が、そうでない従業員に比べて生産性が31%高かったという結果が出ています。また、離職率が下がる、欠勤率が下がる、創造的な活動の割合が向上するという研究結果も多数報告されているので、企業では様々なメリットがあるとの判断からWellBeing関連の取組をしているところが多いかと思います。
Well Beingが企業へのメリットを向上させるメカニズムは、主に以下の3つが挙げられます。
集中力・記憶力向上: Well Beingが高い従業員は、ストレスや疲労を感じにくいため、集中力や記憶力が向上し、より効率的に仕事に取り組むことができます。
モチベーション向上: Well Beingが高い従業員は、仕事への意欲が高く、積極的に取り組むことで、生産性を向上させることができます。
欠勤率低下: Well Beingが高い従業員は、病気やケガによる欠勤が少ないため、人件費の削減にもつながります。
Well Beingがもたらす真の価値
Well Beingを考えることは、ただそれだけにとどまらない意味を持つと思います。まず、自分自身が心身ともに充実し、活き活きとした状態でいることを考えた場合、お互いに感謝し合う関係の顧客とビジネスをした方が精神的に良い状態を保てることと思います。そして、自分以外の人が心身ともに充実し、活き活きとした状態でいることを考えると、お金を貰うことを前提とせずに、その人が喜ぶような価値を提供できれば、その人は、Well Beingに近い状態に少しでも近づいていくかと思います。状態の良い人との協業はストレスも少なく、更に信頼関係ができていれば、お互い楽しいビジネスとなるかと思います。
顧客の顧客に対してどのような価値を提供することがベストかを顧客と一緒に共創できていれば、それは、とても楽しいことかと思います。何か問題が起きてもそのような信頼関係が構築されたうえであれば、最善の解決策を取れる可能性が高くなるかと思います。
顧客ファーストのマインドセット
顧客の達成したい目的を深く理解して、目的達成に最適な手段を提供することに焦点をあてると、時には自社の商品が最適でないこともあるかと思います。世の中の偉大なマーケティングの先生達の言うことでは、そんな時には競合の商品を紹介してでも顧客の満足する価値を提供するべき、とのことです。現実的に常にそこまでできるかどうかはわかりませんが、少なくとも顧客の都合よりも自社の利益の最大化のための説得を顧客に対して行うことだけは避けた方が良いかと思います。うまく説得できたとしても、後々、顧客とのトラブルの種を植えているようなものになる可能性が高いです。それにWell Beingな状態ではないです。
自分に関係する人がWell Beingであればあるほど自分もWell Beingに近づいていけるので、関係する人にWell Beingになって貰うために、自分はどんなことができるかを意識していれば、自然に信頼関係が出来上がっていくのではないかと思います。
そのような考え方をしてみることにより顧客との信頼関係の構築が少しでも進むのではないでしょうか。
以上
【会長コラム】
『新年度を制する!ITトレンド予測とスキルアップ戦略』
ICT経営パートナーズ協会 会長
木村 礼壮
はじめに
新年度が始まるにあたり、IT業界においても新たなトレンドに対応した戦略が求められています。この記事では、2024年のITトレンドを予測し、日々のIT導入相談から感じる戦略的なスキルアップアプローチを考察してみます。稚拙な内容ですが、ご参考になれば幸いです。
1. AIと機械学習の進化
人工知能(AI)と機械学習はますます重要性を増しています。昨年度は、特に生成AIに始まり、生成AIに終わる、という印象がありますが、しばらくは生成AIを中心にしたAI旋風は続くと思われます。歴史技術革新商品の1億ユーザーに到達するまでの期間は、(1)携帯電話16年、(2)インターネット7年、(3)SNS4.5年、(4)ChatGPT3ヶ月でした。
ChatGPTだけで3ヶ月で1億ユーザーですので、他の生成AIを加えるとその急激な利用者増加は目を見張るものがあります。生成AIの利用はITリテラシーが低くても、しかも、無料から始められる、ということが普及に大きく貢献したと感じています。
自然言語処理(NLP)の発展
・NLP技術は、テキストデータの解析や自動応答システムの向上に大きく寄与しています。特にLLM(ラージ ランゲージ モデル)による生成AIの登場は大きなインパクトでした。
・GPT-4などの高度なNLPモデルを活用して、カスタマーサポートやコンテンツ生成を改善している企業もどんどん増加しています。無料から始められるので個人での利用も加速していると感じるとともに利用していない人との距離がどんどん遠くなっているとも感じます。
ロボティクスと自動化
・ロボットプロセスオートメーション(RPA)や自動運転技術など、ロボティクス分野の進歩もAI技術を取り入れ、加速していますが、その普及速度が注目です。
・まだまだ、ルーチン業務の自動化を検討し、効率を向上させることにロボットを利用することをできていない業務は膨大に存在しているので、今後継続的に導入が増加する分野かと思います。特に、紙の情報の介在する業務ではOCR等の認識AIを取り入れた需要は膨大と感じますが、その際に直面する一番のハードルは日本語読込機能に対するユーザーの感じる導入費用の割高感かと思います。
2. クラウドとセキュリティ
クラウドとセキュリティは、新年度においても重要なテーマであり続けると思います。
マルチクラウド戦略
・複数のクラウドプロバイダーを組み合わせて、柔軟性と可用性を高める取り組みはあらゆる組織で進行していると感じます。
・ただ、オンプレミス版ソフトウェアをクラウド上のレンタルサーバーに乗せただけのソリューションをクラウドだと称している場合も多々ありますが、その場合にはクラウドの利便性を享受できていませんので、ユーザーも導入前にある程度の知識をつけることが必要です。
セキュリティの強化
・サイバーセキュリティの脅威は毎年増加していると感じます。インターネットへの依存度は年々増加していますし、取り扱う情報量も増え続け、情報加工のハードルも年々下がり続けています。つまり、世界中につながっているネットの世界では、玄関開けたらコンバットゾーン、と思っておいた方が良い世界情勢であり、守るべき情報資産が大量に存在し、悪意ある者にとっては情報資産をお金に変えるハードルが下がり続けている、という状態です。新年度に向けてセキュリティポリシーを見直し、最新の脅威対策を検討するのは良い機会かもしれません。
・サイバー空間は年々グローバル化の一途を辿っているので、GDPR等他の地域の法規制にも注意を払うことも必要になる場合も出てくるかと思います。
3. データと分析
データ活用はビジネスにおいて不可欠です。
データレイクとAI
・データ利活用の価値を認識している組織では、データレイクを構築している事例も増えてきていると感じます。データ量の増加も尋常ではない勢いですので、ビッグデータを活用したAIプロジェクトは今後も需要が伸びるかと思います。
・AIサービス提供元企業では、こぞって高性能なGPUの導入促進を目指しているので利用のハードルは更に下がっていくかと思います。
新年度のスキルアップ!
1. 生成AIセミナーの活用
今年度、ICT経営パートナーズ協会は生成AIセミナーを実施しました。生成AIは、自然言語処理(NLP)や画像生成などの分野で大きな進歩を遂げており、ビジネスにおいても活用の幅が広がっています。弊協会では、以下のポイントに注目しています。
自動要件定義書の作成スキル
・システム開発において、要件定義書は重要なステップです。生成AIを活用して、要件定義書の自動作成を検討していくことも現実味を帯びてきたと感じます。
・その他、上流工程のドキュメントの品質向上と効率化は、確実に実現できると感じています。
ビジネスプロセスの最適化支援へのAI活用スキル
・生成AIは、ビジネスプロセスの最適化にも活用できます。例えば、業務の自動化やタスクの自動生成などへの支援ができると思います。
・システム開発だけでなく、組織全体の効率向上のヒント出しにも役立つと実感しています。
2. クラウド利用
もはやクラウドは、ビジネスにおいて欠かせない要素となっています。多くの公的組織からもクラウド利用ガイドラインがでています。自己の担当する業務に合わせて、ガイドラインの必要個所を体系的に理解することは重要なことかと感じています。ユーザーとしては最低限以下のスキルが必要になるかと思います。
クラウドプロバイダーの選定
・AWS、Azure、Google Cloudなど、複数のクラウドプロバイダーがあります。どのように自分の要件に最適なプロバイダーを選ぶかを理解すること。
・プロジェクトの範囲と目的に合わせた要件に従って、クラウドサービスの特性や料金体系を理解し、最適な選択を行う方法を理解すること。
3. 情報セキュリティ研修の改革
情報セキュリティの重要度が増してきていることは既に述べましたが、年々新しい技術要因がでてきてそれに合わせた改善策も定期的に実施しなければいけないのも情報セキュリティの特徴かと思います。最低限、機密性・整合性・可用性の3つのセキュリティポイントとリスクベースのセキュリティの考え方を理解することは必要ですし、以下のエンドユーザーの意識改革もとても重要と感じています。
セキュリティ意識の向上
・ともすると余計な業務の一部と思われがちなセキュリティ対策意識を高める研修は重要と感じます。マインドセットを行う際には、Why・What・Howの3ステップを踏むゴールデンサークル理論をベースにした研修が有効です。
・可能であれば実践的なシミュレーション訓練等もできると効果は上がるかと思います。
最新の脅威対策
・エンドユーザーが関係するフィッシング詐欺やランサムウェアなどの具体的な脅威に対する対策方法を習得するエンドユーザー向け教育もトレンドに合わせて見直していくことが大切かと思います。
・また、セキュリティ理解度テストを行い、エンドユーザーの知識レベルを維持することも効果があると感じています。
ガバナンスについて
セキュリティについて考えるとき、管理のことに目が行きがちですが、もう一つ大きな枠としてガバナンスを整えることはもっと重要かと思います。ビッグデータ等も扱って業務を進めるような組織には特に言えることかと思います。
・データガバナンスフレームワーク(COBIT、DAMA)を理解することで、データの管理体制を整備するスキルを習得できると思います。
以上、少しとりとめのない内容になってしまいましたが、少しでも参考になれば幸いです。
以上
【会長コラム】
『現場から起こすDX:目的と手段を逆転しないための3つのポイント』
ICT経営パートナーズ協会 会長
木村 礼壮
先日、弊協会の活動の一環で東京商工会議所のぴったりDXの相談ブースにて様々な企業様からDX化にむけてのご相談を受けた際に感じたことがあり、お伝えしたく筆をとらせて頂きました。
DX相談会で現場の方々から相談を受けた際、多くの方が「このツールが欲しい」「あのツールを導入したい」という具体的なツール名を挙げていました。しかし、話をよく聞いてみると、彼らが抱えている課題解決には、別のツールの方が適していることがほとんどでした。
よく考えると、程度の差はあるにしても、中央省庁や大手企業から中小企業まで、日本ではよく遭遇する場面であると思いました。
なぜこのような誤解が起こってしまうのでしょうか?理由は以下の3つかと思います。
1. デジタルツールの知識不足
現場の方々は、日々業務に追われ、最新のデジタルツールについて十分な情報収集をする時間がないのが現状です。そのため、目立つ広告や口コミで評判のツールに飛びついてしまうケースが多く見られます。
2. 目的と手段の逆転
本来、DXは「業務効率化」「新たな価値創造」などの目的を達成するための手段であり、ツールは目的達成の道具です。しかし、現場では「デジタルツールを導入すること」が目的化してしまうことがあります。これも原因として、手っ取り早く課題を解決したいという思いだけでなく、目立つニュースや記事に躍らせれて、ツールがあれば夢がかなうと錯覚してしまうことも一因でしょう。
3. ベンダーの営業トークに惑わされる
ITベンダーの営業担当者は、自社の製品を売り込むために、様々なセールストークを展開します。その結果、現場の方々は、自社の課題に合致していないツールを導入してしまうリスクがあります。これは、相談に来ている企業の今までの失敗談としてよく聞く話です。
DX成功のためには、現場の積極的な参画こそが、鍵となります。そのためには利害関係者全員が目的と手段を混同することがないようにしなくてはなりません。
目的と手段を逆転しないための3つのポイント
1. 課題を明確にする
DXを成功させるためには、まず自社の課題を明確にすることが重要です。「何のためにDXを推進するのか」「どのような課題を解決したいのか」を明確にすることで、必要なツールが見えてきます。ツール提供側は、現場の方々に課題を明確化することの重要性を教えるところから始めることも遠回りのようでありますが、結局は近道です。
なぜなら、課題が明確化されていなければ、ゴールのないところに向かって走っているようなもので、いくら走っても成功したかどうかも分かりません。
2. DX検討をする側は、専門家の支援を活用する
デジタルツールの知識や経験が少ない場合は、DX推進の専門家に相談することをおすすめします。専門家は、自社の課題に合致したツールを提案し、導入後のサポートまで支援してくれます。その際の留意点としてはツールとは中立的立場の専門家に相談することが良いかと思います。自社で開発・販売しているツール等を背負っているとどうしても自社商品を販売したいという意識が働くのは自然のことなので。
3. 現場の意見を徹底的に聞き取る
専門家は現場で実際に業務に携わる人たちの意見を聞き取ることは、最適なツールを選定するために不可欠です。どのような業務で困っているのか」「どのようなツールがあると助かるのか」を丁寧に聞き取りましょう。始めて会う現場の方々の悩みを5分程度で整理することができるSPINなどは有効です。
可能であれば、全ての企業でDXリテラシー標準(DSS-L)程度までを身に付けることが良いかと、改めて思いました。弊協会ではそのような教育関連の取組も進めており、一層加速していきたいと考えています。是非、ご一緒に取組んでいただける方々はお知らせ願えますでしょうか。
以上
【会長コラム】
『2023年の振り返りと2024年の展望』
ICT経営パートナーズ協会 会長
木村 礼壮
遅ればせながら、明けましておめでとうございます。
本年最初のメルマガとなりますので、経営とICTの関りを中心とした昨年の振り返りと本年の展望を中心にお伝えしたいと思います。
2023年の振り返りと2024年の展望
2023年は、新型コロナウイルス感染症への対応の変化やウクライナ情勢の悪化など、不安定な情勢が続きました。セキュリティに関する需要の高まりもその一環かと思います。そのような中で、GXをはじめとしたサステナビリティへの取組、量子コンピュータ、次世代通信技術、メタバース等の技術革新も大きな飛躍を遂げました。一番の衝撃は生成AIの一般化だったと思います。これはICT領域だけの話題ではなく、経営にも大きなインパクトを与えています。
ゴールドマンサックスの調査によると米国では経営の仕事の32%が生成AIにより自動化される、としており、法務、事務・管理職の仕事の4割以上が自動化される、としております。
ちなみに維持・補修及び清掃の仕事は生成AIの影響をほぼ受けません。今まで一番自動化が難しいとされていたホワイトカラーの仕事を大幅に自動化する手段が手軽に手に入るようになった衝撃は、今後の社会情勢を大きく変えていくと思われます。ちなみに、中央省庁でもデジタル庁により、ようやくGaixerを利用した生成AIの検証環境が構築されました。
Gaixerもそうですが、ICT業界でも生成AIを利用した様々なツールが一気に多数出現しています。とにかく「生成AIを利用しているんだ」、ということを謳っているツールの中にはどのような問題を解決できるのかよくわからないものも多くあるような感じがします。うまくいっているツールは、生成AIを利用することで、「今までやりたいことを実装できていなかった機能を生成AIによって技術的ハードルを越えた」というようなツールが多いような気がします。
それは、達成したい目的が最初から明確になっていたので、目的達成のためにどのような手段をとることが最適なのかということで生成AIを利用した結果かと思います。やはり、目的の明確化と解決するべき問題点の分析はとても大事だということかと思います。
そのような変化の中で、ICT経営パートナーズ協会は、皆様と共に、ICTを活用した経営変革の支援に取り組んでまいりました。
新年に引用されることも多い高浜虚子の句。「去年(こぞ)今年貫く棒の如きもの」
年月が流れても変わらない大事な何かがある、そうしたものの存在を示唆していますが、協会の持つ「貫く棒の如きもの」とは何でしょうか。人によって様々な見方があるかと思いますが、その一部を私なりに表現すると、現場の知恵や経験を基盤にした企画展開とそれを実践する人々ということではないかと思います。
2024年は、環境変化の加速による経営リスクの増大は2023年以上になるでしょうし、更なるデジタル化の進展や、量子コンピュータ及び高度化したAIの台頭によるセキュリティ攻撃への対応の強化など、新たな課題が顕在化することが予想されます。更にデジタル系人材の不足も深刻化することが予想され、2025年には日本で43万人のIT人材が不足するという経済産業省の報告もあります。中小企業においては、去年からの課題である電子帳簿保存法やインボイス制度への対応もまだ道半ばと言わざるを得ない状況でもあり、DX推進が叫ばれて久しい今でもDX人材は皆無という企業が殆どではないでしょうか。
しかし、変化の時代はあらゆる分野にルールチェンジをもたらし、新しいルールに適用した企業は大きな進化を遂げ、適応できなければ衰退するかもしれません。生き残るものは、強いものではなく、変化に適応できるものであり、恐竜のような強いものが絶滅してもネズミのような弱いけど変化に強いものが繁栄していくことと同じような状況が起こるのではないでしょうか。
協会は、こうした課題に対応するために、皆様と共に、ICTを活用したアジャイル志向経営変革の支援をさらに強化してまいります。
変化に適用するためには、自社の中身が可視化されていなければなりません。見えていないものを変えることはできないからです。ICTの活用は生産性の向上や売上向上以外にも変化に強い組織を作ることにも繋がっていきます。業務プロセスを可視化し、その中身と結果を素早く把握して迅速な対応を確実に実施するためにはICTの活用が欠かせません。
協会は、皆様がICTを活用した経営変革を成功させるための支援を、以下の3つの柱で進めていきます。
・人材育成- IT人材の育成だけでなく、ITの知見がない人でもデジタルを利用できるツール(ノーコード開発ツール、生成AI組込の業務支援ツール等)の実践力養成にも力を入れていきます。
・情報発信- セミナー、ホームページ、記事投稿等により、協会会員の豊富な知見の共有を行っていきます。
・ネットワークの構築- 様々イベント等への参加と交流イベントの企画を進めて参ります。
最後に協会の活動へのご協力のお願い:
協会の活動は、会員企業の皆様のご協力があってこそ成り立っています。2024年も、引き続きご支援を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。
2024年が皆様にとって最良の年となることをお祈り申し上げます。
以上
【会長コラム】
『~最新技術を使いこなせる魔術師になるには~』
ICT経営パートナーズ協会 会長
木村 礼壮
年の瀬に際して、思うこととして、「今年の振り返りと来年の計画作成をキチンとやらなければならないな」ということがあります。計画策定方法論とかを開発・販売している身なのですが、毎年の始めに自己の年間計画とかたてたことがないのが情けないことです。
そんな事を思っていたら、だいぶ前にある商品の販売促進用にビッグデータ解析を行った際の結果を思い出しました。美容系の商品なのですが、正月に広告を出すことが非常に効果的であることが分かったのです。
なぜかと言うと、1年の目標を元旦に立てる人が多く、「今年は、○○をやって、××効果を得て、綺麗になる。」とかの目標を立てる人もかなりいることが分かりました。解析対象の商品に関する関心も一気に高まる時期ということが分かったのです。
解析前にはなんとなく春とか夏に関心が高まる商品のイメージがあったのに、意外な気づきでした。
このように情報は利活用することによりあらゆる価値に変換することができることは既にご存知のことだと思います。
以前は、情報は利活用できるように構造化して、標準化して蓄積していくことが求められていました。それが、技術的進歩のおかげで非構造化データや関連性を類推しにくい情報も解析対象となり利活用の幅が大きく広がってきました。いわゆるビッグデータ解析時代の幕開けも今は昔のことのように感じられますね。
データの利活用の幅も縦割り組織内で自己の作成したデータを溜め込んだものだけという範疇から関連組織の横串を通すような利用の仕方を越えて、世界中から必要なデータを集めてきて利活用する時代となりました。
例えば、自社の営業情報を対象とした解析による営業戦略や戦術の立案はとても価値があり、データが新鮮であれば、(1ヶ月以上遅れのデータとかでなければ)PDCAサイクルと一緒にODAサイクルを回す上でもとても大きな武器になるでしょう。
しかし、その解析範囲を広げていくことにより、(例えば、消費者の購買行動とか社会情勢の変化とか、)価値は更に高まることは言うまでもないかと思います。
今は、多くのデータがオープン化されており、ネットを通して簡単に入手できる環境があります。例えば、日本政府の提供するe-Statなどは、入手したいデータの形式も指定できますし、(年代別のソートとか、地域別のソートとか)操作もブラウザからダッシュボード的に指定することでダウンロードするデータの指定もできるので、かなり便利です。
https://www.e-stat.go.jp/
そこからダウンロードした情報を生成AIに投入することにより様々な情報のサマリであったり傾向であったりを労せずして入手することも可能です。
しかも、全て、無料で実施できるということは、使わないと損、ということかもしれません。かなり便利な組み合わせなので、試してみると面白いと思います。
このように先端技術が利用できる人とできない人との生産性は大きく異なってくるかと思います。スマホを使える人と使えない人との差のようなものです。
「高度に発達した技術は魔法と同じに見える」という言葉もありますので、使える人は魔法使い的な活躍ができるということかと思います。
余談ですが、AIの発展により人間の仕事が奪われると思っている人もいるそうですが、AI等の最新技術を使いこなせない人の仕事が奪われることはあるかもしれませんが、最新技術を使いこなせるスキルを持った人達の需要はどんどん高まるかと思います。
そして、人間のやるべき仕事が無くなることは無い、ということです。
なぜなら、技術や情報の利活用で一番大事なのは明確な目的設定にあるからです。何を成し遂げるべきかを明確にして、優先度の高いものから順番に実行していくことを決めるのは、それにより便益を得る事業主体者だからです。
最新技術を使いこなせるということは、何のために(目的)、技術をどう利用するか(手段)を明確化できるということになろうかと思います。技術を利用するための操作は今後どんどん簡単になりますので、どう使うかが一番の勘所となると思われます。
(例えば、目的が明確でないと生成AIに指令するプロンプトも最適なものを記載できないでしょう。)
私が個人的にネット上のクチコミ解析をしてみましたところ、VUCA時代に合わせた生き残りのためには、リスキリングを実施するべきとの声がたくさんあがっているのが分かりました。しかし、場当たり的に教育を提供しても効果が限定的かと思います。
何のために(目的)どのようなスキルを得るべきか(手段)を明確にして、現状に足りない部分のスキルを補うことが肝要かと思います。いずれにせよ、目的の明確化スキルを養うためにも、実際の利益を得るためにも、目的の明確化の実施回数を増やして日々磨いていくことは価値があるかと思いました。
まずは、自己研鑽の意味でも今年はキチンと来年の計画を立てることを実行したいと思っています。
皆様は毎年実行しているかと思いますが、今回はVUCA時代の魔術師スキル研鑽の一助になるという観点で実施してみるのは、いかがでしょうか。
良いお年をお迎えください。
以上
【巻頭コラム】
『生成AIの大学教育への活用方法と将来的な展望』
ICT経営パートナーズ協会 会員
ほその ひでかず
今年の4月から、生成AIの大学教育への活用に関する話題が増えてきました。短期間である4月から11月にかけて、生成AIの進化は驚異的であり、その大学教育への応用方法や可能性は大幅に拡大しています。
しかし、実際には生成AIを理解している教員はわずかで、また生成AIについて教える機会もまだ十分にはありません。しかも、学生自身の間でも、生成AIを活用している者は限定的です。
生成AIを使っている人々の間ではレベルの差はそれほど見られませんが、使っている人と使っていない人との間では大きな差が生じています。生成AIによって仕事を奪われるとの懸念がある一方で、実際には生成AIを使いこなす人たちによって仕事が奪われるという現象が起きています。
ここで、生成AIの大学教育への活用方法と将来的な展望に話を戻したいと思います。
大学教育への生成AIの活用方法(例)
■個別化された学習への応用
生成AIは学生一人ひとりの学習パターンや弱点を理解し、それに応じて個別化された学習経験を提供することができます。個々の学習速度、スタイル、前提知識に合わせて教材を調整することで、より効果的な学習体験を提供します。
■学生の評価への応用
生成AIは学生の評価を自動化し、教師の負担を軽減します。これはエッセイの採点などの複雑なタスクを含む可能性があります。
■AI助手/チャットボットへの応用
生成AIは学生の質問に24時間対応するAI助手として使用することができます。これらのAI助手は、学生が必要な情報をすぐに見つけるのを助け、学習資源へのアクセスを改善します。
■学習成果予想への応用
生成AIは過去の学習データを使用して、学生がどのトピックで困難を感じるかを予測するのに役立つことができます。これにより、教師は事前に介入して問題を解決し、学生が学び続けることができます。
■グループ学習の最適化への応用
生成AIは学生の知識レベルや学習スタイルに基づいて最適な学習グループを形成することができます。これにより、学生は互いに学び、成長する機会を持つことができます。
■教材のアクセシビリティへの応用
生成AIは教材を視覚的または聴覚的に障害を持つ学生にとってアクセシブルな形式に変換するのに役立つことができます。これにより、全ての学生が教材に平等にアクセスできるようになります。
■シミュレーションと仮想現実への応用
生成AIは仮想環境やシミュレーションを通じて、実世界の複雑な問題を研究するための道具として使用することができます。これは特に科学や工学の学生にとって有用です。
■将来の展望への応用
生成AIによる教育コンテンツの生成: AIが教育コンテンツを自動生成する技術は、教師が個々の学生やクラスのニーズに合わせて教材をカスタマイズするのを助けます。
■学習者の感情の理解への応用
生成AIは進化し続け、学習者の感情や心理状態を理解する能力を持つようになります。これにより、学生が困難に直面しているときや特定のコンテンツに対して動揺しているときに、それを認識し対応することが可能になります。
■生成AIによる研究支援への応用
生成AIは学生や研究者が論文を書く際に、適切な引用を見つけるのを助けたり、研究の新たな方向性を示唆することができます。
■ライフ・ロング・ラーニングへの応用
生成AIは学生が大学を卒業した後も継続的な学習を支援します。AIは個々のキャリア目標や興味に合わせて学習リソースを推奨し、ライフ・ロング・ラーニングを推進します。
最後になりますが、これらの活用方法や将来の可能性を最大限に引き出すためには、生成AIの倫理的な使用、プライバシーの保護、そして生成AIのリテラシー教育が重要となります。
■生成AIの倫理的な使用
生成AIは、人間が書いたようなテキストを生成する能力を持つため、その使用には注意が必要です。虚偽の情報を広めたり、人間が書いたと誤認させる目的で使用される可能性があります。そのため、生成AIの使用は透明性と真実性を保つことが重要です。また、生成AIは、学生の学習データを使用してパーソナライズされた学習経験を提供しますが、そのデータの使用には学生の同意が必要です。そして、そのデータは教育目的のみに使用され、他の目的で使用されないことを保証する必要があります。
■プライバシーの保護
AIは大量のデータを分析する能力を持ちますが、その中には個人を特定可能な情報も含まれる可能性があります。そのため、AIの使用にはプライバシーの保護が重要です。AIが収集・分析するデータは、必要最小限に留め、適切に匿名化・脱個人化されるべきです。また、学生のデータは適切に保護され、不正アクセスやデータ漏洩から守られる必要があります。
■生成AIのリテラシー教育
AIが日常生活の多くの部分に浸透してくるにつれ、AIのリテラシー、つまりAIの機能と限界を理解し、それを適切に使用できる能力が求められます。大学生に対しては、生成AIの基本的な概念と原理を理解するための教育が必要です。また、AIがどのように個人のデータを使用し、その結果がどのように生じるのかを理解することも重要です。
これらの課題は、生成AIの教育への活用における重要な考慮事項であり、これらを適切に運用できれば生成AIの教育への貢献を最大限にすることが可能になります。
今回の文章は ChatGPT-4-32kを使って最終仕上げをしています。
生成AIらしい文章はこんな感じになるということを知って頂ければと思います。
私たちICT経営パートナーズ協会でも生成AIの教育への活用を見守り、必要に応じてサポートを提供していくことも必要ではないかと考えます。
生成AIの利活用についてご質問等あれば、お気軽にICT経営パートナーズ協会にお問い合わせください。
以上
【会長コラム】
『プラスの変化を利用してマイナスを埋める
~VUCA時代に求められるリスキリングのスキルとマインドセット~』
ICT経営パートナーズ協会 会長
株式会社ドリームIT研究所 代表取締役
国土交通省 EBPM アドバイザー
木村 礼壮
現代は、VUCA時代(Volatility:変動性、Uncertainty:不確実性、Complexity:複雑性、Ambiguity:曖昧性)であり、日本は少子高齢化が進みつつある現実を否定する人はいないと思います。
そのような環境の中でサステナビリティやウェルビーイングを達成しながら様々な課題を解決していかなければいけないという舵取りの難しい時代かと思います。
少子高齢化はVolatilityの原因の1種なのかもしれませんが、技術の変化の波などと比べるとずっと長い波なので対応策も別物と考えても良いのではないでしょうか。
日本の高齢化率は、2010年:23.0% 2020年:28.6% 2030年:31.2% 2040年:35.3%となり、その後も上がり続けます。人口も2010年1億2806万から2040年には1億1092万となります。更に2065年には8800万となります。(出典)内閣府(2022)「令和4年版高齢社会白書」
その影響は様々なところに出てきており、実感としての保険料(介護保険等)の値上がり、空き家の増加(2018年では、日本の住宅数は世帯数を800万戸程度上回り、長年需要よりも供給が上回る状態が続いています)等々上げだすとキリがありません。
とにかく、一時代前のやり方では上手くいかないということかと思います。
一方で情報システムの技術革新に目を向けるとそのような社会現象とは比べものにならない速度で変わってきているかと思います。ちょっと前までSoR(作業効率化重視)からSoE(顧客対応重視)への変遷というようなことが言われていましたが、グローバルに見ると、その先に進んでいっているかと感じます。新しい革新技術の適用個所を見つけるだけでデスラプション(創造的破壊)を起こせるような技術が続々と実用化されていると感じます。Web3.0やメタバースのような技術はまだ一般化していませんが、生成AIなどはここ1年で一気に一般化した印象です。
そのような状態の中で我々も変わらないといけないということでリスリキングやリカレントということが良く聞かれるようになっています。
リスキリングの中でのよく登場するキーワードが、「柔軟性」とか「アジリティ:俊敏性」とか「デスラプション:創造的破壊」とかは聞き飽きる位氾濫しているように感じます。変化に素早く柔軟に対応し、今までの常識を根底から覆すような革新を目指せるようなスキルを体得することは確かにVUCA時代に求められるのは理解しやすいかと思います。
異常気象、政治的な安定性の欠如等マイナスな変化要因もあれば、技術革新のようなプラスに働く変化もあることを考えるといかにプラスの変化をうまく利用してマイナスを埋めていく取組をいかに素早く行えるかということかと思います。
生成AIの話も記載したので、そのような取組を実行するために必要なものを生成AIに聞いてみました。私の考えと一致するものもあれば、そうでないものもあったので、生成AIの回答の後に私の考えを記します。
<生成AIの回答の抜粋>
デジタル技術の習得と活用:
マインドセットの変革:
デザイン思考やリーンスタートアップなどの手法やフレームワークの活用:
イノベーションエコシステムの構築と参加:
デジタルマチュアリティモデルなどの指標やツールの活用:
リスク管理とコンプライアンスの強化:
ワークライフバランスやダイバーシティなどの価値観の尊重と推進:
リモートワークやオンライン教育などの働き方や学び方の変化への適応:
なるほど、もっともだと思うことばかりですね。上の2つの項目を否定する人はいないと思いますし、イノベーションエコシステムについてはまさに弊協会の目指すところですし、フレームワークや指標の活用も必須アイテムかと思います。VUCA時代なので、リスク管理も外せないでしょう。下の2つのウェルビーイング系の内容も必要かと思いますが、ウェルビーイング系はこの取組のために特に強化することでもなく、何をやるにも前提条件となっているような気もします。
私個人としては、上記にプラスして、変化によって具体的にどんな困りごとが発生しているかのアンテナ機能を持つこと、困りごとを解決するには様々な人が絡んでくるので説得や交渉をキチンと進める手順と能力、そしてゴールオリエンテッドな考え方(特に現在の環境やリソース全体を一度分解して壁をとっぱらった状況を描いてからどのような手段で目的を達成するかを組み立てる考え方。縦割り構造の壁をなくした状態から全体最適化を考える方法。)が必要になってくるかと思います。
それと今後一般化されてくる技術で代用できるような能力に磨きをかけるよりは、目的を達成するための道具である革新技術をいかにうまく使いこなせるようになることが重要かと思います。
ただ、そのような大掛かりなことを考える前にあなたがどうありたいかを定期的によく棚卸しして、そのためにどうするべきかをロードマップ化することがあなた自身が自分にできる最高のリスキリング計画になると思います。
企業が従業員に対して行うリスキリング教育というものもあると思いますが、公的ゴールとパーソナルゴールは必ずしも一致しないので、企業も個々の従業員の思いを吸い上げる仕組みがあるとそれ自体がイノベーションに通じるかもしれません。
とりとめの文章になってしまいましたが、どんな時代になっても絶対に変わらない自分自身への最重要取組として、「健康第一」があります。そして、健康のために取るべき手段は古くから不変で(1)充分な睡眠をとること (2)食事は腹八分目 (3)適度な運動、です。
季節の変わり目で体調を崩しやすい時候ですので、ご自愛くださいませ。
以上
【巻頭コラム】
『「ビジネス向けSNSの活用」という一手』
ICT経営パートナーズ協会 会員
株式会社Global Runway 代表取締役
株式会社ワープ・スタイル 代表取締役
高山 基一
企業の事業推進を行う上で重要な販路や新規顧客の開拓。あるいは新規事業の開発や新たなビジネススキームの構築。貴社ではそれらの対応をどのように進めていますでしょうか? また、事業を推進する上で必要な人材の採用は思い通り進んでいますでしょうか?
あるいは企業活動ではなくむしろ自身のキャリア形成や人材価値の観点といったことに興味をお持ちの方も多いかもしれません。人材流動化の大きな波の訪れが予見される今、TV CM等で盛んに流布されている「キャリアの健康診断」なるものを目的に、転職紹介サイトへの登録等をお考えの方もいらっしゃるかもしれません。
これらの課題や指向に対し、自社、自身の力だけでは解決できそうにない場合の対応として、例えばコンサル会社に相談する、公的な斡旋サービスを利用する、また自身のキャリア価値の確認であれば転職サービスに登録する、といった風に、従来から提供されている数々の仲介サービスを活用する方法があります。そして、それらの活用は良好な結果を得ることに寄与するものと考えられています。
一方で、仲介業者という第三者に頼らずとも、インターネットとその活用サービスが発達した現在においてよりダイレクトに、しかもグローバルに必要な企業や人とつながる方法があります。それが『ビジネスSNS』の活用です。
★ビジネスSNSとは何か
ビジネスSNSは、ビジネスプロフェッショナルがビジネス上のネットワークを構築し、コネクションを活用して目標を達成するためのプラットフォームです。国内外のベンダからさまざまなサービスが提供されており、近年ビジネスコミュニケーションの変革を力強く担っています。
★ビジネスSNS利用の主な利点
・ビジネス機会の拡大: ビジネスSNSの利用により、新しいビジネスの機会を発見し、パートナーや、顧客とのつながりを得、新たなプロジェクトやビジネス提携のチャンスを構築するための出会いとコネクション強化の場となります。さらに、業界のリーダー、有力企業の役員、専門家といった方々とダイレクトにつながりを持てる可能性もあります。
・専門知識の共有と自己ブランディングの形成:
ビジネスSNSは、業界の最新情報やトレンドを共有する場でもあります。他のビジネスプロフェッショナルから学ぶとともに、自分の専門知識、実績、スキル等を開示・共有することで、企業や自身の価値、業界内での認知度を高めることができます。
・ビジネスに役立つ機能の提供:
容易にコンタクトやコミュニケーションを行えるツール、自己研磨のためのコンテンツ、さらにレコメンドや広告機能等を有し、私たちの継続的な利用を支援する仕組み等が整っています。
一時代を築きつつあるビジネス特化型SNS:LinkedIn
LinkedIn(リンクトイン)。もちろん名前は知っているけど使っていない、あるいは使おうと思ったことはない。よくお聞きする意見です。内容がよくわからない、自身の回りで誰も使っていない、あまり良い噂を聞かない、等々、ご意見は様々であろうと思います。
そんなLinkedInの生い立ちは意外に古く、2003年に米国でリリースされました。これはSNSとしてFacebookより長い歴史を有することを示します。
その後LinkedIn社は2011年に日本法人を設立し日本でも本格的なサービスを開始します。しかしローカライズがチープなことが起因してか日本人のユーザ数はさほど伸びず、その間に日本ではFacebookのビジネス利用が進みます。2016年にマイクロソフトが法人(LinkedIn社)を買収し完全子会社化することにより日本語対応が急速に進み、日本人にとっても当初より格段に利用しやすいSNSになりました。LinkedInは、情報収集、ビジネスマッチング、BtoBマーケティング、そしてリクルートといったビジネスの各局面で有効的に活用が可能です。
そして現在、LinkedInは、ワールドワイドで9億人以上の登録アカウント数を誇り、ビジネスSNSとしては桁違いの巨大なソーシャルネットワークへと育ってきました。
これまで日本では、ビジネスで活用するSNSとしてもFacebookの利用が活発でした。Facebookを活用してビジネスの情報を得たり、会社ページを作ったり、あるいは自身のビジネス上のアピールを行ったりされていらっしゃる方も多いかと思いますし、それは特に違和感のない行いとなってきました。
ただし、グローバルの視点で見ると、どうも様子が異なるようです。
日本では、例えばビジネスで知り合った方に対し、Facebookでのつながりを申し入れることは少なからず普通にある行為と思います。しかし、海外のビジネスマンに対してあなたが同様の申し入れをすると、もしかすると多少怪訝な反応に合うかもしれません。海外の多くの国では、FacebookはあくまでもプライベートのつながりのためのSNSであり、ビジネス用のSNSとしてはあまり利用されていないようです。
実のところで告白しますと、かく言う私自身、アカウント登録後約10年程の間、ほぼLinkedInの利用をすることはありませんでした。近年インドと仕事の付き合いが増える中で、インド側のスタッフやパートナーから依頼を受け日本企業の情報収集やコンタクトといった局面でLinkedInの利用が必要となってきました。数年前はLinkedInで日本企業の情報にヒットすることはかなり稀でしたが、近年徐々にではありますが日本企業や日本人の利用も増えて来たような感触を得ています。
日本人のLinkedInアカウント数は昨年300万人を越えたといったところで、これは米国やインドはもとより主要諸外国の登録者数、あるいはFacebookやX(旧Twitter)の日本人登録者数に比べてもまだ桁違いに少ない数に留まっています。 昨今の日本では多くの事柄でガラパゴス化という言葉を耳にします。LinkedInの利用に関してもこのまま低空飛行を続けるのかあるいはそうでないのか。私個人の考えとしては、グローバル化の潮流にも牽引され、恐らくLinkedInの日本人利用者数はこれから増えていくものと思いますし、そのためには活用成功例的な事案等の情報が広く拡がることも重要であるのかもしれません。私自身、いち利用者として引き続きこのサービスをうまく活用しながら、今後のすう勢を見ていきたいと考えています。
以上
【巻頭コラム】
『インドの勢いが止まらない! インドIT人材活用という私たちの選択肢』
ICT経営パートナーズ協会 会員
株式会社Global Runway 代表取締役
株式会社ワープ・スタイル 代表取締役
高山 基一
今年も大変暑い夏となりました。お盆のこの時期、皆様におかれましてはいかがお過ごしでしょうか?
さて、古来より日本人の生活に深く根付いているこの「お盆」ですが、その用語の誕生を紐解くと、古代サンスクリット語の「ウランバナ」に起源を求めることができるそうです。ウランバナとは "逆さまに釣り下げられる" ことを示す言葉であり、そこから転じてそのような苦しみにあっている人を救う法要を意味する言葉になったそうです。仏教発祥の地インドからこの言葉が伝わった中国では「盂蘭盆会(うらぼんえ)」と音読され、さらに伝承先の日本においては、日本古来の祖霊信仰と仏教が融合し、「お盆」という言葉で定着したと言われています。
そんな悠久の昔より私たち日本人とも遠からぬ縁を持つインド。そのインドの国の勢い、プレゼンスの高まりにいま世界からの注目が集まっています。
人口で中国を追い抜き、その高い経済的発展性、地政学的重要性、またグローバルサウスのリーダー国としての地位の高まり等々、近年インド関連のニュースや報道は枚挙にいとまがありません。まさに、名実ともの大国化に向け、勢いの止まらないインド。
一方で、情報通信技術(ICT)の分野においてもインドは世界的な注目を集めています。インドはかねてより多くのIT技術者を輩出することで耳目を集めていましたが、今やグローバル規模でのITビジネスの中核を担うIT大国の地位を確かなものとし、さらに進化・発展しつつあります。マイクロソフト、IBM、Google/アルファベット、Adobe 等々、そうそうたる世界的なIT企業が次々とインド出身者を経営トップとして迎え入れている事実を知るにつけ、私たちの驚きは増すばかりです。
インドは、中・長期的なIT分野での積極的な投資と政府の支援により急速に成長を遂げています。インドのITについて、現状と未来に向けた期待のトピックとして次のように要約することができるでしょう。
【現状】
・ITアウトソーシングのリーダー:高い技術力と人材の豊富さにより世界的なITアウトソーシングの拠点となっており、多くのグローバル企業がソフトウェア開発やバックオフィス業務をインドの企業に委託している
・ユーザー数の急増:急速な人口増加とスマートフォンの普及により、インド国内のインターネットユーザー数は急激に増加。これにより、オンラインサービスやデジタルプラットフォームへの需要とビジネスチャンスの機運が急速に高まっている
・デジタルペイメントの成長:デジタル決済の普及により国内でのキャッシュレス社会への移行が急速に進行している
【近未来へ向けた動き】
・スタートアップエコシステムの拡大:政府の支援や投資家の興味が高まる中、多くのテクノロジースタートアップが生まれる環境の整備が進んでいる
・通信環境の整備・向上:5Gの整備・向上に伴い、スマートシティ、教育、IoT、ヘルスケアなどの分野で新たなサービスやアプリケーションの可能性が広がる
・AIとデータ解析の活用:人工知能とデータ解析技術の発展により、医療診断、農業、交通管理など、様々な業界で効率化や予測能力の向上を目的としたAIの活用が進む
ご承知の通り、日本では長きにわたりIT技術者の不足が叫ばれています。他方で、彼の地インドでは、年間数十万人規模の新卒のIT分野の技術者を輩出し続けています。量的な魅力はもちろん、そのハングリー精神やコミュニケーション能力といった面でも評価を得ています。
多くの若いインド人にとって、IT技術者は人気の職業です。これは過去に経産省が実施した国際調査でも浮き彫りになっており、例えばインドの若者の84.8%がIT産業への就職に興味を示す一方、日本では34.2%と世界の主要国の中においても低い肯定率となっています。多くの日本の若者にとって、ITの仕事はあまり魅力的な仕事ではないように映っている様子がうかがえます。
IT関連の職を目指すインドの学生は教育機関で高い専門知識を身に着け、そして社会に出て行きます。工科系の一流大学で優れた成績を残した学生の多くは海外に就労の場を求める傾向にあります。インドの技術者のアドバンテージの一つとして、英語能力を有していることが上げられます。多言語国家インドにあって、英語は共通のコミュニケーション言語としての役割を担っており、ビジネスの場や高等教育の現場では日常的に用いられます。このコミュニケーションに関するグローバルな素養は彼らの強みであり、自身の活躍の場を米国や欧州に求め、そして旅立って行きます。
一方で、IT関連の職を目指す志望者が多い反面現状インド国内での採用の器はバランスを欠いた規模にとどまり、毎年就職にあぶれる卒業者も多く生じています。
また近年は、就業先として日本に興味を示すIT技術者も増える傾向があります。インドは長く親日国であり、さらに経済交流や文化・カルチャーといったものがその入口の一つとなっています。実際、日本国内には既に数多くのインド高度人材が就労しており、公的調査等においても、採用側の高い満足度、低い離職率等の実態が明示されています。
今後も増大する開発関連業務には、ローコード/ノーコードを主軸に開発業務の更なる効率化の推進が期待されますが、一方で引き続き人的リソースの増強の必要性も高い状況が続くと考えられます。日本人技術者の確保が難しくなる現状において、海外のリソースの活用の重要性がますます増して行くものと思われます。その際、インドは恐らく一つの重要な選択肢になりえる素養を有していると考えます。
海外人員の参画については、職場環境の整備が重要となりますが、例えばオンラインでのリモートワークを将来的な雇用確保に向けての入口としてうまく活用していくようなこともその敷居を下げるために一考の価値があるかもしれません。くしくも新型コロナウィルスの影響によりオンラインでの業務対応が定常化した現在において、時流に即した取り組みやすい形であるとも考えます。そして、これはまさにICTの活用を具現化したビジネスの取組みであろうとも思います。
これまで見て来たとおり、日本とインドでは、ITの現場を支える人的な要因やそのボリュームに大きな違いがあります。それは、2国間の補完関係をうまく構築することにより、Win-Winの強力なスキームを実現できる大きな可能性を秘めている、という言い方もできるのかもしれません。
一方で過去からの経験等に照らし、それは決して容易な道のりでないとのお考えをお持ちの方々も多くいらっしゃるかもしれません。
現在は、IT技術やツール、様々な手法の発展のあと押しを得て、環境面の整備は容易になりつつあります。円熟した社会にあってIT化社会の実現に向けて課題を抱える日本、成長著しくそして多くのIT技術者を要するインド。この2国のタッグによる連携は、とても優れたモデルになり得る素養と可能性を秘めているように思われます。みなさまのご意見はいかがでしょうか?
末尾となりますが、最後に簡単なご案内とさせて頂きますことご容赦ください。
弊社 株式会社Global Runway では、法人様に向けたインド関連のビジネスの支援業務を行っています。インド人技術者のご紹介、オフショア開発・運用、インドへの事業進出等にご興味をお持ちでしたら、雑談レベルの情報交換でも構いませんので、是非弊社にお声かけいただけますと幸いです。
お問い合わせ先(メール): info@global-runway.com
以上
【会長コラム】
『BPR抵抗勢力が推進勢力になる』
ICT経営パートナーズ協会 会長
株式会社ドリームIT研究所 代表取締役
国土交通省 EBPM アドバイザー
木村 礼壮
BPR(ビジネスプロセス・リエンジニアリング)は、業務内容やフロー、組織や管理体制などの抜本的な見直しを意味しています。組織が目指す目的を達成するために、現状を否定した観点から業務・組織体制そのものの変革をし、全体を最適化し、新しい価値や付加価値の創出を追求します。
しかし、現状に何の問題意識も持っていない現場にBPRを推進しようとしても糠に釘の状態が続きます。そのような状態(昨日も今日も、去年も今年も同じことを踏襲していくことを正しいとすること)が組織から柔軟性を奪っています。
それは、先の見通せないVUCA時代において、最も危険な状態かもしれません。
VUCA時代では「(1)状況がどのように変化しているかを知る」ことと「(2)変化に合わせて柔軟に対応できる状態」にしておくことが必要ということは誰でも理解できるかと思います。
そのためには、組織として、以下の3つの自己制御機能を持つことが必要です。
(1)状況を監視モニターし、将来状態を予測する。
(2)現在と将来状態に適応するためにどう変更するかを意思決定する。
(3)現在実行されている業務に対して、全体最適化を考慮した変更過程を示す。
そして、ひとたび変更が必要と判断され、変更を実行する際にはPOC等から始まるアジャイル志向のBPRプロセスを走らせることになるかと思います。
既にほとんどの組織は以下の点(大きな環境変化)で将来に向けて充分な情報利用方法を確立すべきと認識している筈です。
デジタル技術の世の中への浸透は加速度を増し、大きなうねりとなって社会環境を日々刷新しています。
そして、それは既に以下の変化をもたらしています。
(1)あらゆる情報が「デジタルデータ」として記録・収集可能となった結果、複製・伝達には追加的コストがかからなくなり(限界費用ゼロ)、情報のやり取りに関するコストが大幅に下がることで様々な経済活動のコストを抑えることが可能(取引費用の引き下げ等)となった。
(2)あらゆる情報がデータとして記録・収集されることで、顧客から得られたデータを分析し、より優れた体験価値を顧客に提供することが可能となっている。まさに、付加価値は「モノ」から「データを活用したサービスやソリューション」へと移行しつつある。
(3)ICT などのデジタル技術の浸透は、「つながる利用者が多いほどより多くの利用者を獲得できる」という「ネットワーク効果」を生じやすくしており、こちらも注目すべき価値創造メカニズムの変化であるといえる。限界費用がほぼゼロである特性に加えて、ネットワーク効果も上手く活用することで、戦略次第では、企業規模によらず、指数関数的な急成長も可能となっている。(企業活力研究所の「デジタル・プラットフォーム構築による製造業の競争力強化に関する調査研究」から抜粋)
つまり、情報の利活用は、コストを削減できるし新しい価値創造にも急成長にも寄与するという時代となったということです。
しかも、情報の利活用にかかるハードルは下がり続けています。
この状況下で、企業のビジョン、ゴール、を達成しようとした際にその手段として情報利活用プラットフォームをベースにしたBPRが大きなインパクトを与えるであろうことは誰でも予測できるかと思います。
そして、話は最初の問題に戻りますが、BPRに対して推進の必要性を認識しない組織に対しての対処法ですが、
(1)組織としてのゴール、目的を明確化して、その目的達成のために現状のプロセスが理想の姿ではないことを理解して貰う。
(2)上記の事柄が理解できるのであれば、今のままでは危ない、という危機感を持っていることを確認する。
(3)顧客目線でもっと改善できるところはどこにあるかを認識して貰う。
(4)全体最適化という観点からあるべき姿において自己のベネフィットを実感して貰う。
(5)この、環境変化に応じて、より良い方向へ変わっていくスキルは一生利用できる貴重なスキルであることを実感して貰う。(BPRには、スキルトランスファーを含む人材育成が外せない理由はここにもあります。)
以上のことを利害関係者のパブリックゴール及びパーソナルゴールのレベルにまで落とし込んで共感して貰えると事態は動き出します。
もちろん、組織が変化しなければならない理由はデジタル技術の急伸だけではありませんし、理解をして貰うと言っても、どうやったら理解をして貰えるのか?と疑問を持たれることかと思います。
利害関係者に理解をして貰うには、納得してもらうだけでは不十分です。共感してもらい、自発的に動き出す状態にならないといけません。
この活動を行わずにBPRまたは、BPRに近いプロジェクトを進めると、カットオーバー前に発注者からちゃぶ台返しを受けるようなリスクが大きいかと思います。
相手に共感をして貰うにはストーリーと実例をもとに合意形成をしていくことになります。
そのための詳しい内容は、ここでは書ききれませんので、ご興味がございましたら、下記のフォームより、お問合せください。
【巻頭コラム】
『ビジネスを効率化するためのBing AI Chat入門』
ICT経営パートナーズ協会 会員
ほその ひでかず
生成型AIの話題で盛り上がっていますが、今一つよくわからないという方もいらっしゃいます。今回は無料で使えるBing AI Chatを使って、少し生成型AIの世界を体験して頂ければと思います。
生成型AIとは、深層学習アルゴリズムを使用して、学習データからパターンや規則性を見つけ出し、それを元に新しいデータを生成することができる技術です。自然言語処理、画像生成、音声合成、音楽生成、3Dモデル生成など、多くの分野で急速に発展しており、注目されています。 「生成型AI」は、「ジェネレーティブAI(Generative AI)」とも呼ばれます。
●それでは早速始めましょう。
まず、Bing AI Chatにアクセスします: Microsoft Edgeウェブブラウザを使用してBingウェブサイトにアクセスします。または、iPhoneまたはAndroidデバイスのBingモバイルアプリを使用することもできます。
Microsoftアカウントでサインインする: Microsoftアカウントをお持ちの場合は、そのアカウント情報を使ってサインインします。アカウントをお持ちでない場合は、無料で作成することができます。
Bing AI Chatにアクセスします: サインインしたら、Bingページの上部にある「チャット」オプションをクリックします。すると、Bing AI Chatのインターフェイスが表示されます。
会話を開始します: 会話の入力フィールドにプロンプトや質問を入力します。会話スタイルは「より創造的に」、「よりバランスよく」、「より厳密に」から選ぶことができます。
■ビジネスで使う場合は、「より厳密に」を選んでください。
Bing AI Chatは、提供された入力とチャットボットの能力に基づいて、あなたの問い合わせに応答します。
Bing AI
Chatは、高度な言語モデルであるGPT-4を活用して会話形式の回答を提供します。これにより、より自然で情報量の多いコンピューターとの対話が可能になります。
何回Bing AI Chatと対話が出来るかを分数形式で表示されます。始めは5回からスタートしますが、使っているうちに20回とか30回対話が出来るようになります。
対話の回数はそれだけ対話した内容をAIが記憶しているという事で、人間と同じように、前に対話した内容であれば記憶していて、その内容も加味して回答してくれるという事になります。
Bingチャット使いこなすコツは、「質問の仕方」です。 新しいトピックの欄に聞きたいことを入力するわけですが、まずは、「質問の仕方」を練習・習熟することが大切です。また、良く使う質問はメモしておきましょう。
それでは実際に使ってみましょう。
■新しいトピックの欄に「ICT経営パートナーズ協会」のような固有名詞のキーワードを入力し、エンターキーを押すか、右側の会話開始マークをクリックします。ここでは教えてくださいなどの言葉を足さないようにしてください。
インターネット上の情報からBing AI Chatが拾い出してきた内容を文章形式で表示してくれます。
Bing AI Chatでは情報をどこから取って来たのかというURLも表示してくれたりしますので、オリジナルサイトの内容も確認出来たりします。
出てきた回答を見て、内容を評価してみてください。正しい部分、違っている部分、古くなっている情報などが混在しているかもしれません。
基本はインターネット上の情報がもとになっているので、ネット上にある情報は真偽に関わらず情報として利用されます。またインターネット上に情報が無い場合には、情報が見つからない等の返答があります。
■つぎに「もっと詳しく教えてください。」と入力し、エンターキーを押すか、右側の会話開始マークをクリックします。
インターネット上に情報が沢山ある場合には、詳しい情報が付加されて表示されます。
ここからが本格的にBing AI Chatを使える順番になります。
ということで5回までしか使えないとあと3回しか対話できません。日頃少し、検索エンジン代わりにBing AI Chatアクセスして、接触頻度を増やして対話回数を増やすようにしてください。
●まずは基本の「質問の仕方」を練習しましょう。
実際にやってみることが大切です。
■質問
・ハッピーマンデーについて教えて。
■文章作成
・海の日についての記事を作って。
■要約
・以下の文章を要約して。「文章を貼り付ける」
■条件設定
・以下の文章を200文字以内に要約してください。「文章を貼り付ける」
・以下の文章をグルーピングして、小見出しをつけてください。「文章を貼り付ける」
■表現方法を指定する
・次の文章を10歳の子供でも分かるようにリライトしてください。「文章を貼り付ける」
・次の文章を箇条書きにしてください。「文章を貼り付ける」
■追加で引き出す
・続きを教えてください。
・他にはありませんか。
・もっと詳しく教えてください。
■修正・訂正させる
・もっと短くしてください。
・言い回しを、ですます調に変えてください。
●さらに本格的に使うコツは前提条件を付けるという事です。
Bing AI Chatと対話する時に、「私は雑誌の編集をしています。」、「10歳の子供にわかるように。」など条件を付けましょう。
どういう条件を付けると自分の求める表現になるかは、ある程度の試行錯誤が必要になります。
●質問の仕方に慣れてきたら以下のような質問が出来ます。
■突っ込んだ質問の例
・別の方法で説明してください。
・具体的な例を挙げてください。
・この問題の前提は何ですか。
・この問題で想定されていることは何ですか。
・この問題にどのように反応すると思いますか。
・なぜこの結論になったのか説明してください。
・この施策はどんな効果があると考えていますか。
色々試してみて結果を検証してみてください。
●最後に
Bing AI Chatは正しい答えを教えてくれる仕組みではありません。
ビジネスを効率化するための道具だという事を忘れないようにしてください。
Bing
AI ChatではChatGPTの技術を使っているため、入力データが学習に利用される可能性があるという事も知っておいてください。
Bing AI
Chatは進化するテクノロジーであり、その機能と利用可能性は時間の経過とともに変化する可能性があることを忘れないでください。
Bing AI Chatの開始方法と効果的な活用方法に関する最新情報については、Bingの公式ウェブサイトや関連ソースを参照することをお勧めします。
ICT経営パートナーズ協会ではビジネスの効率化のためのBing AI Chatの利用方法などやDX導入に関するご相談もお受しております。お気軽にお問い合わせください。
以上
【会長コラム】
『本当はハードルが低い官公庁ビジネス』
ICT経営パートナーズ協会 会長
木村 礼壮
弊協会は4月から新年度が始まり、時期を同じくして政府のコロナ対応も一気に緩和され始めました。多分、それに伴いビジネスが活性化されてこのメルマガを読む時間も惜しいという状況かと思いますが、短めに書きましたので、もう少しお付き合いください。
ビジネス活性化ということで、弊協会も今年度の目標として、会員向けの集客・営業支援をより一層強化と同時に会員向けビジネス活性化情報の提供ということで、勉強会・研修・交流会を充実させていきます。
(ちなみに、コロナ対応緩和を受けて、6月22日(木)15:30から東京都中央区日本橋本町4-8-15 ネオカワイビル4Fにおいて会員交流会を開催します。会員以外の方もご興味がおありでしたら、ご参加ください。席に限りがございますが、ご興味がある方は info@ictm-p.jp までご連絡ください。)
個人的には官公庁向けビジネスの勘所を勉強会・研修で伝えるようなことを新しく企画しています。官庁で調達仕様書・プロジェクト計画書等を作成・レビューしている立場としてどのように官公庁とのビジネスを始める・活性化して行けば良いかをお伝えできれば、と思います。
官公庁ビジネスは、大企業から個人事業主まで様々な企業にチャンスがあります。小さい企業(個人事業主含む)には小さい企業向けの案件がたくさんあります。官公庁からの発注の多くは公募という形をとりますので入札参加資格が必要となるケースが多いのですが、入札参加資格取得自体は難しいものではありません。
小さい企業は小さい企業なりの入札参加資格ランクを取得して身の丈に合った案件にターゲットを絞れば良いということになります。
まずは、自身に合った公告案件をどうやって見つけるかというところから始まりますが、ツボさえ分かれば、あまり難しいことではありません。この際の注意事項としては、自分が欲しい案件と自身が対応可能な案件とを混同しないようにすることです。
そして、100万円以下の案件でも公募という形をとりますので、公告文と仕様書が公示されます。その公告文と調達仕様書をどう読み解くかということですが、これも調達側の立場に立って調達側の要求を読み解いていくツボがあります。次は、公募に対する提案書の作成ですが、これも書き方のツボがあります。
ビジネスはどれも同じことですが、そこに課題が存在していて、その課題を解決してあるべき姿に変えていくことが目的となります。その目的達成の手段としてどのような内容を提供できるかを相手の共感を得られるように説明していくことが提案となります。
提案書のページ数が多い方が良いと思っている人も見かけることがありますが、不必要な部分はかえって言いたい事をぼやかすだけでマイナスに働きますので、あまりページ数にこだわることはしない方が良いです。ただ、必要なことを記載していくと自然とその案件に合った量のページ数となります。
このようなことを考えるとツボを押さえて挑戦することにより、買いたたかれることもないですし、受注時には実績として自社の信頼性があがる案件に定常的にリーチできるようになると思われます。
弊協会も今年度は協会として官公庁ビジネスに挑戦するつもりですので、是非、協業できると嬉しく思います。
その他にも様々な最新技術・事例・取組等の勉強会・研修・情報交換の場を設けていきます。
本年度も弊協会を宜しくお願いいたします。
以上
【巻頭コラム】
『ビジネスマンにとっての英語学習の意味』
ICT経営パートナーズ協会理事
小林 寛三
1.英語講師の機会
今般、品川区のシルバー大学にて英語講師を務めることになった。商社での海外経験などが評価されたと思われるが、英語に興味のあるシニア対象とは言え、さまざまなレベルの受講者を対象に、興味を持てる内容で、かつ駐在や滞在した経験のある話題を中心に、「誰でもできる英会話の旅と交渉」というテーマの講義を計画した。
このために100ページを超す教材を自作する過程で、これはビジネス場面でも役立つ面が多いことに気づいた。ビジネスも、想定外のことが起こり得るし、その時々の場面で意思決定し、相手とコミュニケーションして、双方に満足の行く解決を求めているというプロセスは、”旅と交渉”というテーマと共通だからである。
2.英語活用の世界の拡大
英語は、米国・英語・豪州・カナダなどの言葉であるだけでなく、EUやアジア、中東、東欧、ロシア、アフリカ、中南米などでも多用される国際語でもあり、むしろ第二外国語として利用する人口の方が遥かに多いほどである。特に、インターネットの拡大によって、さまざまな専門分野の用語が、まず英語で発信され、定着化する傾向が加速している。
3.英語情報流通の拡大
最近のコロナ感染や政治・軍事情報、環境問題、エネルギー問題など世界的な課題での情報流通が拡大しており、英語による情報発信は、質・量とも他言語を圧倒しており、それらフォローしないと状況判断が適確に進まない。英語専門チャネルの存在しない日本の遅れは、海外各国では、あたり前の状況になっている状況と比較すると彼我の違いは際立っている。放送大学ですら、(一部の英語講座を除けば)英語による専門的な講義がほとんど行われていない。
4.コーパス(Corpus)による辞書の発展
最近のAIの発展によるコーパス(Corpus)を利用した辞書の進展は、加速している。語学の権威に多く依存してきた文献収集が、最近では、活きた言語活用の実態を示すことができるようになってきた。その成果の一つは、和英辞典の進化である。従来は、和英辞典は、単なる日本語の逆引き機能でしかなく、ほとんど役立たなかったが、最近では、日本語と英語の表現の対比から日本人が表現する場合の留意点まで驚きの連続であり、読み物としても深化してきている。[おすすめは、2007初版発行の三省堂のウィズダム和英辞典である。この辞書の巻末には、80ページに亘って英語基本文型と例文が記載されていて、基本単語の用法がまとまっている。]
5.交渉のための英語
今回の講義のテーマは、”旅と交渉”とした。旅にはさまざまな発見があるとともに交渉しなければならない局面がでてくる。ビジネスは、信用獲得とリスク最小化のためにも、その時々の場面での交渉は重要になってくる。[オレオレ詐欺は、国内の問題ではなく、国際的には、もっと精緻でレベルの高いオレオレ詐欺によく遭遇する。
いわばクールさを失わない交渉力が試される場面でもある。] 商談には、納期(Delivery), 価格(Price), 支払条件(Payment)の3要素をまずConfirmすることから始まる。
[これをCDPPと称した]これは、詐欺やトラブルを避ける意味でも重要である。また交渉のためのコミュニケーションとして、有名な’PRAMの原則’がある。交渉する前に、何をゴールとするかのPlanning。相手の信用などRelationship の確認。
そしてGive & Takeによる相手とのAgreementの確認。もし合意できない場合でも、今後の展開に備えた相手とのMaintenance of Relationshipの確認である。
6.未知との遭遇
今回の英語講義で、”どのように新しい単語を覚えたらよいか?”という想定質問に対する回答を用意した。これはビジネスでの初対面の交渉の場面と同じであると回答しようと思う。即ち、(未知の)対象を数秒間見つめてイメージを掴む。どのような場面・役割の中で相手が登場してきているのか、既知単語との相違や比較、また再開の頻度、第一印象(スペルなど外見的特徴、登場場面となった源 (語源・出身)、相手の主張する場面とインパクトなど、未知の交渉相手と未知の単語に遭遇する場合はよく似ている。[相手の表現方法によっては、相手の立場・権限・出身地・交渉相手としての癖などわかる場合もある。同時にこちらの状況も相手にわかってしまう。] ビジネス上の面談も、未知の単語も、結局、相互に”個人情報”を露出することで、相手の認識の範疇に飛び込むことになる。
7.英語による情報発信の効用
ある発想が浮かんだら、これを英語でどう表現するのかを考えることは、時間はかかるものの、別視点から内容を吟味する上で有効である。英語表現では、(やはり外国語なので)微妙で曖昧な表現が難しくなる反面、直截的、具体的、論理的な文章の方がむしろ表現しやすくなる。まず論点を明確にした上での、結論を先に述べるという英語表現法もビジネスの進め方と同じである。その理由・根拠を具体的、なるべく定量的に、Because 1), 2), 3)でつなげて論証する。さらにその結論が展開され、新たな視点の広がり、今後の課題にも言及する。実際に英語で発表しない場面であっても、そのキーとなる概念だけでも、英語的な発想で思考して準備しておくことは意味がある。その情報発信の続編を作成する必要がでてきた時も、概念の整理をバイリンガル的に行うことによって、その後の展開に役立つ。
8.情報のアーカイブ化
さらに情報は新たな展開に応じて、修正・追加され、検証、再利用することが重要である。このためにも、作成日や作成意図をつけた文章の記録を、デジタル情報として作者のライブラリとしてアーカイブしておくことが重要である。いわば未来の自分に対して情報を準備・提供しておくのである。デジタル化した情報は、検索が容易で、いつでも参照・編集でき、ゼロから考えてもの書きするより遥かに効率的である。これは、ビジネスでは、CRM (Customer Relationship Management)そのものである。交渉を通じて得られた顧客の情報は、CRMを通じて蓄積され、関係が評価され、強調あるいは無視され、次のビジネスの展開に影響を与えていくのである。
9.ICT経営パートナーズ協会(ICTM-P)のロゴ
それには、関隆明前会長の時代から、Intelligent, Cooperative, Transborder, Managementがサブタイトルになっており、ICTを通じた協業の追求とグローバル化は、ICT経験の重要な要素であるとの認識が一貫していた。今回のシニア大学での英語講師という経験も、英会話の旅と交渉という気軽なテーマを掲げつつも、実はICTM-Pのロゴに表現してあるような、グローバル化時代の日本のあり方、旅でもビジネスでも遭遇するさまざまな場面での情報判断と協力関係の維持、そしてリスク多き時代でも元気さを保ち、前向きで多様な選択肢や解決策につながるような講義にしたいと考えている。
以上
【巻頭コラム】
『「人材=管理するもの・されるもの」なのか?』
株式会社真経営 代表取締役
早川 美由紀
従業員数300人以上の企業の経営者・役員対象の調査に基づく、「今後の経営戦略上、重要と考える施策」のベスト3が明らかになりました。
1位:人的資本経営
2位:ガバナンスを重視する経営
3位:DX
(産業能率大学総合研究所調べ 2023.1)
結果は、皆さんの予想通りでしょうか?
3位のDXについては、これまでも会員の専門家の方々が論じてくださっていますので、本日は、1位の人的資本経営について少し触れたいと思います。
1位の人的資本経営については、昨年11月に政府が上場企業に対し、有価証券報告書に人的資本情報を含む非財務情報の記載を義務づける方針を打ち出したことが契機となり、今、旬なワードとなっています。
つまりは、各企業の人材の育成・活躍の状況が、世の中につまびらかとなり、いかにステイクホルダーから選ばれる企業となるか?が問われる時代となっていくということです。
ただ、この流れ、「人材に投資をする」きっかけとなればいいのですが、表面的な数合わせが目的となってしまっては、まったく意味がありません。
企業は「経営戦略」と「人材戦略」の関連性を高め、戦略実行のために、どのような人材を採用し、どのように育成し、活躍の場をつくるか?
抜本的な施策が必要となります。
3位のDXと絡めると、戦略的なリスキリングも大切な施策の1つとなります。
その一方で、個人ひとりひとりも変わっていく必要があります。
今後は、会社が敷いたレールの上をただ真面目に走るのではなく、
・社会や会社が変わる中で、自分はこれから何をやりたいのか?
・そのために、何をどのように学ぶのか(経験含め)?
自分で考えて、自分自身をアップデートし続ける必要があります。
自らの意思がなければ、多くの選択肢があっても選ぶことはできませんし、やらされる学びには意味がありません。
「人材=管理するもの・されるもの」という意識から、企業も個人ひとりひとりも抜け出すことができるか?
日本の未来がかかっています。
【巻頭コラム】
『DX化推進に向けて
ジョン・コッター「変革の8段階プロセス」を考える』
MTIコミュニケーションズ
代表 今井雅文
中小企業診断士、ITストラテジスト
中小企業のDX推進に向けて伴走支援している読者も多いことと思いますが、どのような取組みを行っておられるでしょうか?
経済産業省「デジタルトランスフォーメーション(DX)を推進するためのガイドライン」では、DXを以下のとおり定義しています。
「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」
「革新」という文字が2回出てきています。社会情勢が不安定の中、今求められるDX推進とは、「ITの導入による業務の効率化」や「業務の電子化による生産性の向上」などではなく、「デジタル技術を活用したビジネスモデルの革新」であると言えます。
それでは、企業にとって「革新」がどうして必要なのでしょうか? TKC全国会では、その必要性を以下のように述べています。
第一に現商品の顧客満足度と売上高は必ず逓減していくものであり、
第二に市場競争により限界利益率も必ず逓減していく、従って、
第三に現状維持は衰退への道となり、イノベーションが無ければ企業は存続できない。
既存事業延長による経営では、経済社会環境の変化についていけず、その業績は衰退していく。これに抗するためにはイノベーションを創出するための革新が必須だということだと思います。我々が「DX推進に向けた伴走支援」するということは、「革新への伴走支援」を実施することと同義だと言えます。
中小企業の革新をどのような進めていけばよいのか、そのプロセスは多様であり難しいところですが、我々はプロセス策定の拠り所を持っている必要があると思います。
この拠り所のひとつとしてジョン・コッターの「変革の8段階プロセス」があります。
以下にご紹介します。
経営革新を成功に導くジョン・コッターの「変革の8段階プロセス」理論
中小企業において、経営革新を主導するリーダーは経営者です。何故なら、中小企業では経営者の考えに合った企業風土が形成されやすく、経営革新に取り組むことと経営者の姿勢が直結する傾向にあるからです。しかし、経営者だけでは経営革新は達成できません。そこには従業員と意識を共有し協働する活動プロセスが必須となります。この活動プロセスを策定するに当たって参考となる理論が「変革の8段階プロセス」です。
ジョン・コッターは、多くの事例を分析した結果、組織内での変革が進まないのは、8つの「つまずきの石」が原因である主張しています。この石とは、(1)内向きの企業文化、(2)官僚主義、(3)社内派閥、(4)相互の信頼感欠如、(5)不活発なチームワーク、(6)社内外に対する傲慢な態度、(7)中間管理層のリーダーシップ欠如、(8)不確実に対する恐れの8つです。これらのつまずきの石を乗り越え、変革を推進するために、以下の8段階のプロセスが有効であるとしています。
第1段階 『緊急課題であるという認識の徹底』
市場と競合の状況を分析し、自社にとっての危機を見つけることにより、変革に携わる関係者の間に「危機意識」を生み出すことができる。
第2段階 『強力な推進チームの結成』
変革をリードするためのパワーを備えたチームを築いていくために、変革の担い手となる人材を集めなければならない。変革推進チームには、変革の主導に必要となるスキル、人脈、信頼、評判、権限があることが望ましい。
第3段階 『5分で話せるビジョンの策定』
変革に導くためにビジョンを策定し、ビジョン実現のための戦略を立案する。過去の成功した変革を観察すると、変革推進チームメンバーが心躍るビジョンや戦略を共有している事例が多い。
第4段階 『徹底したビジョンの伝達』
シンプルで琴線に触れるメッセージをいくつものチャネルを通して伝え、ビジョンや戦略を全社に周知徹底する。あらゆる手段を活用して、粘り強くかつ継続的にビジョンと戦略を伝えると同時に、推進チームメンバーは、自身の行動で従業員に伝えていくことが重要である。
第5段階 『ビジョン実現の障害を取り除く』
ビジョンの実現に向け自発的に行動する人材が増えていくよう、これを阻む障害を取り除くことが重要である。障害となりうる組織構造やシステムを変革することで、従業員がリスクを取り、いままで遂行されたことのないアイデア、活動、行動の促進が可能となる。
第6段階 『短期的成果を上げるための計画策定・実行』
目に見える短期的成果を生む計画を立案し、実際に短期的成果を生み出す。これら短期的成果に貢献した人々をはっきりと認知し、報酬を与える。
第7段階 『改善成果の定着とさらなる変革の実現』
短期的な成果の定着をテコとして変革に勢いをつけ、変革ビジョン実現に適合するシステム、構造、制度を創出する。また、変革ビジョン推進に貢献する人材の採用、昇進、能力開発を行う。
第8段階 『新しいアプローチを根づかせる』
変革ビジョンに基づいた新しい取組と企業成功の関係を明らかにし、各階層のリーダーが変革を根づかせる。また、リーダーや後継者の育成を進めていくことで、変革を企業文化として定着させる。
この「変革の8段階プロセス」、どのように評価されますか? 企業組織、文化、風土などが壁になりIT導入がうまく機能しなかった経験をお持ちの方も多いのではないかと思います。その対策として参考になるのではないでしょうか?
(独)中小企業基盤整備機構「中小企業のDX 推進に関する調査」(2022.5.16)では、そのポイントして以下の2項目が挙げられています。
・2割超の企業がDX の推進・検討に着手済み。一方、取り組む予定のない企業は約4割存在する。
・DX の具体的取組内容として「ホームページの作成」を挙げる企業が約5割。「IoTの活用」「AI の活用」などは少ない。
すなわち、DX化は未だ7割超の企業が未着手であり、その取組は未だ始まったばかりだと言えます。今後、我々は、ITコンサルスキルばかりではく中小企業の経営革新コンサルスキルも身に着け、実効性のあるDX化伴走支援の質向上への努力を継続していくことが求められるのではないかと思います。
【会長コラム】
『DX推進はITスキルのみにて成らず』
ICT経営パートナーズ協会 会長
木村 礼壮
遅ればせながら、明けましておめでとうございます。
昨年は、大変お世話になり、どうもありがとうございます。
2023年は兎年ということもあり、大きくジャンプアップしていきたいと思っている方々が多いかと思います。
よく言われることですが、「業務改善で得られる効果は効率性や収益を数割程度向上させることだが、10倍・20倍に向上させるにはイノベーションが必要である。」とのことを考えると、大きくジャンプアップするにはイノベーションが必要ということかと思います。
そして、気候変動の影響により年々増加する豪雨や大雪等の自然災害、グローバルに絡み合う問題の複雑化等を踏まえると、今年もVUCAが加速する年になると思われます。
そんな中でも企業として勝ち残るために付加価値をあげていくことが重要というのは当たり前のことですが、そのためのやり方は各企業によって異なるでしょう。
ただ、大概の企業でも有効利用できるものはいくつかあると感じています。
DX(DX自体がイノベーションの一種ですから)推進もその一つかと思います。では、そのDX推進を実施する際に有効なスキルはどんなものがあるでしょうか。
色々とあると思いますが、一番とっかかりという意味では「利用者の要求の把握」とか解決すべき「問題の発見」とかがあるかと思います。その段階で役立つスキルのひとつとして、デザインシンキングがあります。
欧米ではごく当たり前のスキルとなっており、欧米ではその先に進んでいるところもありますが、日本ではまだまだ使いこなしていないように感じます。
それでも、経済産業省や内閣府からもDX推進に利用すべきスキルとして推奨されていることもあり、ネット上でも官公庁も含めて様々な国内事例を良く見かけるようになりましたので、良くご存知の方も多いかと思いますが、更なる普及が必要と思いますので、あえて、ごく簡単にデジタルシンキングについてご紹介いたしたく思います。
今まで世の中に存在していなかった価値を提供するということは、その価値で便益を受ける利用者がいるということであり、その利用者のことをよく知らなければ、利用者の喜ぶ価値を提供することはできません。
デザインシンキングは、利用者の考えていること・悩み・要求を深く探究することにより解決策を利用者との協業で見出していこうという考え方です。常に利用者中心であり、利用者との共創であることが特徴です。もう一つの特徴はデザインシンキングの進め方は一方通行(線形)ではなく後戻りもしながら行ったり来たりの非線形プロセスであることです。
デザインシンキングは本家のスタンフォード大学で5つのステップを提唱しており、
(1)共感、(2)定義、(3)アイディア、(4)プロトタイプ、(5)テストがあります。
(1)から(5)までを順番に行う訳ではなく、行ったり来たりを繰り返し最終的な解を得て企画作成します。
デザインシンキング型のイノベーション開発では、アイディアからプロトタイプを作成し、それをテストし洗練させるというプロセスを素早く繰り返しますが、企画を出せば終わりではありません。重要なことは、企画を出すだけでなく、それを実際にソリューション/サービスにするための行動にまでつなげていくことです。
それと、日常的にデザインシンキングの考え方を応用できるまでに腹落ちさせることにより真のスキル修得状態となります。
更にその先のプロセスとして、企画を実行に移して、実行結果を基にした利用者からのフィードバックを得て改善を実行していく探求型の取組も重要になります。
デザインシンキングを実行するためには、始める前に対象範囲を決めて、利用者を特定します。
範囲が決まれば、(1)共感のステップを開始します。利用者と思われる人々の情報を集めて、(通常はインタビューをしますが、私は経験上ビッグデータ解析がかなりの部分を代替してくれると実感しています。)利用者の真の要求を究明していきます。このステップでの肝は真の要求の把握です。表層上の要求を得ても意味がありません。例えば、利用者が「速く走る車が欲しい」と発言しても短時間で目的地まで移動したいのか、あるいは、速く走る車でのドライブを楽しみたいのかで提供するべきものが違ってきます。
(2)定義のステップでは、共感ステップから得た情報をどのようなニーズがあるかという視点でまとめ上げ、そこから課題を定義(明確化)していきます。この作業で良く利用される穴埋め定義フォーマットとして、
(「ユーザー」 は「 ユーザー の ニーズ」 を実現したがっている、なぜなら「我々が想像していなかった真の要求達成」のためだ。:鍵括弧内を穴埋めします)等があります。
次の(3)アイディアのステップでは、ブレスト等で問題を解決するためのアイディアを考えます。私はKJ法等をよく利用します。ブレストでは、ファシリテータを決めますが、ファシリテータとは、知見者として正解を教えたり、リーダーとして何かを決めたりするのではなく、参加者が自分の アイディアを自由に言えるような、会話の場を活性化するための役割です。
(4)プロトタイプのステップではペーパープロトのような簡単なプロトタイプを作成します。アイディアの内容が理解できるような資料でも良いです。プロトタイプの目的はアイディアの検証ですので、アイディアの検証ができれば良いのです。
(5)テストのステップでは、利用者にプロトタイプの内容を評価して貰います。可能であれば、プロトタイプをいくつか用意して様々な評価を貰うことが良いです。何をどのように改善すると利用者へ最大の価値を提供できるようになるかを検証していきます。
(1)から(5)のステップを俯瞰して眺めてみると意見(利用者からの情報)の発散と収束を繰り返していることが分かります。より多くの情報を集め、実際のアクションポイントに収束させていっていることがわかると思います。
デザインシンキングのプロセスを理解して、実行できるようになることが重要ではなく日常でもその考え方を元に様々な事象にデザインシンキングを適合させて応用していく習慣をつけることにより、VUCA時代を生きる力が身についていくと思います。
特に激動の時代でDXを推進しようとする場合、革新技術の方にばかり目が行きがちですが、利用者の真の要求の理解なくして、DXの成功はあり得ませんので、身に着けていて損はない考え方かと思います。
ここでは、あまりにも簡易な説明しかしていないので、デザインシンキングをよく理解できないかもしれませんが、興味ある方は是非、空き時間にでもネット上を検索するとか書籍を読むとかをして頂くと嬉しく思います。その際は、できれば、英文の資料を読まれることをお勧めいたします。日本での普及は欧米と比べるとまだまだですので、先行している情報に触れることがお勧めです。
DXは、革新的技術が中心ではなく、人中心のものです。なぜなら、便益を受けるのは人ですし、どんな価値を提供するべきかを決めるのも人だからです。
弊協会もDX推進に向けて、皆様のご支援・ご指導のもと多くの取組を実施しております。
どうか今年も皆様からの変わらぬご指導・ご支援を賜れますようお願いいたします。
【巻頭コラム】
『開発手法の多様化に対応した品質管理手法の取り組みについて』
合同会社TAHARA
田原 秀夫
ソフトウェア開発の品質管理の手法、定量的な品質指標としてテスト密度・バグ密度を組み合わせて利用されているプロジェクトが多いかと思います。
しかし、昨今、開発方法が多様化し、特にローコードやノーコード等といったツールはプログラムコード行数を用いた指標を利用するのは難しく、また、上限値・下限値を定めた指標値での評価は、類似プロジェクト情報の入手が必要ですが、技術多様化によって、類似事例を揃えるのが厳しい状況にあると考えています。
そこで、弊社が取り組んでいるコード行数を用いないテストフェーズにおいての品質管理手法として観点カバレッジとDDPモニタリングという2つの分析技術を活用した手法について紹介させて頂きます。
分析技術紹介の前にどの様な方向性でこの手法を使用するかですが、JISX0129-1における品質モデルの定義で、プロセス品質が内部品質、外部品質、利用時の品質に影響を与え依存しているとされております。このことからプロセス品質を上げるためにはプロセスを改善していく事が重要であると考え、その手段として、この手法を組み合わせ品質維持と開発速度を落とさない手法を目指します。
【観点カバレッジとは】
観点カバレッジとは、テスト観点に対してテスト項目数、摘出バグ数を対応付けた表の事を指します。
この観点カバレッジ表を用いることで、以下に示す事の確認及び活用ができます。
・テスト観点に対しての項目の有無、網羅性、偏りの確認
・摘出バグの偏り、観点漏れの確認
・異常値があった場合にテスト項目の妥当性や改善必要性の判断
また、より効果を高めるためにプロセス改善のモデルとして利用されるPDCAサイクルにテスト工程を当てはめ、
「テスト観点検討(PLAN)」→「テスト設計、実施(Do)」→「成果物確認、観点カバレッジ表作成(Check)」→「テスト設計プロセスの改善(ACTION)」の形で回していく事でプロセスを改善しつつ品質を上げていきます。
【DDPモニタリングとは】
DDPとは、Defect Detection Percentage(欠陥摘出率)の略称で、テストプロセスのバグ摘出能力を示し、すり抜けバグ(※1)が増えると値が下がる特徴を持っている品質評価技術になります。
DDP算出方法
DDP = n / ( n + x )
n:評価対象のプロセスで検出できたバグ
x:評価対象のプロセスをすり抜けて検出されたバグ
DDPモニタリングとは、このDDPをグラフ等活用し、値の推移を観察していく事を指します。
DDPの変遷を観察していく事で、極端に値が降下した場合等、異常のあるプロセスを特定することができるので、異常検知のタイミングで改善策の検討・実行し品質改善を行っていきます。
さらに、このモニタリングから改善までの流れをOODAループというモデルに当てはめ
「すり抜けバグの発生状況確認、DDPモニタリング(Observe)」→「品質の低いプロジェクトの特定(Orient)」→「改善策の決定(Decide)」→「品質改善の実施(ACTION)」の形で進める事で、発生した問題に対してより迅速な対応をしていきます。
また、品質の妥当性を判断する為の指標値としてDDPの評価閾値を予め定めておき、その値をもって評価を行いプロセス品質の妥当性も併せて判断していきます。
例えば、
DDP閾値が長期間95%を超える場合:<改善検討>テストが狙い通りの効果を出せていない可能性がある
85%以上95%以下の場合:<順調>テストが狙い通り効果を出せている
このように閾値を事前に設定します。
【分析技術を組み合わせた品質管理手法について】
組み合わせ方と実施タイミングについては、確認対象のプロセスにおいて、そのフェーズ着手中は観点カバレッジ、以降フェーズではDDPモニタリングを用いる組み合わせ方で品質管理を行っていきます。
例えば、確認対象を単体テストとした場合、単体テスト中は観点カバレッジ、それ以降のフェーズはDDPモニタリングを使用する形となり、フェーズは進むと確認対象も増えていくこととなります。
また、従来の各フェーズ終了時に綿密に確認した上で次フェーズに移るのではなく、各フェーズ完了後もモニタリングし、もし問題を見逃していたとしても以降フェーズで防ぐような方法をとり、確認に時間を掛け過ぎず開発作業をスムーズに進めることも目指す手法になります。
今回、観点カバレッジとDDPモニタリングを用いたテストフェーズにおいての手法を紹介させて頂きました。本手法は、どんな開発方法にも適用ができる事から、技術が多様化する時代にあった品質管理手法だと考えます。
【巻頭コラム】
『KPIとしての利益と付加価値の差異について』
国際会計コンソーシアム 副理事長
青柳六郎太(中小企業診断士・税理士)
企業の収益性評価については、利益と付加価値が最もよく使われるKPIではなかろうか。本稿では、利益と付加価値のどちらが企業の収益性を評価するKPIかを論ずるものではないが、どちらも無意識のうちに経営者が自社の企業目標などを語る時に使う傾向があるKPIである。その使い勝手の差異について思いつくままに論じてみたい。
1.収益性について“利益”を使う場面と使い勝手の特質
企業の収益性を示すKPIとして、利益が最も代表的なKPIであることはどなたも異論はないだろう。利益のKPIとしての特性として、利益指標の集約式は会計基準に裏付けられており、会計基準や会計用語に基づいて適格に定義されるので、企業の経営成績や財政状態及び資金状態を自社と他社との指標で比較するなど、集約式の構成科目に互換性があり正確に対比できること及び数値が定量化されていることが使い勝手の良さとされよう。
一方、“利益“が会計基準によってその意味が意思疎通する者同士で共通化できることが利便性が高いと考えると誰よりも利益に関心が高い筈の経営者層においては、伝わりやすい筈なのだが、意外にも、それを文字に表したり、口頭で伝えたりする場合は、誤解した概念で読み違えたりする場合があり無意識で解釈したりする場面が多いだけに混乱が起こったりするリスクもある。
例えば経営者が自社の年頭訓示や、期初での従業員への激励を行う大事な場面で、多くの経営者が「今期こそ各位は奮闘して収益目標達成にかけるべき時期である。」という意図で、収益向上(社長は利益向上のつもり)を命令する。
しかし、会計学の基本である簿記では、収益とは、利益10百万円(例示)ではなく売上高1億円(例示)を指すのが、会計上の定義である。簿記の穴埋め問題のテストで収益1億円(=利益10百万)と答えたら当然×点である。
また、会計学で重要な原則とされる収益費用対応の原則に経営者が誤解した収益=利益を代入すると会計学では収益―費用=利益は、利益―費用=利益となってしまい、公理そのものが成り立たなくなってしまう。
丁度、新入社員が簿記を学んでいる時期と社長が訓示している時期が重なり併せて企業のDX推進も重なると会社のDX稼働後の計数管理のアウトプットはとんでもないことになる。悲惨なのは、DX化が進み、集約式が収益―費用=会計の利益が要件定義されて実行プログラムに入り込むと、この企業では、自社の業績が会計学とは違う定義でKPIとして定義され、企業の収益性評価は社長の誤解が原因で波及連鎖し大混乱を招く。社長以下の中間経営層は今期の利益目標は10百万でなく1億円として設定されてしまうだろう。
逆に、経営者が考えている利益10百万必達は、収益=売上高10百万に代わってしまい、売上ノルマは10百万で良いんだと低い目標で伝わってしまうリスクもある。ちなみに、収益は英語ではProfitabilityとして使うべき用語である。
この様な与太話からもどうしても利益のことを社長が使いたい“収益“で言いたいならば、収益のしっぽに「性」を付けて「収益性」向上を目指すと言えば本来の意味に修正できるのかもしれない。これならば、収益と利益は意味が異なることがはっきりするのである。利益のことを収益という“癖“は大新聞でも過ちを犯しているのが日常である。
ちなみに利益で測定するKPIには、制度会計では粗利益(売上高―売上原価)、営業利益(粗利益―販管費)、経常利益(営業利益―金融利益)が多い。
良く知られた管理会計で測定するKPIには、限界利益(売上高―変動原価)が多いのでこれらのKPIは情報システムでも損益分岐点なども可視化するのに利便性が高く予め用意しているケースが多い。
日商簿記初級検定試験でも損益分岐点など可視化に必要な限界利益は端から教えることが有益であろう。
また経営者の方にはくれぐれも収益向上や必達を言いたいときは言葉を慎重に選んで頂きたい。
2.付加価値とは
利益と付加価値の違いは何か?どうして?と考えるのが筆者の拘りでもあるが、ニュアンスとして利益は主に企業や製品の経済的な視点での業績を表すKPIとして使われることが多いのではなかろうか?一方、付加価値は企業が生産したり、提供する製品や商品、サービスや生産プロセスなどの顧客価値についての優越性/差別性を表すKPIとして使われることが多い様なニュアンスが強い感じがする。近年、産業支援のための各種公的な補助金が整備されてきたが、企業に産業基盤強化のために企業の収益性評価と同様、補助金を提供する業績が相応しいのかどうか、付加価値を一定の集約式で業績評価するKPIを使用する傾向が利益指標と同様に強くなってきた。
具体的には、付加価値の評価は会計上の利益と同様の集約式として売上―売上原価=売上総利益とし、さらにそこから販管費を控除した営業利益を評価し、その営業利益に人件費と減価償却費を足し戻した値を付加価値として=収益性として定義している。
これは学問上の付加価値論というよりも補助金審査行政のKPIとしてデファクトスタンダードとなってきたように伺われる。
これが全ての付加価値の計算式として一律に決められているわけではないが、この計算式が概ね共通して使われているように見受けられる。
会計上の営業利益に何故人件費をわざわざ足し戻して下駄を履かせ、更に減価償却費まで下駄を履かせるのか?考えるのだが、筆者の解釈ではあるが、人件費は企業の要員の努力の汗の結晶であり、これを控除して会計上の収益性を低めるのは付加価値を評価する趣旨に反するからということで情理を加味して足し戻させたのであろうと好感して言る。一方、減価償却費は企業の生産行為の道具である設備の消耗に対する収益性の低下を補足するプレミアムあろうと筆者はこれまた好感している。従って冷徹な会計学の利益よりは、付加価値は会計学による収益性だけのご評価よりは血と汗がにじむ経営努力に対する減益や設備の消耗に対する現場視点、産業育成視点が加味された人間味暖かいKPIになっているので好感している。まあ、減価償却費などのオマケは、その分金銭の実玉でご褒美する訳ではないので、世間的にも通りがよいであろう。従って、会計的な視点では、営業利益も付加価値もほぼ同じ趣旨のKPIであると割り切ってもよいであろう。
なお、付加価値とは、管理会計学の視点では、補助金の要綱で示すような営業利益+人件費(役員報酬含む)+減価償却費で決められるような実務的な数値で定義されるわけはないことをここで補足しておきたい。付加価値の定義は、種類が多いし、ややこしいので好きではない。
以下は最低限の敬意は表して置かなければならない付加価値の集約式である。
(1)粗付加価値:総生産額から原材料費・燃料費・減価償却費などを差し引いた額を純付加価値と定義する
(2)粗付加価値から減価償却費を差し引かない付加価値を粗付加価値という。
(3)加算法(日銀方式):経常利益+人件費+賃借料+減価償却費+金融費用+租税公課と定義している、即ち経常利益に人件費+賃借料+減価償却費+金融費用+租税公課を足し戻した費用を加算した積上額で定義
(4)中小企業庁方式:売上高から外部購入価値(材料費、買入部品費、外注加工費)を減算した控除額で定義 補助金制度で計算する付加価値の」定義の原型である。
(5)補助金審査で簡便式を書き加えると営業利益+人件費+減価償却費となるので
(6)財務諸表をベースにした計算の利便性は、上記の(5)が高いと言える。
3.国際取引におけるEPAの規約における付加価値の評価について(以降は前メルマガ文章を再掲)
近年、地政学的な経済圏形成に覇権を掛ける数々のメガEPAが擁立されてきた。
話題を集めたTPPの趨勢が注目をあつめたが、米国が離脱してからは日本がアジア太平洋地域でその実質的な後継者として地位を継いだ感がある。また日欧EPA、日豪EPA、2022年現在のEPA締約国を一覧すると(1)シンガポール、(2)マレーシア、(3)タイ、(4)インドネシア、(5)ブルネイ、(6)アセアン諸国、(7)フィリピン、(8)ベトナム、(9)インド、(10)モンゴル、(11)オーストラリア、(12)メキシコ、(13)チリ、(14)ペルー、(15)スイス、(16)日欧EPA、(17)日本英国EPA、(18)中韓も参画するRCEPと目白押しである。
4.各国にとってEPAの活用メリットは、輸入先の関税負担の削減による輸出の促進と輸出取引の収益性向上である。
(1)輸出ビジネスにおける収益性向上
各国における輸出面では、EPA協定上、輸出品目が輸入国側から見てEPA協定上適格品であれば基本的に輸入関税は免除される。輸入先は、輸出先の顧客であるから顧客は通常の関税分が安く購入できるので、輸出業者としては売上高向上のフォローの風となる。
(2)輸入ビジネスにおける収益性向上
輸入は、輸出と裏腹の関係でのメリットがある。説明が重複するが輸入面でも輸入品目がEPA適格品であれば基本的に輸入関税は免除される。製造業者であれば輸入材料や部品が安く売れるので、製品化後の国内販売でも輸出販売でも製造原価が削減できる効果がある。
(3)EPAにおける輸入関税免税効果の適格要件
しかし輸出入当事者の所在地両国にEPA協定が締結されていれば無条件に輸入関税が免除になるわけではない。
以下EPAにおいて輸入関税が免税となる適格条件について説明する。
1)輸入品目の原産性の有無
輸入品目が輸入国のEPA基準から見て、“原産性”が適格であることが関税免除の条件として必要である。原産性があるとは、EPAを結んでいる国々の産物であることを言う。
原産性の審査は、(1)輸出者自身による自己証明制と(2)商工会議所など第三者による証明制適用の2種類があるが、今後のEPAの制度的な動向から輸出者による自己証明制度の利用が望ましいと考えられる。輸出後の輸入国税関からの事後監査があるので、輸入国市場からの引合段階で自社の製造物が客先国のEPAを通過できるかどうか製品仕様製作段階で自己審査できなければならない。不正が露見すれば、数年後に巨額の罰金を支払わなければならないリスクがあるからである。現状では日豪EPA、TPP11,日欧EPAでは自主証明が可能である。また自己証明制度では、第二種原産地証明書と言われる特定原産地証明書を発行できるのは生産者、輸出者、輸入者、代理する通関業者とされている。前述の通りこれからの時代のEPAでは輸出者(生産者)がICTを活用して審査基準のチェックを行い、その結果を以てEPA輸出申請を通すスタンスを構えることが必須である。以下、適合要件の主だった種別を簡潔に記載する。
2)EPA取引の適用条件審査要件
EPA輸入取引で輸入品目の適格性は基本的に輸入港の税関が審査する。適用条件の審査には4つのパターンがある。パターンを順不同で説明する。
1つは、完成品目に対する構成部品等の関税分類(HSコード)変更基準である。
輸出者の部品表があれば、チェックも分かり易い。
1-1.品目の完成時の関税コード(HSコード)と、使用した部品等の関税コードを対照して異なっていること。即ち、適格性がある部品を加工して適格性がある製品にコードが異なるほどに加工が施されていること。生産事業者がICTを活用して自主審査するには、我が国のHSコードは9桁あるが、そのうち上位NN桁の範囲で、材料や部品と完成品のコードが違っていれば確かに加工された製品であることが立証できる確証となるという考え方である。逆に差異が無ければ、有効な加工がおこなわれなかった製品として見なされ関税免除の適格性なしとなるわけである。
2つ目は、付加価値基準である。
2-1.製品の加工活動が、EPAから見て付加価値のある加工活動であること。EPA基準から見て付加価値のない加工活動は、いくら高額の原価が費やされてもEPAが適格とする付加価値の累計額は合格点まで積みあがらずに関税の免除対象とはならない。付加価値が認められない加工活動には次に様な例がある。冷凍、乾燥、塩水漬け、切断、塗装、混合、張合わせ、組立てたものの分解、仕分け、マーキング、ラベル付け。セット化、瓶詰や箱詰めなどの一読して単純な軽作業が該当するようだ。
2-2.加工による付加価値額率の大きさで関税免除の適不適を判断する。
輸出品目の加工プロセスの原価明細を見て、加工明細がEPA視点で付加価値のある加工を行っており、かつ付加価値額の合計が、原価全額のNN%(例示)など適用EPAで指定された閾値を超えていること(NN%は地域別EPAごとに異なるので個別に確認が必要)
3つ目は、加工工程累積数による審査基準である。
EPAが○○品目について規定している累積工程数を踏んで製造されているかの基準である。(これも地域別EPAごとに品目別に)異なるので個別に確認が必要)
その他上記以外の規定があるが既定の詳細は説明を省略する。
4つめは積送基準のクリアが必要である。
輸出地から輸入地までの積送ルートの適格性が審査される。(1)直接輸送と(2)第三国経由も含む諸条件で積送基準の適格性が審査される。第三国経由の場合は、経由地で実質的な加工がされていないこと&第三国での税関での管理下にあることなどの条件が課されている。
(4)EPA活用と製品製造原価管理の基盤整備留意点
EPA活用による製品情報の基盤整備要件として、EPA輸出申告で特定原産地証明書発行に必要な
(1)輸出品の製品と構成品のHSコード対比表の添付および
(2)輸出品の製品構成の付加価値明細表および
(3)製造工程フロー図
の整備が必須要件であろう。
今までは、通関業者からの派遣サービスや輸出入手続きに手慣れたプロが手作業で手際よく作成されていたものと思われるが、今後は自社の生産管理システムのドキュメントや製品別原価明細書からのデータ連携で効率的に作成する仕組みづくりが期待される。
1)完成品対部品のHSコード対比表作成
これは部品表を使用している製造業では、部品表からの編集で作成が可能と考えられます。但し英文で作成することが必要でしょう(以下同様)
2)製品構成付加価値明細表作成
付加価値基準による完成品の原産性を疎明する加工付加価値明細表作成これは、工程別加工明細書や原価明細表を作表している製造業では、少し帳票の加工編集が必要ですが情報連携で作成が可能と考えられる。
項目名では
(1)工程名 (2)加工内容 (3)付加価値性有無、(4)材料原価または作業工数×予定賃率 (5)累計付加価値率が必要であろう。
3)製造工程フロー図作成
国内外の税関等の審査員が可視化できるように輸出入品の原産性を目視で疎明する製造工程フロー図が必要である。製造仕様書からのデータ連携による自動作成が求められる時代である。
(5)EPAの付加価値累積要件と我が国の製造原価計算のギャップ
ここまでのご説明をご一読されて方はEPAが求める製品の付加価値累積要件と我が国の製造原価計算とは似て非なるものがあることがお分かりと思う。
(1)EPAが求める付加価値値≠原価費目
我が国の原価計算は、昭和37年に大蔵省が定めた原価計算基準を60年余にわたって踏襲し続けており、製造業も例外なく、これを準用している。
原価計算基準の費目明細=生産資源の購入額明細表で、製品にどのような付加価値を加えたかを税関の審査員に教えてくれる付加価値の記載を要件とはしない。従って、製造原価計算明細は、EPAが関税免除の条件としない原価明細を含んでしまうので事後不適格な申請をしたとして罰金を科せられる対象となる。
また、販売促進費や港湾までの輸送費は製造原価明細に入れないので付加価値からは漏れてしまい付加価値の点数稼ぎには不利になるリスクがある。
あるべきプロセスとしては、手作業なら製造業が原価計算時に、加工明細のEPA適用要件を踏まえて、加工活動明細毎に付加価値性有無を入力する必要がある。DX化の対象とするなら加工活動明細毎に付加価値性有無を事前登録することが有効でしょう。またEPA 申請に対応した付加価値明細表作成をシステム化し、その中で従来の製造原価計算を統合的に行うことが有効と考える。
EPA適用付加価値明細表の範囲>製造原価明細表の範囲との認識が必要であろう。
以上
EPAにおいては多国間における商取引の地域別サインによって、必ずしも画一的な取引条件で協定が結ばれているわけではないが、概ね似通っているプロトコルで条約がほぼ標準化されている。その中で、背骨ともいえる関税の課税標準は、製造原価ではなく付加価値の金額が適用されていることに注目したい。
付加価値の金額は、原価の多寡ではなく、生産物の付加価値を基準に課税標準が設定されている。輸入国の税関では、輸入物の付加価値性の有無について、関税免除の審査がなされている。従って、生産を行う輸出メーカーにおいては、原価の視点ではなく、生産物に付加価値があるかどうかの視点で関税免除を目指して生産を行い、かつ輸出促進のために生産戦略を図るべき仕組みになっている。単純作業の生産物など、付加価値性の低い生産物は、関税は免除されない。従って、付加価値のない生産物は関税免除の対象にはならない。ここに「付加価値とは何か」の定義を再認識する必要がある。
【会長コラム】
『すべての事象に通じる成功の手順』
ICT経営パートナーズ協会 会長
木村 礼壮
今回は、個人的に最近感じたことを書いていきたいと思います。
今月は、すべての事象には成功の手順があるとことさらに感じた月でした。
今月から国土交通省にてEBPM及びPMO支援のコンサルティング活動をしています。(EBPMとはEvidence Base Policy Makingの略でエビデンスに基づいて政策を立案すること)です。
日本の政府では限られた資源(予算等)を有効活用するために政策策定時に課題・目的・手段・効果の論理的繋がりを明確化するためにエビデンスデータに基づく取り組みを急ピッチで進めています。
とは言え、いきなりEBPMを政策策定担当者が腹落ちした状態で修得できる訳ではないので、データ解析及び企画策定の専門家が支援することになり、その活動を行っています。
当方はEBPMに基づいて策定された政策のロジックモデルを検証しています。
大まかに言うとロジックモデルは以下が含まれています。
目的の明確化:
エビデンス(データ解析結果)により導き出された課題を基に現状の姿(AS IS)をどのようなあるべき姿(TO BE)に変えていくべきかを導き出します。
目的達成のための手段の決定:
AS IS形をTO BE形に変えるために何を行うべきかをエビデンスベースで選定していきます。
目的達成時期の決定:
目的達成までをいくつかの段階に分けて各段階の完了時期を決定します。
投資対効果の算定:
エビデンスベースで効果を定量的に算出して、目的達成に必要なリソースとの対比をします。
(備考:経験上一番良く抜け落ちている作業として、目的の明確化のためには対象範囲(スコープ)を明確化することが挙げられます。スコープが明確でないと利害関係者間での会話自体が成り立っていないにもかかわらず、そのことに気づきもしない事態も起こり得ます。この点は注意が必要です。)
昨今では、何をするにもITの力が必要ですので、目的達成のための手段として、情報システムの利用が次の検討課題となり、ITプロジェクト計画書が作成されます。そのITプロジェクト計画書でも上記と同じような手順により作成されます。
当方はITプロジェクト計画書の検証も行っていますが、その計画書の中身にはロジックモデルと全く同じ要素が含まれています。手段がITソリューションとなっており、その中身が詳細に記されているだけが違いと言っても過言ではないでしょう。
つまり、すべての企画・計画を策定・実施していくPDCAのサイクルを回すためには成功の手順があるということが分かります。
ここで問題なのが、何を実行すれば良いのか(What to do)が分かっても、どうやって実施する(How to do)が分からなければ成功の手順を完遂することはできません。
そのHow to doの部分を含めて企画・計画をエビデンスベースで策定する方法論があります。私は、35年以上企画・計画策定について研究してきており、様々な情報を収集して、様々な方法を試してきました。その過程で様々なツール(ファシリテーション支援、ビッグデータ解析等)やテンプレートを開発してきてSUSDという方法論を10年以上前に確立いたしました。
その方法論は日本の大手企業及び欧米のグローバル企業におけるIT戦略策定に応用して大きな成果をあげています。
更に、そのSUSDという方法論(メソドロジ)の内容を説明すると日本でも一・二を争う偏差値の自治医科大学大学院で教鞭をとることを依頼されたり、厚生労働省で調達仕様書の策定支援を依頼されたり、政府外郭団体から支援を依頼されたり、あらゆる方面からSUSDを適応した業務の依頼があります。
当然、一般企業からも各種依頼があります。
そのSUSDについてご興味があるかたは、是非、当協会のお問合せフォームからご依頼事項をポストして頂けますと、幸甚でございます。
最後までお読みいただきまして、どうもありがとうございます。
P.S.
11月より東京商工会議所様経由で「中小企業向けIT企業との上手な付き合い方」
無料セミナーの配信予定でございます。
【巻頭コラム】
『EPA(経済連携協定)活用による収益力向上と原価管理変革要件』
国際会計・財務サポート分科会
青柳六郎太(中小企業診断士・税理士)
1.円安基調が進む中でのこれからの製造業の輸出戦略
コロナ禍で生き残りを描ける我が国の製造業では、目下、輸出ビジネスには有利な経済環境として円安基調が進んでいる。(材料輸入は逆風であろうが)
一方の海外取引のビジネスチャンスをフォローする機運として近年世界の主要経済圏で樹立が進んだ有力な経済協定(EPA)の活用による収益性獲得機会がある。
本講ではこれをテーマとして取り上げたい。
2.2022年現在のEPA締約国一覧
(1)シンガポール、(2)マレーシア、(3)タイ、(4)インドネシア、(5)ブルネイ、(6)アセアン諸国、(7)フィリピン、(8)ベトナム、(9)インド、(10)モンゴル、(11)オーストラリア、(12)メキシコ、(13)チリ、(14)ペルー、(15)スイス、(16)TPP11、(17)日欧EPA、(18)日本英国EPA、(19)RCEP
3.EPAの活用メリットは、輸入先の関税負担の削減による輸出の促進と収益性向上である。
(1)輸出ビジネスにおける収益性向上
輸出面では、EPA協定上、輸出品目が輸入国側から見てEPA協定上適格品であれば基本的に輸入関税は免除される。輸入先は、輸出先の顧客であるから顧客は通常の関税分が安く購入できるので、輸出業者としては売上高向上のフォローの風となる。
(2)輸入ビジネスにおける収益性向上
輸入は、輸出との反対側で考えれば良い。説明が重複するが輸入面でも輸入品目がEPA適格品であれば基本的に輸入関税は免除される。製造業者であれば輸入材料や部品が安くなり、製品化後の国内販売でも輸出販売でも製造原価が削減できる効果がある。
(3)EPAにおける輸入関税免税効果の適格要件
しかし輸出入当事者の所在地両国にEPA協定が締結されていれば無条件に輸入関税が免除になるわけではない。
以下EPAにおいて輸入関税が免税となる適格条件について説明する。
1)輸入品目の原産性の有無
輸入品目が輸入国のEPA基準から見て、“原産性”が適格であることが必要である。原産性の審査は、(1)輸出者自身による自己証明制と(2)商工会議所など第三者による証明制適用の2種類があるが、今後のEPAの制度的な動向から輸出者による自己証明制度の利用が望ましいと考える。
輸出後の輸入国税関からの事後監査があるので、引合段階で自社の製造物が客先国のEPAを通過できるかどうか製品仕様製作段階で自己審査できなければ数年後に巨額の罰金を支払わなければならないリスクがあるからである。EPA規約違反の罰金に対する損害保険があるかどうかは筆者は知識がない。さて現状は日豪EPA、TPP11,日欧EPAが自主証明が可能である。
また自己証明制度では、第二種原産地証明書と言われる特定原産地証明書を発行できるのは生産者、輸出者、輸入者、代理する通関業者とされている。前述の通りこれからの時代のEPAでは輸出者(生産者)がICTを活用して審査基準のチェックを行い、その結果を以てEPA輸出申請を通すスタンスを構えることが望まれる。以下、適合要件の主だった種別を簡潔に記載する。
2)EPA取引の適用条件審査要件
EPA輸入取引で輸入品目の適格性は基本的に輸入港の税関が審査する。適用条件の審査には4つのパターンがある。パターンを順不同で説明する。
1つは、完成品目に対する構成部品等の関税分類(HSコード)変更基準である。部品表があれば、分かり易い。
1-1.品目の完成時の関税コード(HSコード)と、使用した部品等の関税コード間とを対照して異なっていること。
即ち、適格性がある部品を加工して適格性がある製品にコードが異なるほどに加工が施されていること。生産事業者がICTを活用して自主審査するには、我が国のHSコードは9桁あるが、そのうち上位NN桁の範囲で、材料や部品と完成品のコードが違っていれば確かに加工された製品であるとの確証となるという考え方である。
逆に差異が無ければ、有効な加工がおこなわれなかった製品として見なされ関税免除の資格なしとなるわけである。
2つ目は、付加価値基準である。
2-1.製品の加工活動が、EPAから見て付加価値のある加工活動であること。
EPA基準から見て付加価値のない加工活動は、いくら高額の原価が費やされてもEPAが適格とする付加価値の累計額は合格点まで積みあがらずに関税の免除対象にはならない。
付加価値が認められない加工活動には次に様な例がある。冷凍、乾燥、塩水漬け、切断、塗装、混合、張合わせ、組立たものの分解、仕分け、マーキング、ラベル付け。セット化、瓶詰や箱詰めなどの一読して単純な軽作業が該当するようだ。
2-2.加工による付加価値額率の大きさで関税免除の適不適を判断する。
輸出品目の加工プロセスの原価明細を見て、加工明細がEPA視点で付加価値のある加工を行っており、かつ付加価値額の合計が、原価全額のNN%(例示)など適用EPAで指定された閾値を超えていること(NN%は地域別EPAごとに異なるので個別に確認が必要)
3つ目は、加工工程累積数による審査基準である。
EPAが○○品目について規定している累積工程数を踏んで製造されているかの基準である。(これも地域別EPAごとに品目別に)異なるので個別に確認が必要)その他上記以外の規定があるが詳細は省略する。
4つめは積送基準のクリアが必要である。
輸出地から輸入地までの積送ルートの適格性が審査される。
(1)直接輸送と(2)第三国経由も含む諸条件で積送基準の適格性が審査される。
第三国経由の場合は、経由地で実質的な加工がされていないこと&第三国での税関での管理下にあることなどの条件が課されている。
(4)EPA活用と製品製造原価管理の基盤整備留意点
EPA活用による製品情報の基盤整備要件として、EPA輸出申告で特定原産地証明書発行に必要な
(1)輸出品の製品と構成品のHSコード対比表の添付および
(2)輸出品の製品構成の付加価値明細表および
(3)製造工程フロー図
の整備が必須要件であろう。
今までは、通関業者からの派遣サービスや輸出入手続きに手慣れたプロが手作業で手際よく作成されていたものと思われるが、今後は自社の生産管理システムのドキュメントや製品別原価明細書からのデータ連携で効率的に作成する仕組みづくりが期待される。
1)完成品対部品のHSコード対比表作成
これは部品表を使用している製造業では、部品表からの編集で作成が可能と考えられます。
但し英文で作成することが必要でしょう(以下同様)
2)製品構成付加価値明細表作成
付加価値基準による完成品の原産性を疎明する加工付加価値明細表作成
これは、工程別加工明細書や原価明細表を作表している製造業では、少し帳票の加工編集が必要ですが情報連携で作成が可能と考えられる。
項目名では
(1)工程名 (2)加工内容 (3)付加価値性有無 (4)材料原価または作業工数X予定賃率 (5)累計付加価値率が必要であろう。
3)製造工程フロー図作成
国内外の税関等の審査員が可視化できるように輸出入品の原産性を目視で疎明する製造工程フロー図が必要です。製造仕様書からのデータ連携による自動作成が求められる時代であろう。。
(5)EPAの付加価値累積要件と我が国の製造原価計算のギャップ
ここまでのご説明をご一読されて方はEPAが求める製品の付加価値累積要件と我が国の製造原価計算とは似て非なるものがあることがお分かりと思う。
(1)EPAが求める付加価値値≠原価費目
我が国の原価計算は、昭和37年に大蔵省が定めた原価計算基準を60年余にわたって踏襲し続けており、製造業も例外なく、これを準用している。
原価計算基準の費目明細=生産資源の購入額明細表で、製品にどのような付加価値を加えたかを税関の審査員に教えてくれる付加価値の記載を要件とはしない。
従って、製造原価計算明細は、EPAが関税免除の条件としない原価明細を含んでしまうので事後不適格な申請をしたとして罰金を科せられる対象となる。
また、販売促進費や港湾までの輸送費は製造原価明細に入れないので付加価値からは漏れてしまい付加価値の点数稼ぎには不利になるリスクがある。
あるべきプロセスとしては、手作業なら製造業が原価計算時に、加工明細のEPA適用要件を踏まえて、加工活動明細毎に付加価値性有無を入力する必要がある。
DX化の対象とするなら加工活動明細毎に付加価値性有無を事前登録することが有効でしょう。またEPA 申請に対応した付加価値明細表作成をシステム化し、その中で従来の製造原価計算を統合的に行うことが有効と考える。
EPA適用付加価値明細表>製造原価明細表の認識が必要であろう。
以上
EPA=Economic Partnership Agreement.経済連携協定の略
HSコード=International Convention on the Harmonized Commodity
Description
and Coding Systemの略
以上
【巻頭コラム】
『業務遂行スキルのOS「聴く力」』
株式会社真経営 代表取締役
早川 美由紀
「さぁ、また明日から1週間が始まるぞ!」という日曜日夜のTV番組に『日曜日の初耳学(TBS系)』があります。
その中でも、今を時めく俳優、実業家や学者など様々なジャンルの方々をゲストに、林修先生がロングインタビューをするコーナーが私は大好きです。
普段は知ることのできない、ゲストの経験に紐づく仕事への向き合い方や生き様がわかり、更に魅力が輝くからです。
その魅力を引き出しているのが、インタビューアーの林先生です。
・ゲストの話を自分の言葉に置き換えながら、丁寧に聴いている
・ゲストへの好奇心とリスペクトで目を輝かせながら聴いている
林先生のこの「聴く力」が、ゲストの話を掘り下げて、視聴者にとって痒いところに手が届くインタビューとなっている所以ではないかと思うのです。
ビジネスでも、「聴く力」は重要なスキルと言えます。
上司からの差し戻し指示、顧客からの仕様変更など、社内・社外業務に関わらず、スタート時点でしっかりと聴けていないことが原因で、生産性を下げる事象が発生してしまうことが少なくありません。
「上司が全然わかってくれない」
「あのお客は途中で無理ばかり言う」と
相手のせいにするのは簡単ですが、そこで思考停止してしまうと成果を上げることも本人が成長するもできなくなってしまいます。
ところで、業務遂行スキルは大きく分けて2つに区分ができます。
業種や職種を問わず、転用応用可能な「ポータブルスキル」と特定の業種や職種について専門的に必要とされる「テクニカルスキル」。
コンピュータで言えば、この2つのスキルはOSとアプリの関係。
せっかく、新たなアプリ(テクニカルスキル)をどんどん搭載しても、OS(ポータブルスキル)がお粗末だと、うまく機能しない(現場で成果が上がらない)ということが起こり得えます。
「聴く力」は重要なポータブルスキルの1つ。
(ポータブルスキルには、論理的思考力やプレゼンスキル、計画力などなど他にもたくさんありますが。)
たとえ、どのような会社に所属していようと、営業職でも、SEでも、事務企画職でも他者とのつながりがなく100%自己完結してしまう仕事はありません。
仕事には必ず前工程と後工程が存在します。
「はたらく」とは「端(周囲)の人を楽にすること」と言われます。
相手の真のニーズを正しく捉え、相手を楽にする(課題解決する)には、まずは「聴く力」が重要なスキルであると言えるでしょう。
以上
【会長コラム】
『良い状態に身を置くために』
ICT経営パートナーズ協会 会長
木村 礼壮
昨今、“共創”という言葉を耳にする機会が増えてきたと感じます。
共創とは組織単体ではできないようなことも他の組織と協業して推進することで目的を達成していくことかと思います。共創の形態も以下のように様々かと思います。
1. 他社との連携・協業
2. 顧客との連携・協業
3. 他社と顧客との連携・協業
4. 顧客同士の連携
共創の目的が顧客への提供価値の最大化にあるとすれば、顧客との共創が最重要と考えます。
特にDX化等のIT導入が必要な際には顧客とIT提供側が一体となって推進することが重要であることは何十年も前から言われていました。顧客が望むことをIT提供側の企業が顧客と一緒に実現することが重要だということは誰でも分かっていることかと思います。 そして、その一緒に協力し合う工程もより上流工程から始めることで効果が高まることもよく知られていることかと思います。
最近ではDX化が流行の言葉になっていますが、顧客と一緒になってイノベーションを起こすために企画の段階から市場データ解析等にIT技術を利用して顧客と一緒になってDX化企画を作成するような工程も共創の場になりつつあると思います。
この共創を実現するための最重要項目は、目的の明確化にあると感じています。多くのステークホルダーが参画するので、全員が同じ方向を向く必要があります。目的も1つだけでは無いのが通常かと思いますので、目的項目に優先度・重要度を設定する必要があります。
目的を明確化することにより、ブレがなくなり参画メンバ全員が同じ方向に向かって力を発揮することになります。しかし、それだけでは不十分で各々のメンバが自発的に創造的活動を展開することが重要です。
そして、その目的達成のための方法を細分化して具体的な取り組みに落とし込み、最終目的というビッグピクチャーを実現するためのマイルストーンを設定していくことになります。
取組を実行する際には常に実施したことに対するフィードバック(特に顧客からの)を入れて改善を繰り返していくことが肝要です。
それは、昨今話題のウェルビーイング(Well Being)の考え方と一致しています。ウェルビーイングは良好な状態を意味しており人の身体も心も健康で幸せを感じている状態です。(個人的な解釈では特に心の健康に軸足があるように思います。)
欧米では働く環境を成果主義からウェルビーイング主義への変換が大きなうねりとなっているとのことですが、幸せと感じている人はそうでない人と比べて創造性が3倍、労働生産性は31%高いということが研究結果としてでています。寿命も7.5年~10年程度長いとのことです。
企業でウェルビーイングを達成しようとした際に最初に必要なことはウェルビーイング企業を目指すという目的を明確に宣言することだそうです。当たり前ですが、ウェルビーイングは経営陣だけで実現できるものではありませんので関係者全員の協力が必要です。そして、メンバの絆を深めるためのコミュニケーションの活性化により、情報共有から共通認識を創生していくことになるそうです。それにより、自発的に各々が創造性を発揮して目的達成に動きだすとのことです。
そして、その活動中に常にフィードバックを入れていくことが肝要とのことです。
まさにDX化の共創と同じステップを踏んでいると思います。ウェルビーイングは何も1企業内の取組に限定されません。ウェルビーイングとDX化共創を同時に達成することができれば、鬼に金棒という状態かと思います。
おなじ方法で達成していくことができるので、参画メンバに理解して貰いやすい取組です。
ただ、何をするべきかが分かってもどうやって実行するかが分かっていないと実際には実現できません。
そのノウハウを方法論として確立したものがSUSD(Super Upper Stream Design)です。
次回のメルマガ(10月号)では、そのノウハウの内容を記載していきたいと思います。
稚拙な文章をここまでお読み頂きまして、どうもありがとうございます。
ICT経営パートナーズ協会 会員
ホームページ担当 細野 秀主
■令和2年通信利用動向調査(企業編)によると、有効回答数2,217企業のうち自社のホームページ(若い人や専門家はWebサイトという表現を使います)を開設している会社の割合は全体で90.1%、いずれの業種でも開設率は85%を超えています。
多くの会社がホームページを開設していますが、本当に有効に活用できていると胸を張って言える会社はとても少ないのではないかと考えます。
現代の経営資源は、ヒト(人)・モノ(物)・カネ(金)・情報・時間・知的財産と言われています。
経営がうまくいっている会社は、この経営資源をうまく配分して実行するという事をホームページの運用・管理においても出来ています。
■一般の人から見た現在のホームページの状況を説明すると、昔はホ―ムページが情報発信の中心でしたが、ECサイトのような販売を目的としたホ―ムページでない限り、最後に見られる場所という位置づけに変わっています。
それは検索エンジンが高度化したことや、ソーシャルネットワークサービス(SNS)などで個人が情報発信できる仕組みが出来て、まず口コミや評価などを検索・評価して、必要性を感じて会社のホームページを見に来るという流れになってきているからです。
会社のホームページで会社の概要、業務内容、取扱商品、取引先など、その会社が大丈夫かを調べます。
そして製品や商品が受注生産品とかでなければ、安く売っている所はないかと、また検索でさがしたりします。
■ホームページ活用に関するヒントですが、現在、ホームページでやっていないのであれば、お勧めしたいのは次の2つです。
1つ目はGoogleアナリティクスを使ってアクセス解析をすることです。
目的のページが見られているか、直帰率:60%以下、閲覧ページ数:2ページ以上、ページ滞在時間:1分以上を目安に実現、出来ているかを確認し、改善の足掛かりにしましょう。
2つ目はアクセスしてくれたお客様とのコンタクトを取る工夫をするということです。製品や商品の説明をターゲット顧客に分かりやすい文章で書く、会社や担当者の人柄が見えるように書く、会社としてのオリジナリティーを認識させる。
そしてお客様に参考意見を聞くことが出来るようなページを作って欲しいと思っています。実際にホ―ムページからリストが取れた会社は、お得意様限定の新商品お披露目会、ユーザー会などの対面イベントで意見交換して顧客をしっかりつなぎ止
め、お客様の意見から生まれた商品ですという名目で、お客様からの紹介でビジネスを延ばすというような好循環を作り出しています。
■最後に検索エンジンAI化の最新動向について少し触れておきます。
最近はスマートフォンの音声入力での検索も増えてきたので、「この辺のランチ」というようなキーワードで検索されると、検索エンジンのAI機能で店舗情報が出るようになりました。
ということで、Googleマイビジネスで会社や店舗情報などをしっかり管理することと、良い口コミ情報を数件書き込んでおくというのが大切です。
■ホ―ムページとそれに関連する領域はとても広いので一度では説明しきれません。
また機会があれば、ホームページの構成方法や記事の書き方など、ご説明させて頂きたいと思います。
ホ―ムページ関することで疑問に思った点は、当協会でも相談を受け付けていますので利用して頂ければと思います。
以上
ICT経営パートナーズ協会 理事
本間 峰一
私は4社の研修会社で生産管理システム活用に関する有償研修講座の講師をしています。もともとは日刊工業新聞社の依頼によりはじめたもので、日刊工業新聞社の教室に集まっていただいて6時間の集合研修を実施していました。コロナ禍発生後は企業研修やオンライン研修も増えています。
研修内容は生産管理の専門用語解説から管理のポイント、システム運用上の課題など生産管理業務に関わる話です。
現在までに約250社の企業に受講していただきました。企業規模は三菱重工業殿のような大手企業から従業員数十人の中小企業まで様々です。受講者からは参考になったという声が寄せられています。
ところで、本研修にはITベンダからの参加がほとんどありません。製造業者の情報子会社の方は参加していただいていますが、ERPパッケージの導入や生産管理システムの構築をしているベンダからの参加は数社にとどまります。
なぜベンダ関係者の受講が少ないのかがよくわかりません。単純な伝票発行用のコンピュータシステムなら業務知識などなくてもシステム設計やシステム開発できますが、生産管理システムはそうはいかないはずです。
たとえば大半の生産管理パッケージはMRP(資材所要量計算)という計画計算ロジックをベースにしています。MRPの特徴と課題を知らないで、ERPを企業に導入しようとしてもうまくいくはずがありません。そもそもMRPは欧米の最終製品を計画的に作っている工場の部品手配用に作られたロジックですので、親会社からの受注や内示にしたがって生産する日本の受注生産型工場とは相性が悪く、様々な工場でトラブルを起こしています。
フィットギャップ分析をすれば、ギャップがありすぎてそのままでは使えないとなるケースも多いはずです。それにもかかわらず安易にERPを導入してトラブルになる企業が後を絶たないのは関係者の勉強不足のせいではないかと疑っています。
このままでは日本の工場の管理能力は低下する一方です。それでなくてもコロナ禍を契機に日本の多くの工場の生産が混乱しています。親会社からの注文や内示が大きく変動したり、電子部品や材料が納期通りに調達できないという工場も多いです。混乱の原因がIT関係者の勉強不足であっては困ります。
直近では5月25日に生産管理研修がありますので、生産系のシステム構築に関係している人は受講の検討をお願いします。
『会長就任ご挨拶』
ICT経営パートナーズ協会 会長
株式会社ドリーム IT 研究所 CEO
一般社団法人国際ヘルスケア・マネジメント機構 専務理事
木村礼壮
この度、2022年4月5日付にて、関元会長から当協会の会長のバトンを受け継がせて頂きました木村礼壮でございます。
日ごろは当協会に多大なるご支援、ご鞭撻をいただき誠にありがとうございます。
弊協会は、創設以来、顧客の価値向上のため様々な活動をしてまいり、下の特徴を持っております。
(1)専門性の高いメンバが多く集まる専門家集団:DX関連以外でも経営そのものの改革を推し進める専門家も在籍しております。
(2)ベンダ等からの影響を受けない中立的立場で顧客に寄り添った支援が可能でございます。
(3)顧客がIT導入をする場合、コンサルティングから導入、定着化、継続的改善までを一気通貫で顧客の立場でご支援できます。
ただ、当協会だけではできないこともございますので、様々な組織と連携をして顧客支援を行っていきます。今後は様々な外部組織との連携以外にも協会メンバ間の連携、顧客同士の連携といった様々な連携を強化していく所存でございます。
連携という言葉は共創と置き換えても良いかもしれません。協会内部の会員同士で共に新しい価値を創造していく、外部組織と更に大きな価値創出をして、顧客とも共創し、顧客同士の共創も支援していくことにより、価値の輪を広げていけると確信しています。
弊協会の顧客との共創は顧客ファーストであることはもちろんでございます。弊協会のスタンス目線で顧客企業の価値を最大化するお手伝いをさせていただければと存じます。
協会内の勉強会、分科会活動の活性化及び交流の機会を広げて協会内で培った価値創出スキルを十分に発揮する場をできるだけ多く得ることができるように、今後は見込み顧客創出活動にも積極的に取り組んでいきます。
今後、価値創出の共創の場を広げていく活動に皆様からの引き続きのご助言、ご指導、ご鞭撻のほどよろしくお願いいたします。
なお、当協会では、会員向け支援の充実を図っております。
■今年度から追加された個人会員のベネフィット
集客支援:
パートナー組織(ITコーディネータ協会等公的組織を含む)も利用した御社セミナーへの後援・案内。当協会のWebセミナーサイトに登録することも可能です。
(ただし、会員本人登壇のセミナーに限ります。)現在、東京商工会議所様との共催セミナーの話が進んでいます。
専門誌への記事投稿の橋渡し。(ただし、会員本人の執筆記事に限ります。)
営業支援:
各種交流会への参加。第一弾として5月24日城南信用金庫様主催のIT活用大相談会にブースをひとつ頂いています。
各種組織と連携したDX関連相談との橋渡し。
■今年度から追加された企業会員のベネフィット
集客支援:
パートナー組織(ITコーディネータ協会等公的組織を含む)も利用した御社セミナーへの後援・案内。当協会のWebセミナーサイトに登録することも可能です。現在、東京商工会議所様との共催セミナーの話が進んでいます。
専門誌への記事投稿の橋渡し。 (各種業種の専門誌への掲載の橋渡しをいたします。掲載をお約束するものではございません。)
営業支援:
連携パートナーを通じた各種交流会への参加。
会員交流会。
各種組織と連携したDX関連相談との橋渡し。(第一弾として5月24日城南信用金庫様主催のIT活用大相談会にブースをひとつ頂いています。)
その他様々な追加支援を予定しておりますので、メルマガ読者の皆様も、是非、共創の輪に加わって、価値創出のご支援を頂けますと幸甚でございます。
以上
日本マルチメディア・イクイップメント株式会社 代表取締役
ICT経営パートナーズ協会理事
高田守康
2023年は、建設業界だけでなく全産業の経理業務から紙が消失した「経理DX元年」として記憶されるでしょう。決して大げさな表現ではなく、企業間の商取引に関する法改正と新制度が束になって迫っているのです。
1.消費税のインボイス制度(2023年10月)
2.電子帳簿保存法が改正(2024年1月)
3.郵便法改正に伴うサービスの見直し(2021年10月)
1.インボイス制度という話題を、最近ひんぱんに耳にするようになりましたが、「そもそもインボイスとは何か?」と質問して正確に回答できる経営者はまだ少ないようです。 大手ITベンダー調べでは、「よくわからない」という回答が55%を占め、知っていても対策を検討しているのはわずか10%。まだ十分に浸透・理解されていないと思われます。
インボイス制度(適格請求書等保存方式)は、消費税納税の透明性を図る目的で、2023年10月1日に導入されます。インボイス制度の下では、税務署長に申請して登録を受けた課税事業者である「適格請求書発行事業者」が交付する「適格請求書」(いわゆるインボイス)等の保存が仕入税額控除の要件となります。インボイスには課税事業者を証する登録番号に加え、適用税率と税率ごとに区分した消費税額を記載します。したがって自社や取引先が消費税の課税事業者なのか、免税事業者なのか、が重要になります。現在は免税業者も、インボイス発行事業者の登録を受けるべきか?の検討が必要になります。
インボイス制度で企業に求められる対応は、大きく分けて2つあります。
(1) 管理の厳格化
・請求書の確認の際、「事業者登録番号」照合が追加
・軽減税率対象品目の仕入れの際、区分会計が必要
・免税事業者からの課税仕入れは適用外となる為、請求書を区分して管理
(2) 保管の重要性
・受け取った請求書だけではなく、発行した請求書も適正に控を保管
・コピー、ファイリングの手間が増大
・保管スペース、コスト増
・他の事業者から交付を求められた時のスムーズな対応
特に建設業法などの規定から紙の帳票が主流になってきた建設業界において、インボイス制度への対応を行うことで業務工数の増加・コストの増加となることは明白です。今後、インボイス制度に対応した会計ソフトの利用と企業間の電子商取引システムの導入が急務となります。
(参考)大手業務システムベンダーなど10社が設立発起人となり、2020年7月「電子インボイス推進協議会」が発足して、関係省庁等と連携して日本の電子インボイスの標準仕様の検討と共通利用できるシステム構築などの環境整備を進めています。→ https://www.eipa.jp/
2.「電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律」いわゆる「電子帳簿保存法」が改正され、請求書をはじめとした国税関係帳簿書類の電子データの紙出力保存が廃止され、検索要件を満たす電子取引データでの保存が義務化され、帳簿保存の面からも紙の帳票による経理業務の運用は難しくなります。なお改正電帳法は、2022年1月施行予定でしたが、2年間猶予されて2024年1月施行となっています。
今後主流となる電子取引の取引情報の保存は、施行日以降に電子取引を行った場合、当該取引情報を何らかの形で電帳法の要件に適正に従って、電子データで保存することが義務付けられます。電子データによる商取引の保存・管理について簡易になる反面、罰則はより厳しくなるため、JIIMA認証を取得したソフトウェア・ソフトウェアサービスを利用することがリスク回避に有効となります。
→ https://www.jiima.or.jp/
3.さらに、郵便法改正に伴うサービスの見直しによって、2021年10月から平日の翌日配達が1日遅れとなり、土曜日配達も廃止されました。例えば、月曜日が締め日の請求書を金曜日に投函しても、17時までの差し出しに間に合わなかった場合は、配達が翌週の火曜日になってしまい、締め日に間に合わなくなります。
今後、請求書は期日指定で受け取れる“電子データ”を指定する企業が急増することが予想されます。
インボイス制度の導入によって、仕入税額控除ができるのは課税事業者との取引だけになります。特に建設業界(IT業界も)に多い一人親方(フリーランスSE等)などの免税事業者に外注すると、消費税の仕入税額控除が計上できなくなります。発注側は当然、インボイスを発行できない免税事業者との取引を厳選し、さらに発注を回避することが懸念されます。もし一人親方が簡易課税による課税事業者を選択しても、登録番号が違っていたら仕入税額控除できないため、一人親方との取引が多い中小建設会社では、個々の登録番号の厳格な照合管理が必須となるため、紙の帳票による運用はさらに厳しくなります。
このように建設業界では、電子インボイスや電子商取引など「経理DX」は待ったなしの状況です。このタイミングで対応できない建設会社は淘汰される恐れが高いと思われます。経理DXに対応することで、重要な情報が素早く取り出せるようになり、経営判断のスピード化が実現します。更に決算業務の効率化、管理コストの低減、セキュリティーの強化など多くのメリットが生じます。
建設業界のみならず、2022年~2023年は、全ての事業者にとって「DX化に対応できるか否か」のターニングポイントになるでしょう。
以上
社)クラウドサービス推進機構 理事長
松島 桂樹
デジタル人材が何十万人足りないと叫ばれている。確かにデジタル化には人材が必要かもしれないが、それでDXが達成されるわけではない。つながらない個別デジタルをたくさん作っても、使えないデジタルのムダが積みあがるだけである。業務もデータ項目もバラバラ、さらにペーパレスといってFAXからPDF転送に変えても、つながらない。データが自動伝送され自動的に処理されることがデジタル化である。
企業間業務でのデジタルはもっと悲劇的である。価格一つとっても定価、上代、卸価格、数量値引き、出精値引き、キックバック、リベート、キャンペーン価格、バックマージン、割り戻し、原価に戻すか、販売費に計上するか、振込手数料はどちらが負担するのかなど、業界ごと、各社ごとの煩雑かつ定義もあいまいな商慣習と取引ルール、日本全体では、何10万社と何10万社とが企業間で確認・調整しなければつながらない。中小企業が、一社依存の下請け体質から脱し、複数の顧客と取引しようとすれば、その煩わしさは増大する。
デジタル化の前提は簡素化と標準化にある。大企業ごとの取引ルール、いわば方言を標準語に変えなければ、取引の会話は成り立たない。中小企業の共通EDIが作られてきたが、調整するための膨大な作業が必要なため、一定の成果は上がったとしても広がりは限定的である。つまりデジタル人材が増強されても、企業間のDX、すなわちEDIは一向に実現しない。
かつて ERPが日本に導入された時、ベストプラクティスと呼ばれた標準的な業務に移行するチャンスが一度だけあった。しかし、パッケージに業務を合わせたくないとして、カストマイズに次ぐカストマイズを繰り返し、煩雑な企業間業務を中小企業に押し付け、大量の負の遺産を作り出してしまった。
新型コロナ対策と同じようにDX緊急事態宣言を発出し、「日本経済の成長に不可欠なデジタル化を最優先に必要な対策は躊躇なく実行する」、とりわけ、国、業界あげて、企業間業務の簡素化、標準化、さらに自動化に取り組まなければならない。いかに大企業が人材投資やSDGsを語っても、それは株主対策でしかなく、日本にデジタル社会を実現させることにはつながらない。
従来から、アトキンソンらは、日本の低生産性の元凶は中小企業にあって、厚い補助政策が、中小企業をダメにし、退出すべき企業の延命を図ってきたと述べる。しかし、少なくとも、中小企業の生産性の低さは、経営者のせいでも、ITリテラシーの低さでもない。
「日本の中小企業の生産性が低いといわれているが、・・・社内より企業間のやり取りに無駄があり、中小企業にしわよせがいっている。・・・企業間がデジタルでつながり、業務連携が自動化できれば、中小企業の生産性は大きく向上する」(岐阜新聞2021.09.16、松島コメント)。
多くの地方の中小企業は大都市の大企業とばかり取引しているわけではない。まず、厳しい環境下にある地方の金融機関に、地域内経済圏域における取引のデジタル化のリーダーシップを発揮してもらいたい。受発注データ管理から電子インボイス発行代行・回収、そして決済業務に至る中小企業の基幹業務を支援するとともに、中小企業の資金運用サービスを組み合わせることで、経営者が安心して経営に専念できるようになる。中小企業のDXとは、安定した財務基盤と安心して接続できる業務連携基盤の上にビジネスモデル再構築を図ることである。
国が何かをしてくれるのを待っていては、DXの機会を逸してしまう。主体的に連携基盤を創り地域未来に向けたデジタル投資を行うことが真の地方創生につながる。
以上
ICT経営パートナーズ協会 理事
アスクラボ株式会社 社長
川嶋 謙
昨年1月のメールマガジンは、「上回る知恵の創出」というテーマでした。
「知恵」とは、過去の経験やあらゆるものを通じて得た情報や知識、学び等が積み重ねられたものであり、それらを記憶・保存することで、問題・課題解決などの必要なときに「知恵」として活用できると思っています。
弊社のビジネスの基礎となっている「知恵の創出」は、全スタッフの成功や失敗の経験をデータとして残し、問題・課題解決のために活用することですが、知恵の多くはハンデがあったからこそ生まれたと思っています。
1.後発ベンダーのハンデ
弊社は後発のベンダーという立場で会社を設立したため顧客はゼロでした。
そのためスタート時点から新規開拓の営業を経験してきました。そこで、弊社を選んでいただく大儀名分が必要でありメインテーマとなりました。その結果、特許を取得するオリジナリティのある商品開発ができたと思います。
2.付き合い・実績がないハンデ
お客様の立場から見ると、既存の取引業者を付き合いも実績もない会社に変えるというリスクは、窓口の担当者や管理者は負わない(負いたくない)のが自然です。
そのため、お客様の経営者層へアプローチすることとなり、結果、中小大企業問わず、多くの経営者層の方々と交流することができました。
3.資金がないハンデ
設立当時、資金が乏しいため細かな資金繰り計画が必要でした。資金の重要性を身に染みて感じていたため、無駄な経費の削減、売掛金の回収、不良在庫の削減に取り組み、毎月初日には仮決算ができる仕組みができました。その結果、机上の理論ではなく、現実の生きたBS・PLのスキルを得ることができました。
4.コネがないハンデ
設立当初から政治的なコネや強みがなかったため、好意的な味方を増やす必要性がありました。そのため「人の悪口は言わない」、「約束は守る」ということの重要性に気付くことができ、少しでも気持ちよく生きるため、人の欠点より長所を探す癖がつきました。
それが、弊社スタッフが10年以上毎日、日報情報を入力する風土形成につながり、その日報情報(テキストデータ)を基にAIリスク診断の仕組みができました。
現在の弊社のビジネモデル(トップアプローチ研修、AIリスク通知、SIビジネス)は、ある意味ハンデがあったからこそ生まれたと思っています。
以上
ICT経営パートナーズ協会 理事
アスクラボ株式会社 社長 川嶋 謙
私は、大学を卒業した後、岡山県の地方都市でビジネスの世界に入りました。
その頃出会った経営者の中には、地位や立場や年齢が上というだけで、自社の社員に対して、また私のような経験の少ない若者に対して、大きな態度・上から目線・命令口調という古い体質の方も多く、「経営者」という人たちに少なからず嫌悪感を持っていました。
もちろん、人物的に素晴らしい経営者の方々にも出会いましたが、当時経営者であった私の父に、そんな不満を話したところ、年配者を批判したところで何も変わらない、もし自分が経営者になったときに、自分自身がそのよう経営者にならないようにすればよいと諭されました。
その父の言葉を機に、ビジネス上の役職や権限はビジネスの範囲内でのことであり、ビジネスを離れたプライベートでは誰でも平等であり、役職や権限は関係ないという考え方が身につきました。
かなり昔のことです。著名な大企業の経営者A氏が経団連の会長候補に上がったのですが、結果は落選でA氏は落ち込まれたそうです。当時私はA氏と多少の親交があり、側近の方からの連絡でA氏に面会をしました。面会の冒頭A氏は「俺は外されたと」発言されたのですが、私は素直にA氏を気の毒に感じました。会長になれなかったのが気の毒なのではなく、日々・24時間、役職や権限から逃れられず、肩書きのない一般人になれるプライベートがないのが気の毒と感じたのです。
私はA氏に「故郷の町を歩いていて『Aちゃん!』と声をかけてくれる人はいますか?
それがなければ、本当の意味でプライベートに戻る場所がないというのは気の毒ですね」と話しました。
会社の役職や地位・権限には期限があります。その期限が切れたときに戻れる場所が必要であると私は思っています。戻れる場所を作るためにも、日常から役職や地位・権限の範囲とその期限を意識する必要があると思います。
これもかなり昔のことですが、身内が重い病気にかかり、その専門医が有名国立大学の教授で多忙なため、面会はおろかアポイントをとることさえ難しい方でした。何度もアポなしで大学の研究室を訪問しましたがやはり面会はできませんでした。ある時、大学の庭を手入れされている方がいて、その方に話し掛けると「私は用務員的な立場の者なので私には権限も影響力もありません」と言われました。しかし私は、大学を訪問するたびにその方を訪ねました。するとある日、「ほとんどの方は、権限が無いことを伝えると私の所へは来なくなりますが、あなたはそれを伝えても私に対する行動が変わらない。私でできることは協力します」と言って下さいました。
結果的に、その方のおかげで教授に面会が叶い、私の身内は治療を受けることができ、現在も元気にしています。
ビジネス上の役職・権限はプライベートに及ぶものではなくビジネス上のものでしかありません。また、無期限に続くものではなく期限があります。プライベートでは一個人として、役職や権限、年齢関係なく、誰もが平等でフラットな立場なのです。
以上
ICT経営パートナーズ協会 IoT推進分科会 委員長
飯郷 直行
メジャーリーグでの大谷選手のすさまじい活躍をTV中継で見る際に気が付きますが、投手の球速だけでなく、バッターの打球速度や打ち出し角度、飛距離等がリアルタイムで表示されます。場合によっては走者や野手の走る速度すら表示されます。
これらは、小型のレーダーや画像解析による一種のIoT技術の応用に思えます。そして、試合中のボールや、選手の動きのデータを見える化してオープンにすることは、メジャーリーグ全体の技術革新に貢献しているようです。バッターはすくい上げる打ち方で、ホームランが激増して、打球速度158キロ以上で角度30度前後に打てばホームランになると分かり、多くのバッターがこのゾーンを狙い始めました。大谷選手のホームラン量産の一因です。
オープン・シェア革命とは、この互いに技術をオープンにし、シェアすることで全体を高め合うことです。
ビジネスにおいても、生産技術等をIoTにより数値で見える化して、組織内でオープンにして関係者でシェアすることにより、働き方改革が実現して、組織全体を高め合うことになると思います。
技術は見て覚えろとか、盗んで身に付けろでは技術改革や働き方改革のスピードは望めません。オープン・シェア革命を起こすためには、まずはIoTを利用した各種情報の見える化です。そして、有効と思える見える化した情報は、ネットによりオープン化して、関係者でシェアすることにより、技術改革や働き方改革の新しいアイデアが生まれると思います。
以上
ICT経営パートナーズ協会 会長
関 隆明
9月1日にデジタル庁が設置され、菅首相をトップに平井卓也氏が新デジタル相に就任され、事務方トップのデジタル監に一橋大学名誉教授石倉洋子氏が就任されました。喜んでいる間もなく、3日に突然菅首相が自民党総裁選への不出馬を表明され驚かされました。慌ただしい総裁選挙戦の後、9月29日に総裁選挙の結果、岸田文雄新総裁が誕生しました。10月4日菅首相の任期満了と同時に、岸田総裁が新首相に選出され、直ちに岸田新内閣が誕生したのはご存知の通りです。
それに伴い平井前デジタル相が、新しく牧島かれんデジタル・行政改革・規制改革担当相へと引き継がれました。そして8日に岸田首相の所信表明演説が行われました。今回は新首相の所信表明の中で、私達の関係の深い部分で、特に気になる点について、 述べさせて頂きます。
首相は新しい資本主義の実現の中で、「分配なくして次の成長なし」、「成長の果実をしっかり分配することで、初めて次の成長が実現する」と述べています。しかし日本のGDP推移を見てみると、1996年~2018年の22年間で、3%成長していますが、人口も2%成長しているので、一人当たりGDPはほとんど変化ありません。
米国では同期間で名目GDPは155%成長し、1人当たりGDPも110%と倍増しています。英国は名目GDPが101%、一人当たりGDPは55%の伸び、フランスとドイツはどちらも名目GDP、一人当たりGDPの伸びとも数十パーセントとなっています。
更に上位1%の世帯が所有する資産が日本は11%、米国は約40%に達しています。 日本は上位の人達の占める割合も極めて低く、余裕もさほど無いように推測します。限られたパイを先ず分配し、成長との好循環を作ろうと言っても、パイは縮むだけではないでしょうか。
従って日本は「分配」ではなく、「分配に必要なパイを増やす」ことか先決だと思います。その為には例えば遅れているDXを徹底的に進め、生産性を高め、脱炭素など新たな分野で競争力を発揮し、得られた成果を分配することにより、初めて「成長と分配」の好循環が回り出せると考えます。
所信では成長戦略の第一の柱は、科学技術立国の実現だと述べています。しかし文部省「科学技術。学術研究所」の2018年(2017年2019年の平 均)のデータによると、研究分野ごとの引用数が上位1%に入る「トップ論文」の国別の順位で、日本は20年前の4位から、9位まで下がり、シェアは僅か2%となりました。因みに1位は米国でシェアは27,2%、2位は中国でシェアは25.0%となっています。欧州諸国はもシェアは数%あります。日本の低迷のきっかけは2004年の国立大学の法人化だと言われています。
大学院の博士号取得者は、日本は直近の18年度は人口100万人当り120人で、米英独の半分以下であります。米国では博士課程の学生の9割が、大学や国からの支援を受けており、日本は4割弱で年間の受給額も米国が日本の約4倍となっています。
以上成長戦略1つとっても、かつて優位に立っていた日本も長年の低落傾向がみられ、成長戦略に直接寄与することは難しく、むしろ投資を増やしていく必要があります。
この所信表明の中には我が国にとってやらなければならないことが、沢山盛られていると思います。しかし資金や人的リソースを考慮した場合、そう簡単には実行できないものが多く含まれていると思います。それぞれのフィージビリテイをしっかり検討し、プライオリテイづけをし、国民に示してもらうことが極めて重要ではないかと思います。
これまでも我が国で重要な政策を打ち上げながら、工程表もなく、いつの間にか消えてしまったことが少なからずあったと思います。取り上げられ、開始された政策は最後まで完遂し、成果をあげるよう努めなければならないと思います。
大分前の話になりますが、私自身マイナンバー制度のシステム化に関わっていた時、韓国も国民番号制度のシステム化に取り組んでいました。韓国では時の政権の政策が一度大統領に承認され、実行に移されたならば、例え政権が変ろうとも、最後までそれをやり続けるのが原則だと聞かされました。
言わずもがなだと思いますが、菅政権が打ち出した「デジタル」と「カーボンニュートラル」重視の政策は是非継続され、新政権の新しい具体策を追加し、国民に明示し、国を挙げて成果をあげることが、次の発展を生むと信じています。
当協会は今後牧島担当大臣の率いるデジタル庁の方針を良く理解し、DX実行の支援を着実に実行し、少しでも多く成果を挙げていくのが使命だと思っています。
今何よりも重要なのが、IT技術者不足をどう乗り越えていくかだと思います。経産省の予測によると、2030年に、我が国ではIT技術者が45万人、AI、IoTなど先進技術者が27万人不足するそうです。これら技術者は世界的に不足しており、海外からの調達は大変困難なことであり、何としても国内で解決しなければならない問題です。
当協会は10年前の発足当初から、ローコード開発(以下LCD)に注目し、ローコード開発コミュニテイと連携し、それによるシステム開発の効率アップに力を入れてきました。LCDの活用により、システム開発の所要工数を大幅に減らすことが出来ます。平均で3分の1、プログラムの特性により10分の1以上減らせた実績も出ています。LCDは少人数によるアジャイル開発や運用条件を十分考慮したDevOps開発にも適しています。
プログラム言語も知らない業務部門の人達も、プログラム開発が出来る為、従来ITベンダーに依存していたユーザ企業が、自主開発に切り替える動きが強まってきています。欧米に較べてユーザ企業に属するIT技術者数が少ない我が国では、IT技術者の代替要員が増えてくることは、大変有難いことです。現在ローコード開発コミュニテイと協力して、LCDの上流工程に当たる業務プロセスの改革ツールから、LCDツールにスムーズにつなげる作業を進めております。
今後さらに超上流の工程とのつながりも、検討していく予定です。LCD活用により浮いたIT技術者を適性によって、上流の付加価値の高い仕事に移転させたり、適性や能力によってAIやIoT要員に変えていくことも、可能になるだろうと思っています。
また効率の悪い従来のスクラッチ開発を、LCDによる効率的な開発へ積極的に変えていき、多数のSEを多重式に調達していく、旧来の多重下請け構造を崩していきたいと考えています。IT技術者がそれぞれ得意な技術領域を持ち、互いにフラットな関係で、ユーザが必要とする機能を果たしていける、オープン型の開発の仕組みに変えていくことにより、IT技術者の不足を少しでも改善していくよう、努めて行きたいと思います。
以上
株式会社真経営
代表取締役 早川美由紀
先日、日経新聞の特集「リスキリングに挑む」に、仕事のデジタル化による、女性の失業リスクは男性の3倍(IMFのリポートより)という記載がありました。
特に、未だ男性社員のサポート役として、定型業務の多くを女性が担っている日本においてはRPAやAIに置き換わられ、3倍以上の失業リスクがあると言えるでしょう。
実際、新型コロナウィルスの流行により、すでに女性の失業が社会問題となっています。女性こそ、仕事の変化に対応する「リスキリング(学び直し)」が今後は大切になると思われます。
私自身、コロナ禍のステイホーム時間を活用し、「グラミン日本」という貸金業のボランティア組織(ムハマド・ユヌス博士が創設したグラミン銀行の日本版)においてフルリモートで、貧困・生活困窮者の自立支援のプロボノ活動を始めました。
(プロボノとは、社会的・公共的目的のために専門知識やスキルを活かしたボランティアのこと)
グラミン日本の支援事業の1つに、生活困窮しているシングルマザーを対象とした、RPA等のデジタル教育と実務経験機会の提供による自立(就労・起業)支援があります。
一人親世帯(母子家庭・父子家庭)の貧困率は50%を超え、その中でも、シングルマザーの平均世帯年収は243万円とシングルファザーよりも180万円程低くく厳しい状態となっています。(平成28年国民生活基礎調査より)
生活に困窮しているシングルマザーには生い立ちや元配偶者との関係が原因で自己肯定感が極めて低く、なかなか自ら自立の一歩へ踏み出せない人が多くいます。
このような環境下で「リスキリング(学び直し)」がもたらすものは、「新たなスキル」だけでなく、「自分自身を信じる力」だと感じています。世の中のニーズに応えることができるスキルを発揮し、相手から「ありがとう!」の言葉がいただける。
まさに、生きる力の源なのではないかと思います。
これは生活困窮者だけに限らず、働く人全てに当てはまる働きがいや生きがいではないでしょうか。
ここまで、個人の視点から「リスキリング(学び直し)」の効果について話してきました。 一方、企業の視点からは、目先の業績を追い求めるだけでなく、「変化に対応できる人材づくり」という中長期的視点の施策が新たなビジネスモデルの実現や生産性の向上へとつながっていくと思われます。
つまりは、企業自身のためにも「リスキリング(学び直し)」の機会を戦略的に創る必要があると言えます。もちろん、対象は女性社員だけではありません。
戦略的なリスキリングにより、アフターコロナに向けた新たな事業展開も競争優位性を持って実現しやすくなるでしょう。
ただ、その企業で働く人達に一方的に学びを押し付けても、やらされ感だけが高まり、効果がありません。変化への危機感やリスキリングへの当事者意識は人によって様々。
「(会社にとって、私にとって)なぜ、リスキリングが必要なのか?」マインドの醸成も同時に行わなければなりません。
職場でも必要とされる能力はこれからどんどん変わっていくでしょう。その一方で、普遍的な仕事の基本を身に付けるよう支援し、企業がこれまで培ってきた独自技術や強みを伝承するためには上司や先輩による「OJT(On the job training)」も欠かせません。
企業は「リスキリング(学び直し)」と「OJT(On the job training)」の両軸により、変化の激しい時代の中で、前向きに人材を育て、活かす必要があります。
日本働き方会議様で案内してくれている、ITC経営パートナーズ協会会員のDX推進セミナー案内へのリンクです。
■DX推進SUSDセミナー
https://jwc-kaikaku.jp/course/dreamit/dreamit.html
■「ビジネスアナリシス方法論“GUTSY-4”」紹介セミナー
https://jwc-kaikaku.jp/course/ictm/i001.html
ICT経営パートナーズ協会
働き方改革分科会委員長 岡田裕行
脱炭素や環境破壊対応等、事業環境は大きく転回し新たな時代が急速に進みつつある。働き方改革もコロナ禍でリモートワークが注目されているが、本質的な改革はむしろこれからという状況である。
新たな時代に向け、企業が生き残る大きなポイントである情報システムにどう向き合えばいいのか。
日本の特殊な事情を考慮しながら情報システムの主導権をユーザが取り戻すことの重要性を考えてみたい。
日本は世界でも突出した急激な少子高齢化という固有の問題がある。
国立社会保障・人口問題研究所では2065年には総人口8,808万人、生産年齢人口(15~64歳)は2015年に7,728万人であったものが2065年には
4,529万人、50年で約3200万人減少と推定している。
韓国の2020年の生産年齢人口は3600万人であり、今後50年で韓国の生産年齢人口相当の数が消えてしまうインパクトである。
その上、2019年の日本の生産性(労働者一人当たりGDP)は824万円で米国の6割、しかも向上していない。
2015年から2019年の年平均実質上昇率は米国が0.9%に対して日本はマイナス0.3%。
OECD加盟国平均は0.7%で日本より上昇率が低いのはニュージーランド(-0.7%)のみである。(日本生産性本部)
付加価値と生産性が向上しなければ経済成長はなく賃金も上がらない。
生産性向上のカギの一つはITの活用。
デービット・アトキンソン「新・所得倍増論」によると、ニューヨーク連銀の分析『米国は1996年から2001年までの労働生産性の上昇の75%はITの貢献である。
しかし1995年以前はITの貢献は低かった。
当時は人の働き方に合わせていかに人を楽にさせるかに主眼があったからで、効果を引き出すには企業が組織のあり方、仕事のやり方を変更し、人材その他にも投資する必要がある」と分析している』とのことである。
小手先のIT活用でなく、腰を据えて組織のあり方、仕事のやり方を地道に変革することが喫緊の課題である。
情報システムは企業のビジョン、戦略、組織、業務プロセスと密接に関連して構築され各企業固有である。
従ってICT活用の大前提は自社のビジョン、戦略、組織、業務プロセスを明らかにし、情報がどこで発生し、どう流通し、どう活用されているかを明確にすることである。
これはまさに経営者が責任を持つ領域で、決して情報システムだからとIT部門に放り投げて済む問題でも、社内に技術を知っている者がいないから外部に委託してDXを開発して貰おうという問題でもない。
情報システムの主導権を持つということはこの大前提をきちんと自社内で出来るようにすることである。
2015年ベースでIT人材の内、IT産業に属す者は日本で72%、アメリカが35%、欧州 でも4割前後である(内閣府令和2年度年次経済財政報告)。
日本企業のIT産業依存は突出している。
ここでのIT人材はIT専門技術者という意味であり、上記の主導権を持つための人材は必ずしも技術者とは限らない。 しかし情報システムをどう理解し、どう立ち向かうかに関する日米の捉え方の違いが表れている。
自社の業務プロセスも十分把握されておらず担当者だけが知っており、全体が俯瞰できない企業が殆どではないだろうか。
業務プロセスを組織、人材と関連させて明示的に記述、共有、変更できるツールが存在するがあまり使われない。
情報システムというと技術面に目が行き、足元がおろそかになっている。
しかしプロセスマネジメントツールを有効活用している企業は業務プロセスの改革、ICT活用が加速度的に進展している。主導権確保の原点であり、競争力に貢献する情報システムの構築に不可欠である。
更に変化対応スピードは競争優位の大きなポイントであり、開発も自社に取り込むことが出来る環境になってきている。
広く使われているExcelをベースに柔軟にシステム構築が出来るツール。
繰り返し作業の自動化で大きな力を発揮するRPA。
ローコード、ノーコードを呼ばれるツール類は従来のようなコンピュータ特有のプログラム言語を使わず、業務部門の人が自分でシステムを組めるようになっている。
これらのツールはクラウドで学習可能で実際に多くの業務担当者が使いこなしている。勿論、主導権を確保したうえであれば外部の知恵や力をどんどん活用すればいい。
当協会では上記各種ツールに加えて情報システム開発の上流をサポートする仕組みのノウハウもある。
例えば標準業務プロセスを参照しながら暗黙的要求や潜在的要求も表面化し、うまい仕事の進め方にヒントを得ながら自社のプロセスに付加価値を持たせる手法や定量的に要求を整理し合意形成を的確迅速に把握するツール等である。
当協会は日本の生産性向上のためにユーザ企業側の立場でデジタル化の支援をしている。
また中小企業庁の『中小企業デジタル化応援隊事業』も専門家活用時の負担金の補助をしている。
当協会ではデジタル化をどう進めればいいのかといった相談にも応じている。
お気軽に相談頂きたい。
相談先メールアドレス(事務局):info@ictm-p.jp